「日本の不動産はバーゲンセール」中国人に次々と買われるリゾートや温泉地帯…登記簿300件を追跡して見えた、表に出ない“静かな買収劇”の実態
「確かに、石和温泉の旅館やホテルのオーナーが中国人に取って代わられるケースが増えていることは把握しています。石和温泉は、富士山に近い河口湖周辺の施設の3分の1程度の金額で宿泊でき、そうした安さもあって中国人観光客が増えています」と、観光商工課の男性職員は説明した。 その上で、職員は「中国人経営者の増加に対し、市民から厳しい意見が寄せられているのもまた事実です。ただ、中国資本による買収は、あくまで企業間の取引の結果であり、笛吹市としてはタッチすることができません。観光商工課としては、いかに市内の宿泊者を増やすかが重要で、それは国籍問わず、来ないよりは来る方がいいと思っています。旅館やホテルの収入が増えれば、税収も増えますし、それが地域の活性化につながると我々は考えています」と語った。
これが日本の地方リゾート、温泉街の現実だろう。地方にも確実に及んでいる中国からの波。だが、男性職員は最後に少し寂しそうにも語った。2023年、同市役所に訪れた中国人経営者が放った言葉が今でも忘れられずにいるという。「中国人からすると、日本の不動産はどこもバーゲンセールのようなものですね」 バーゲンセール――。おそらく、本当にそうなのだろう。取材班は、中国資本による地方リゾート、温泉施設などの買収が、現在どこまで進んでいるのか、各地の状況を徹底的に探ることにした。まず、都道府県などが所有する旅館業法の許可施設一覧を、情報公開請求で入手。施設一覧には、施設名や住所、許可年月日に加え、施設を所有する個人名や法人の代表者名も記載されている。この名前を基に中国資本とみられる施設を抽出した。
■登記簿300件を追跡。表に出ない“静かな買収劇”の実態 だが、これらの名前だけでは所有者が本当に中国人かどうかは分からない。そこで運営会社の土地、建物を登記簿謄本で調べた。謄本には、運営会社の代表者や土地、建物の所有者の住所が記されている。その住所が中国であれば、中国資本であると判断できるわけだ。取材班が今回、取得した登記簿謄本は計300件以上に上った。さらに取材で確認した買収事案も含めて集計した。時期は、買収が特に増えた2010年以降のケースを原則、調査対象とした。その調査結果が、下記の表である。
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