2024年11月1日 9:40
第1層 はじまりの街
2年前とは打って変わって人通りのない静かな商店街を走り抜ける足音が2つ。
俺とストレアは目的地である修道院に向かっていた。なぜこんなところにいるのかというと、今朝、軍のトップであるシンカーさんから急用の連絡があったからだ。
その内容だが、キバオウと話そうとした折、黒鉄宮の地下ダンジョンの奥地に置き去りにされてしまったそうだ。丸腰で話そうというキバオウの言葉を信じたため転移結晶も持っておらず、強力なモンスターがいて安全圏から出られないのだという。かれこれ3日経過しているらしい。関わりがあるとはいえ、部外者である俺を頼るわけにいかないと思って黙っていたのだろうが、そんなの俺にとって逆効果だ。なんでもっと早く言わなかった!というのが正直な話だ。
昨晩俺の家に泊まっていつもの調子に戻ったストレアも協力すると言ってくれた。昨日の今日だというのに、優しい娘だ。
さて、シンカーを救出するべく1層に来たのだが、以前来た時よりもプレイヤーの姿が見えない。また軍が何かやってるのか、と呆れの溜息が出る。
シンカーさんから彼の副官であるユリエールという女性に会ってくれと言伝があり、軍の本部に寄ったところ、彼女は10歳以下の子どもを保護している修道院に向かったようだった。なぜそんなところに?と思ったが、ひとまず彼女を追いかけることにして、今に至る。
修道院に着くと呼吸を整えて、両開きの大きな扉をノックする。ゆっくり開けられた隙間から顔を出したのは3人の子どもだった。
「兄ちゃんたち、誰...?」
「ただの剣士だよ。俺もこのお姉ちゃんも軍の人間じゃないから、そこは安心して。」
しゃがんで目線を子どもたちに合わせ、不安要素を取り除いてあげる。後ろの2人と顔を見合わせて、少なくとも軍の人じゃないと判断したのか、声色が少し明るくなる。
「ここに何の用?」
「ユリエールっていう女の人が来なかったかな?その人を探しているんだけど。」
「さっき来た人じゃない?」
「そうかも!」
「私をお探しですか?」
子どもたちの後ろから銀髪をポニーテールにまとめた女性が現れた。シンカーさんから事前に聞いていた特徴と一致する。
「ソーマです。シンカーさんの件についてです。」
「ではあなたが...ちょうどそのことで、とある2人に話そうと思っていたのです。」
子どもたちから『先生』と呼ばれるサーシャさんに修道院の2階に案内されると、先客が3人いた。2人は見知った顔なのだが、その間に座る黒髪の少女については初めましてだ。
「ソーマとストレアじゃないか。」
「奇遇だな。……その子は?」
「あー、あとで話す。」
気になることがあるが、ひとまず席についてユリエールさんの話を聞くことに。その内容は概ねシンカーさんから聞いたものと同じだった。
「無理なお願いだというのは承知しています!でも、彼が今、どうなっているのか考えると、おかしくなりそうでっ...」
頭を下げた彼女の声は震えていた。ユリエールさんにとってシンカーさんは、それほどまでに大切な人なのだろう。懸命に頭を下げる彼女を見て、アスナは何かを感じ取ったようだった。
「大丈夫だよ、パパ、ママ。その人、嘘ついてないよ。」
鈴みたいな可愛らしい声が、彼女の言葉が本心からくるものだと断言した。アスナでもストレアでも、ユリエールさんやサーシャさんでもない。ほんのさっきまで眠いのか船を漕いでいた黒髪の少女のものだった。
「ユイちゃん、わかるの?」
「うん。なんとなく、だけど、大丈夫。」
正直びっくりした。ちょうど昨日、似たような話をしたばかりなのだ。ストレアも同じことを考えたようで、互いに頷く。
「真偽はどうあれ、元々こっちはそのつもりで来たからな。協力しますよ。」
「うん!」
「そうだな。疑って後悔するより、信じて後悔しようぜ。なんとかなるさ。」
キリトの言葉に背中を押されたのか、アスナも協力すると伝えると、ユリエールさんは「ありがとうございます...!」と何度も感謝していた。
事態は一刻を争うため、すぐに出立する。修道院を出てユリエールさんを先頭に黒鉄宮へと向かう道中、アスナに気になったことを尋ねる。
「アスナ、そのユイちゃん?って子は一体どういう経緯で...?」
「それがね、家の近くの森で一人でいるところを保護したの。NPCじゃないはずなんだけど、カーソルも出ないし。しかも名前以外覚えてないっていうから放っておけなくて...」
「ほーん...」
キリアスの2人をパパ、ママと呼ぶ少女ユイは、アスナと手を繋いで歩いていた。危険だから修道院に預けようとしたのだが、「ユイも行く!」と駄々をこねたため仕方なく同行しているのだ。
「ユイ、この人がソーマおじさんだ。昨日食べたクッキーもこの人がくれたんだぞ。」
「ソーマ、おじさん!」
「どうも、ユイちゃん。」
「クッキー、おいしかった!」
「そうかい。そりゃよかった。」
「あたしはストレアだよ!よろしくね!」
「ストレア!」
コミュニケーションと取りながら、ユイちゃんについて考える。キリトとアスナの家はモンスターが出にくいーというよりほぼ出ないーフィールドとはいえ圏外だ。10歳くらいのこの子がそこを1人で彷徨っているとは非常に考えにくい。特に、記憶喪失というのが気にかかる。記憶喪失といえば、俺もそうだがストレアの例もある。
「ストレア。ユイちゃんについて、どう思う?」
「同じ子かはわからないけど、いたはずだよ。もしかしたら...」
「なるほどな...」
ストレアに小声で聞いたところ、俺の予想通りの返答が返ってきた。推測の域を出ないが、ユイちゃんもおそらく
「二人とも、置いてくぞー?」
「悪い、すぐ行く!」
ひとまずシンカーさんの救助を優先するために気持ちを入れ替える。ユイちゃんのことはそのあとでも大丈夫だろう。
◇◇◇
黒鉄宮の地下ダンジョンは最前線の進み具合によって解放されるタイプのものらしく、モンスターは60層クラスの強さで、軍でも中々攻略が進んでいないのだという。しかし最前線に立っている俺たちには精々準備運動がいいところだろうか。時折湧いてくる蛙型モンスター『スカベンジトード』は数こそ多いが動きが単調なため比較的楽に狩れる。現に今は久々に二刀流を解放したキリトがスパパっと切り刻んでいる。
一通り狩りつくしたキリトが戻ってくると、アスナに調理してくれと赤黒い肉塊を取り出した。おそらくさっきの蛙肉だろうものをやいのやいのと仲睦まじい夫婦喧嘩で処理されたキリトは、がっくりと項垂れた。
「相変わらずチャレンジャーだな。」
「ふふっ!」
「おねえちゃん、初めて笑った!」
さっきまで剣を振っていた人物と同じとは思えないキリトの情けない声に、ユリエールさんも吹き出す。それに気づいたユイちゃんが指摘したことに、ふと考える。普通なら人の心に敏感な子どもで済むが、「初めて」というのがSAOが始まった日からという仮定をすると、やはり同じ結論になる。
(この子も、ストレアと同じ……)
彼女と違いカーソルこそないが、人の心に寄り添える、記憶喪失になっている経緯を察して、小さな頭をポンポンと撫でてあげる。
「おじさんの手、あたたかい!」
「そうかい。」
それからも何度かモンスターを蹴散らし、シンカーさんがあるフロアにまで来た。フレンドのマップ情報をもとにキリトがスキルで確認したところ、前方の白く光っている部屋に、プレイヤーが1人いるらしい。マップ情報と一致したためシンカーさんだと確定。我慢出来なかったのか、ユリエールさんは駆け出した。
「ユリエールー!」
「シンカー!」
「来ちゃダメだ!その通路は!」
駆け出すユリエールさんを見て見つかってよかったと安堵したのも束の間、来るなというシンカーさんの声にただならぬものを感じる。その瞬間、安全エリア前の十字路、その右手側に黒い靄が見えた気がした。すぐさま駆け出し、剣を地面に突き立てながらユリエールさんを抱えて急停止すると、ドゴォン!と大きい衝突音が1m先で鳴った。音の正体は大鎌。あと少し遅ければ餌食になっていただろう。
「すぐに安全エリアへ!」
追撃がないことを確認してすぐにユリエールさんを安全エリアへ走らせる。追いついて臨戦態勢となったキリトと2人で大鎌の所有者を確認する。がしかし。
「こいつは...!?」
「かなりまずいな...!」
そこにはボロボロのフードマントを被った3mほどのモンスターだった。フードから覗く顔は骸骨のようで、思い描く『死神』がそのまま現れたかに思えるほどだった。問題なのは、敵対モンスターを示すカーソルが血のように赤黒いのだ。これが示すのは、自身よりも
「アスナ!ストレア!ユイを連れて先に脱出するんだ!」
「で、でも!」
「俺たちもすぐ行く!」
横目で確認すると、ユリエールさん、ユイちゃん、ストレアは安全エリア内にいるようだが、アスナはこちらに合流していた。ユイちゃんはストレアに預けたようで、2人とも心配そうな表情をしていた。
「来るぞ!」
死神が大きく振りかぶり、剣を交差させてブロックしているキリトとアスナに向かって大鎌を振るう。瞬間、2人とも遥か後方上空へ弾かれた。次いで俺にも攻撃が迫り、反射的に受け流すのではなく躱す。そこで攻撃は止み、倒れる2人のHPを確認して...絶句した。今のたった1撃で、2人のHPを半分も持って行ったのだ。
「こいつ……!」
◇◇◇
安全エリアにユイちゃんを連れてきたものの、ソーマたちの前に現れたモンスターの強さに絶句する。
「ダメ……このままじゃ、死んじゃう……!」
アレはおそらく、この近辺にあるコンソールの守護者ともいえるものだ。いくらトッププレイヤーのソーマたちでも、勝ち目は薄い。
どうすればいいかわからず数歩後ずさると、足が何かとぶつかった。真っ白な空間に異質ともいえる真っ黒な直方体は、MHCPとしての記憶を取り戻したあたしにとって一抹の希望だった。
「ストレアはある意味自由の身だ。ストレアのやりたいことは何かある?」
「……ソーマと一緒にいること、かな?」
今朝、彼と交わした問答を思い出した。彼は珍しく照れていたけど、それは嘘偽りのないあたしの心からの言葉だった。
SAOのプログラムの一部であるあたし達は、ゲームクリアと同時に最悪消去、良くて初期化されてしまうだろう。少なくともその時までは、彼が側にいてほしいと思った。だから、彼が先にいなくなってしまうのは耐えられない。
ではもうやれることはこれしかない。
「ユイちゃん。」
「ストレア……?」
「この先もうキリトたちに会えなくなるかもしれない。それでもユイちゃんは、キリトたちを助けたい?」
ユリエールさんたちに気づかれないよう小声で聞くと、黒髪の少女は力強く首を縦に振った。
「わかった。じゃあこれに触って。大丈夫、あたしも行くから。」
◇◇◇
まともに受けたら2分も保たないと判断し、全力で避けることに切り替えようとする。しかしシンカーさんとユリエールさんがユイちゃんとストレアを呼び止める声が聞こえて思わずそちらを見る。
なんと、ユイちゃんとストレアが転移結晶で脱出せずに、安全エリアを出てこちらに歩いてきてたのだ。呼び止めていた2人はすでに結晶を使ったのか、青白い光に包まれていなくなった。
「ストレア!こいつには勝てない!逃げるしかないんだ!」
「ユイ!」 「ユイちゃん!」
俺たちの必死な呼びかけに対してストレアはいつものように優しく笑い、死神の前に立ったユイちゃんはさっきまでとは明らかに違う、冷静で落ち着いた声で答えた。
「大丈夫だよ。パパ、ママ。」
死神が大きく構え、その大鎌で少女の魂を刈り取るべく振り下ろす。
......が、その刃は紫の壁によって届かなかった。紫の壁にはシステムメッセージとして『Immortal Object』の文字が刻まれていた。基本的に圏内の建物やプレイヤーを傷つけけようとしたときに出てくるそれは、破壊不能や不死を示すものだ。今の場合だと後者、つまり不死属性ということになる。
「なんで...?」
信じられないものを見ているアスナの口から疑問が零れる。キリトもアスナ同様だろうが、俺は「やっぱりか」とどこか納得していた。
大鎌が弾かれわかりやすく目を回す死神に対し、ストレアはポッと出した掌から赤い光をいつの間にか宙に浮いていたユイちゃんに渡していた。光がユイちゃんの手に収まると突如爆炎が降臨する。すぐに消えた炎の中から現れたのは、ユイちゃんの身長の倍はある深紅の長剣だった。ユイちゃんの服もピンクの可愛らしい服から白いワンピースへと変わっていた。
ユイちゃんは未だ目を回す死神に向けてその長剣を振り下ろす。せめてもの抵抗なのか死神は大鎌で受けるが、しばしの拮抗の後長剣が大鎌ごと死神の頭を叩き斬る。爆炎に包まれた死神はそのまま消滅していった。
立てるようになったキリトとアスナはユイちゃんの名前を呼ぶが、その返事は短い時間とはいえ家族として過ごした2人には厳しい現実だった。
「全部、思い出したよ。パパ、ママ。」
◇◇◇
安全エリアは何もない真っ白な空間で、中央に黒曜石のような黒くて四角い物体だけが鎮座していた。そこに座るユイちゃんとその横に立つストレアの表情はあまりよろしくない。
「ユイちゃん、思い出したの……?
「……はい、全部説明します。キリトさん、アスナさん、ソーマさん。」
ユイちゃんの口から語られたのは、SAOの制御システム『カーディナル』と、プレイヤーのメンタルケアを行うプログラム『MHCP』、そして互いを想い合う感情を持ったキリトとアスナに惹かれ、記憶を失いながらも22層の森に降り立ったことだった。
たまたま昨日ストレアから同じ話を聞いた俺は心の準備ができていたが、それを知る由もない、仮にも父母と呼ばれていた2人にとっては信じがたい現実だった。
「私たちって……ストレアも、そうなのか?」
「ごめんねキリト、あたしもユイちゃんと同じAIなんだ。訳あってログインされてなかったアカウントに上書きする形で実体化したの。」
AIなのにおかしいですよね、と自嘲気味に笑うユイちゃんは、昨日のストレアと重なって見えた。
「ユイちゃんもストレアさんも、本物の知性を持ってるんだね。」
「ユイ達は、もうシステムに縛られる存在じゃないんだ。ユイの、ユイ達の望みはなんだい?」
正体を知ってもなお優しく接するキリトに、ユイちゃんは細い腕をいっぱいに伸ばした。
「私は……ずっと、一緒にいたいです。パパ、ママ……っ!」
「ユイちゃん……!ずっと、一緒だよ……!」
「あぁ、誰がなんと言おうとユイは俺達の子どもだ。」
キリトとアスナはユイちゃんを優しく抱きしめる。それを見たからなのか、ストレアも抱きついて-いつもの勢い100%のものではなく、ゆっくりと慈愛に満ちた優しいもの-きた。まだ微かに震える彼女の身体を包んであげる。今朝は気恥ずかしかったが、あれは間違いなく彼女自身の想いだろう。
「……もう、遅いんです。」
これから先も変わらずあり続けよう、と思った矢先、ユイちゃんの口から出てきた衝撃の言葉。
「遅いって……まさか。ストレア、触ったのか?」
「…………ごめんね。残念だけど、ここでお別れ。」
「私が記憶を取り戻したのは、GMがシステムに緊急アクセスするために設置されたこのコンソールに触れたからです。」
ユイちゃんが座っている物体に触れると、水色の線が走り、キーボードとホログラムの画面が出てきた。
「ストレアが長剣『オブジェクトイレイサー』をジェネレートし、それで私があのボスモンスターを消去したことによって、私達の存在がカーディナルに見つかり、システムの異物としてじきに消去されてしまうでしょう。」
「えっ……?」
「どうして……」
「ソーマたちを助けたかったからだよ。こうするのが、一番だった。」
「っ………」
「なんとかできないのかよ!」
つまりは、自己犠牲である。システム側の存在でありながら、自身の存続よりも愛する人の生存を選んだのだ。この判断ができるのは正真正銘心を持っているから。それが例え作られたAIだったとしても。
突如、ユイちゃんとストレアの身体が白く光り始めた。今すぐに消去されてしまうのだろう。
(AI……プログラム……コンソール……切り離す……)
ユイちゃんが話してくれた内容から彼女たちが消されないようにする手段を考え、ある1つの道筋を見出す。可能性は低いが、やれるだけのことはしてあげたい。
「キリト、たしかパソコンは自作するくらい弄れるって言ってたよな?」
「あ、あぁ。」
「
「……そうか!」
意図をすぐに理解したキリトはすぐにコンソールに浮かぶキーボードを操作し始めた。
「間に合え……!」
「なぜ……」
「ん?」
「なぜ、そこまで、一生懸命になれるんですか?こんな、ただのプログラム相手に……」
「ただのプログラムじゃないよ。さっきアスナも言ったけど、君たちはちゃんと心があるヒトだ。それをただ見殺しにするなんてこと、俺にはできないよ。」
「あなたは……不思議な人ですね。」
「でしょ?でもこういうところがソーマらしいんだよね。」
会話とは裏腹に無常にも消去は進んでいるのか、2人を包む光が強くなる。
「ユイちゃん!ダメ!行かないで!!ユイちゃんがいないと、私、笑えないよ……!」
「ユイ!」
「これからも、みんなを助けて……喜びを分けて…ください。」
「いや!ユイちゃん!!」
「あたしも、限界かな……」
「ストレア……」
「そうだ。昨日のお礼、まだしてなかったよね?」
「礼はいいよ。いつも言ってるだろ?」
「じゃあご褒美あげる。」
そう言うと顔を寄せられて、頬にキスをされた。
「えへへっ、大好き。」
その笑顔は、恋する少女のようだった。
あまりの不意打ちに動揺する間もなく、2人を包む光が強くなり、やがて虚空へと光の粒が消えていった。
「クソッ、カーディナル!なんでもお前の思い通りになると思うなよ……!」
ユイちゃんが消えて、泣き崩れるアスナ。
今なお懸命に少女達を救おうとプログラム相手に奮闘するキリト。
部屋に響くのは、キーボードを叩く音とアスナの悲痛な泣き声。あとは上手くいくことを願うしかない。
「ぐあっ!」
突然、何かの力によりキリトがコンソールから弾かれ、その音で俺達は顔を上げた。心配をして近寄った時に、キリトから何かをアスナと一緒に手渡された。手の中にあったのは、アスナには水色の、俺には紫の雫のような結晶だった。
「キリト君、これって……?」
「ソーマの早い判断のおかげだ。……ユイ達をシステムから切り離して、オブジェクト化した。」
「ってことは…」
「ユイと、ストレアの心だよ。」
「ストレアの……」
「ユイちゃん……!ここに、いるんだね……!」
「ユイ達は最終的に俺のナーヴギアのローカルメモリに保存されるようになってるから、現実に戻ったらまた会えるさ。向こうで展開するのは難しそうだけどな。」
「そうだね。必ず、生きて帰ろう……!」
その後、アスナはユイちゃんの心をネックレスに、俺はストレアの心を指輪にして肌身離さず持った。
彼女からの寵愛を受けた頬を指でさすり、俺は翌日からまた最前線の攻略に励んだ。
そして、何度目かわからない地獄を見ることになる。