EVバスの不具合「強制検査する権限ない」――国交省も認めた法の盲点! 113台が抱える“潜在リスク”とは
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並行輸入車はリコール対象外
販売された車両に不具合が見つかり、保安基準に適合しない恐れが出れば、道路運送車両法に基づくリコールが適用される。メーカーや輸入業者が国土交通相に届けたうえで、改善措置をするわけだが、それでも問題を解決できなければ、国交省は強制的な立入検査を実施し、行政処分を課すことができる。 だが、EVMJのEVバスはリコールの対象とならない。リコールの届け出が義務づけられるのは ・国内の自動車メーカー ・輸入自動車を販売する正規ディーラー ・日本で自社の車を販売する海外メーカー に限定される。国交省はどれにも該当しないEVMJの販売車をリコール対象外の「並行輸入車」に当たると判断している。並行輸入車は日本の正規ディーラーを介さずに 「個別ルートで海外から輸入した車両」 を指す。これまでは小規模の個人輸入などが中心で、EVMJのように317台も販売する事例は表に出てこなかった。リコール対象外の並行輸入車について、国交省審査・リコール課は 「並行輸入車に強制的な立入検査や行政処分を課す権限はない」 と説明する。今回の立入検査は道路運送車両法に基づくもので、同法には指導に応じない対象者名を公表できるなど罰則規定がある。しかし、リコールの立入検査が国交省本省の指揮で地方運輸局の係官を動員して大々的に実施するのに比べ、地方運輸局長の指揮で行われる。検査にかかる人員が少ないことが多い。 しかも、検査は対象者の同意を得て行われる。地方運輸局の係官は 「検査に出向いて断られることもある。ただ、今のやり方に問題があるとは感じていない」 と打ち明けた。それ以外で対処できるのは法的な拘束力を持たない任意の行政指導だけ。これも対象者の同意を得て事態の解決を進める形だ。リコールのように情報が逐一、公表されることもない。 行政手続法では対象者が指導に従わないことを認め、行政当局が指導に応じない相手に不利益な扱いをすることを禁じている。リコール対象車と異なり、行政当局の対応には“限界”がある。
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