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作:窓風
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EPISODE13 大渦を喰らう神風


お気に入り5件ありがとうございます。
まずはリメイク前の18件を目標にしていますので、よろしくお願いします。


 

 

 

2024年6月24日 10:50

第48層 リンダース

 

昨日の昼にフィリアから「明日クエストを手伝ってほしい」と連絡があった。ちょうど休息日かつヘルプもないためそれをすぐに了承。リズベット武具店で集合とのことだった。どうやらフィリアもたまにリズの店を利用しているようだ。

 

「いらっしゃいませ!あら、ソーマじゃない。メンテかしら?」

「それもあるけど、人と待ち合わせててな。」

「もしかしてフィリアのこと?今あたしのメンテ作業を見学し終わったところよ。」

「あ、ソーマ!」

「よっす。」

 

リズの後ろからひょこっとフィリアが現れた。あの青いケープはまだ使ってくれているようだ。

リズに剣を渡し、せっかくだからと俺もメンテ作業を見学させてもらった後、フィリアが持ってきたクエストの話を3人で確認する。

 

 

クエスト名『白銀の大渦に生贄を捧げよ』

 

とある村には年に一度、森の奥深くにある洞窟に年頃の女を村から1人選出し生贄として捧げ、村に災厄が訪れるのを防いでもらう儀式があるという。しかし、数年前に村は生贄を捧げられなくなった。するとその年から毎年この時期になると村を白銀の大渦が包み込み、建物を壊していくという。その大渦は昔有名な採掘現場だったらしい洞窟がある方角から来るらしい。もうあの悪夢を見たくないという村人のため、この村の未来のために、大渦の調査をお願いしたい。解決できれば、私の曽祖父が昔持ち帰った家宝である鉱石を差し上げます。

 

 

「……なるほど、調査クエストか。」

「そうなの。それで偵察で1回洞窟に行ったら、モンスターがスピード寄りなのか速いのが多いんだよね。」

「うーん、それだとあたしじゃそもそも当てるのが難しいかもね。残念だけどあたしはパスするわ。」

「じゃあリズの代わりに行こう。ちょうど武器の素材を探してたんだ。」

「あらそうなの?もし素材が揃ったらあたしが武器を作ってあげてもいいわよ?」

「あげるなんてわたし一言も言ってないけど?」

「NPCに弟子入りしてる知り合いがいるんだけど、最後の課題が『自分を除くプレイヤーの武器を作る』らしくてな。その人に作ってもらうつもりだからまたの機会に。」

「じゃあせめてこれを見ていきなさいよ。」

「ちょっとー!」

「ごめんて」

 

カウンター裏の壁にかけられた細身の片手剣をリズから手渡され、細剣にも見えるそれを試しに振ってみる。今の剣と同じ...いや若干軽いくらいか。

 

「さすがだな。これスピードタイプのだろ?」

「そうそう。ソーマもスピードタイプだからどうかなって。」

「んー………………………保留。」

「だいぶ悩んだね。」

「フィリアとのクエストやってからでも遅くないかな。場合によっては近いうちに買うかも。これの耐久値を見るのに振る奴とかいない限り。」

「いるわけないじゃないそんな奴。」

 

鍛冶屋界隈ではドラゴンの体内でできる鉱石が今の話題らしい。もちろんフィリアのお宝ちゃんを横取りする趣味はないので、こっちの方をそのうち行ってみるか。

 

「それじゃ、そろそろ行くか。」

「そうだね。」

「気をつけて行きなさいねー。」

 

そうしてリズベット武具店をあとにした俺たちはクエスト攻略をしに転移門広場へ行き、クエストNPCがいる村まで移動した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

同日 13:30

第46層 西部フィールド 洞窟内部

 

街で昼食を挟み、村に着いた俺たちはクエストを起動して例の洞窟へと来ていた。中には蜂型や蛇型のモンスターがいて、フィリアの前情報通り確かに素早いが、俺には見えているので難なく処理していく。

 

「クエストを受けられるのが女性だけとはね。まあ内容を見れば納得か。」

「生贄を捧げなくなったのもわかるね。村には男の人しかいなかった。」

「村から出て行こうにも、その先で奇病に侵されるとかいう呪いが出る始末か。とんだ災難だな。それから村の荒れようも酷かった。」

 

村は年一で大渦に荒らされるからか、どこも急造のボロ屋ばかりで、村というより廃村が近かった。報酬の鉱石も大渦に飲み込まれそうだが、それは死守しているとのこと。村の周囲も酷く、木々は幹を抉るように倒され、地面は何かを引きずり回したかのように凸凹していた。あれも大渦の影響か。

 

「あ、宝箱!ソーマ、これはどっちだと思う?」

「当たり」

「さっきからずっとそれじゃん!」

「この手の洞窟にはトラップはないっていうメタ読み。」

「じゃあ1つでもトラップが出たら新しい武器買ってもらうからね!」

「いいだろう。」

 

初めて会ってから、ほぼ月一でフィリアのトレジャーハントに付き合っている。そのたびに目利き(笑)の練習をしているのだが、これまで正答率が100%になったことがない。今回こそはと思い強気に出る。

 

「じゃあ開けるよ?守ってね?」

「当たり前だ。」

 

すぐに動けるようにフィリアのすぐ隣に移動すると、フィリアが宝箱の錠を『鍵開け』スキルで解いて開封する。

 

「きゃあああ!!!」

「フィリア!!!」

 

宝箱を開けた途端中から何かが飛び出し、フィリアに襲い掛かる。すぐさまフィリアを抱き寄せ、襲い掛かる何かに背中を向けて代わりに攻撃を受ける………つもりだった。しかし背中に当たった感触はペチペチ、と軽いもの。想定外のことに振り返って背中に当たったものを確認した。

 

箱から飛び出たのは、玩具の蛇数匹だった。つまり子供騙しのトラップだったわけだが、ドッキリに近いトラップを見るのは初めてだったため思わずフィリアを庇ってしまったのだ。

 

「「……………。」」

「……立てるか?」

「う、うん……」

 

顔が近く密着している現状を追求、刺激しないように気遣って立ち上がり、フィリアの肩から手を離してゆっくりと離れる。

 

「……買い物は明日行こうか。」

「うん……」

 

心臓が早くなるのを深呼吸と索敵による周囲の警戒で誤魔化しながら、探索を再開する。

 

それから互いに気まずい空気の中、洞窟最奥部の部屋にまで来た。部屋は円形の広間となっており、それを囲うように深さ5mほどの堀が、そして正面には大きな穴が開いていた。他に足場が見当たらないことから、あの先に進むことはできないだろうと推測する。

 

「ソーマ!これ見て!」

 

フィリアが指さす方を見ると、白くて薄い筒状の何かが堀の中を埋め尽くしていた。これは……

 

「皮?」

「そう見えるよね。脱皮のあとかな。」

「だよな……フィリア、クエスト名ってどんなだったっけ?」

「えっと、『白銀の大渦に生贄を捧げよ』……あっ!」

「やっぱそうだよな。てことは。」

『シャアアアア!!!!!!』

 

突如、穴のほうからモンスターの咆哮が響く。鳴き声からしておそらく蛇型だろう。

 

「来るぞ!」

「うん!」

 

武器を構えてすぐ、穴から白銀の大蛇が這いずり出てきた。体長はおよそ15mの大型。おそらく過去の生贄で肥えたのだろう。

 

「基本的に俺がタゲを取るから、フィリアは側面から頼む!尻尾の鞭にも注意!」

「了解!」

 

ネームドボス『The Bazilisk Maelstrom(大渦のバジリスク)』との戦いが始まった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「あと1本!特殊行動警戒!」

「了解!」

 

行動パターンは今まで見てきた蛇型モンスターと大差なく、特に問題なく3本あるHPバーの内2本目を削ったところだった。この声出しはいつものフロアボス戦と変わらずもはや癖になっており、声に出して自分に言い聞かせているのもあるが、散開していて司令塔の声が聞こえにくい位置にいるプレイヤーにもわかるように行っている。実際それがアスナなど他の司令塔や部隊の助けにもなっているらしい。

 

大蛇が一際大きな咆哮を放つと全身に紅い筋が何本も通い、本気モードになる。今までよりも速い尻尾の薙ぎ払いを放たれ、咄嗟に防御した俺とフィリアは堀に落ちないギリギリにまで弾かれる。落ちなかったのは幸いだが、フィリアと距離が離れてしまった。

 

『シャアッ!!』

 

仕切り直しだと言わんばかりに吼えると、視線がフィリアに向いた(・・・・・・・・)

 

「タゲがリセットされてる?!フィリア避けろ!」

「えっ?」

 

次の瞬間、大蛇は先ほどとは段違いの速さで接近し、フィリアの下半身を食べた。そのまま広場中を引きづり回し、フィリアを宙に放って丸呑みしようととぐろを巻き口を開ける。

 

「フィリア!!!」

 

全力『疾走』でとぐろの山を跳躍。腿から下が欠損したフィリアを空中で抱きかかえて着地、広間の出入り口である扉の前に横たわらせる。

 

「ヒール」

 

すぐ回復結晶を取り出し、ギリギリ赤くなっていなかったフィリアのHPを回復する。

 

「ソーマ……ごめん」

「謝るな、休んでてくれ。………あとは任せろ。」

 

そう言って大蛇のもとへ行き、さきほどの行動の反動による硬直だったのか、やっと動き出した大蛇に対して長い付き合いの『ソード・オブ・シーツリーズ』を顔の高さで突きの構えをする。

 

正面から喰ってやろうと突進する大蛇。残り5mというところまで近づくも、謎の衝撃によって大きくのけぞり(ノックバックし)、ズシン、と重い音を立てて倒れる。

 

壱の太刀『刹那』は、極めれば不可視の突きとなる。単発技ゆえに技後硬直も短く、ほとんで連発して使用できるが熟練度はまだ700を超えたばかりのため、まだ伸びしろがある。5発(・・)撃てばノックバックも発生するのだ。

 

「もう出し惜しみはしない。全力で倒す!」

『シャアアアアアアアア!!!!!!』

 

懲りずに迫って来るため再度『刹那』を3発叩き込み、大蛇の動きが一瞬止まった隙に参の太刀『大文字』をお見舞いする。読んで字の如く大の字を描くように斬りつけて火傷のバッドステータスも付与し、『刹那』を10発撃ち込んでノックバックでより遠くに飛ばす。今度はこちらから詰め寄り、斬り上げからの素早い燕返しによる重二連撃の弐の太刀『天獄』を打ち込む。俺を尻尾で拘束しようと3段の筒状の壁が張られるが、片手剣の『ソニックリープ』同様前方上方向に応用できる(しち)の太刀『天翔飛翔』で弧を描いて脱出し、始点(尻尾)、中点(頭)、終点(腹)で1撃ずつ斬っていく。チラリと見ると大蛇のHPも残り数ドット。終わらせよう。

 

右足を引いて半身になり剣は下ろす、剣道でいう脇構えの姿勢を取ると刀身が青く光りソードスキルが発動する。右下からの斬り上げ、その勢いのまま回転し右上から斬り下げる。その後すぐに来た道を戻るように左下斬り上げ、回転し左上斬り下げ。4本の剣筋の交点に最後の突きを放つと、大蛇の身体は断末魔を上げながら白く光り爆散した。描く剣の軌跡にはダイヤモンドダストが舞う五連撃、伍の太刀『如月』で仕留めた大蛇から『ソードブレイカー』という短剣がドロップした。

 

「ソーマ!」

「フィリア!もう大丈夫なのか?」

 

振り返ると、欠損からも回復したフィリアが歩いてきていた。その姿に思わずフィリアの肩を掴んで確認する。

 

「う、うん。結晶ありがとね。」

「そっか。よかった、本当に…………」

「ソーマ……?」

 

今度こそ、守れた。

 

その安堵が熱いものとなって目から零れる。しかしフィリアを困らせるわけにもいかないのですぐに拭い、クエストの報告をするために村へ戻る。

 

「そういえばさっきのスキル何?なんかすごいのばかりだったけど。」

 

その道中、フィリアに『神速・抜刀術』のことを聞かれた。もう隠す必要もないか。

 

「『神速・抜刀術』、多分ユニークスキル。半年以上前に何の前触れもなくスキルスロットに追加されてたんだ。俺の戦闘スタイルに合っているし、正直すごい使い勝手がいい。」

 

『神聖剣』然り、もしかしたらユニークスキル持ちはRPGでいうところの勇者パーティのようなものではないのだろうか。勇者にあたるユニークスキルは知る由もないが、まだ未知のユニークスキルが複数眠っていると考えていいだろう。

 

「でも迂闊に公表すると『神聖剣』の時みたいにアインクラッド中がまたすごいことになるだろ?一応SAO(ここ)もゲーム内だからさ、その辺がね。」

「まあ確かにね。」

「でももう迷わない。出し惜しんで誰かを死なせたら本末転倒だしな。だから、フィリアが無事で本当に良かった。」

 

決意を固め村に戻る。フィリアがクエストNPCに報告をすると、感謝を述べられて報酬の鉱石を手に入れた。

 

「優しい緑色。『グリーンエメライト・インゴット』だって。」

「エメラルドグリーンか。好きな色だ。」

「じゃあ……はい、ソーマにあげる。」

「え、いいのか?店であんなこと言ったけど、フィリアが持ってていいんだぞ?」

「いいの。助けてくれたお礼。」

「……そうか。じゃあ俺からも。」

 

メニューを操作して大蛇からドロップした短剣をフィリアに渡す。『ソードブレイカー』の刃の反対側は凹凸があり、そこで受けることによって武器破壊をするというその名の通りの見た目をしている。

 

「これでおあいこ。俺短剣スキル取ってないし。」

「わあ!いいの?」

「なのでトラップの件はチャラにしてもらえませんか?」

「えー………まあ助けてもらったし、今回だけね。」

「ありがとうございますぅ。」

 

ドロップ品のおかげで俺の財布は守られた。ありがとう。

 

交換した鉱石を手に取って眺めてみる。鮮やかなエメラルドグリーンの鉱石は、俺に何かを訴えるように輝いた、気がした。

 

「よし、じゃあ早速作りに行こうか。」

「あたしもついて行っていい?」

「もちろん。」

 

村をあとにした俺たちは街に戻り、知り合いの鍛冶屋がいる場所へと向かった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

第28層 南の森 奥地

 

やってきたのは森の奥にある、レンガでできた高い煙突が特徴の一軒家。コンコンとノックするとすぐにドアが開き、見知った顔の少女が出てきた。

 

「ようレイン。久しぶり。」

「ソーマ久しぶり!そっちの人は?」

「フィリアっていいます。」

「私はレイン。敬語は使わなくていいよ。」

「それじゃあ、よろしくレイン。」

「うん、よろしく!」

 

NPCに弟子入りしているプレイヤー:レインはここで鍛冶の腕を鍛えている。出会った当初は赤髪だったが、それ以降何度か会った時の髪の色は薄いクリーム色になっていた。本人曰く「リアル寄りに戻した」とのこと。

 

家の中に入れてもらうと、ベッドに横たわる老人に目がいく。

 

「なぁレイン。爺さん、どこか具合悪いのか?」

「……うん。ここ最近から急に。」

「……そうか。」

 

俺はベッドの方へ行き、横たわるNPCに声をかける。

 

「爺さん、俺が分かるかい?」

「おぉ、分かるとも。風の子よ。久しいな。こんな情けない格好を見せてしまって申し訳ない。」

「気にすることじゃないさ。」

 

俺を風の子と呼ぶNPCの爺さんは目が良くないようで、何も見えないらしい。それでもすごいのが、昔その目でずっと鍛冶屋をやってきたため一時期『心眼の鍛冶屋』とも呼ばれていたという。レインはクエストとしてこの人の弟子入りをしているのだ。

 

「そうだ。レイン、頼みたいことがあって来たんだった。」

「何?剣の強化?」

「いや、剣を作って欲しい。」

「え……私がやっていいの?」

「修行も最終段階であとは作るだけなんだろ?爺さんに修行の成果を見せてやろうぜ。」

「……うん、わかった。」

 

鉱石を渡すとレインは鍛冶場に行き、俺とフィリアは居間で待つ。鍛冶場には関係者しか入るなと前に爺さんに言われたからな。ここは静かに待とう。

 

数十分後、レインが鉱石からできたであろう剣を持って戻って来た。レインから新しい剣を受け取り、近くで眺める。両刃の刀身は白く、片手剣の割には少し細い。持ち手は碧一色で、鍔から刀身にかけて竜巻が巻きつくように伸びている。そして鍔の真ん中に鉱石の名残なのか同色の宝石のようなものがはめられている。

 

「できたよ。銘は『ウィンディア・スウィフト』。ステータスは敏捷寄りだけど攻撃力も充分あるから、最前線でもちゃんと使えると思うよ。」

「おぉ……」

「綺麗……」

 

まさかこんな綺麗なのが出来上がるとは思わなかった。レインには感謝だな。

 

「よくやったな、弟子よ。これで免許皆伝じゃ。」

「師匠!ありがとうございます!」

「風の子よ。試しに、外に出て試してみてはどうかね。」

「爺さん……そうだな。ちょっと外に出てる。」

「私も行くよ。」

「わたしも。」

 

ドアを閉め、周りに何もないか、誰もいないか確認。大丈夫だな。

 

「……よし。」

 

シーツリーズを外し、ウィンディアを装備し、鞘からゆっくり重さを確かめるように引き抜く。手に持った感覚は、最高だった。今現在でのベストな重さがそこにあった。

 

剣を構え、片手剣ソードスキル『ホリゾンタル・スクエア』を発動。システムアシストによる動きは変わらないが、一つ一つの動作が気持ちよく、絶好調だった。これほどの一品に出会えるとは。

 

「……レイン、ありがとう。最高だ!」

「よかったぁ!」

「じゃあお代。」

「ちょっと、修行の一環だからいらないって言ってるでしょ?」

「いや、これは武器制作の依頼でレインにとっては仕事の一つだ。仕事に見合った報酬は出さないとな。」

「もう、仕方ないなぁ。」

「ふふっ」

 

武器制作代として代金を支払ったとき、レインの前にクエスト完了を示すウィンドウが出てきた。ハッとしたレインは急いで家の中に戻る。一瞬何事かと思ったが俺たちも続いて家に戻ると、レインはベッドの前で立ち尽くしていた。視線をベッドに向けると、老人は満足そうな顔で眠っていた。いや、これは……

 

「……師匠、最初は普通に歩いてたの。でもクエストを進めるごとにね、どんどん痩せていってるような気がして、気が付けば寝たきりになってたの。」

 

おそらくそういったストーリーのもとにあるクエストなのだろう。レインは涙を堪えながら続けた。

 

「これはゲームで、師匠がNPCなのはわかってる。でも、師匠と過ごした日々は本物だった。また別の誰かがクエストを受ければ、師匠はまた元気になるんだろうけど……それはもう私の師匠じゃない。だからこれで、お別れ。楽しかったなぁ…」

「レイン…」

「……不思議な爺さんだったな。」

 

基本的にNPCは決められた文言しか喋らない。しかしこの老人とは、ある程度会話ができていたような気がした。俺のことを「風の子」と呼ぶのも元から組み込まれていたものだったとしても、『神速・抜刀術』の出現も相まって本当に偶然だったのかと思う。俺以外にたまに訪ねてくるプレイヤーがいなかったらしく、検証のしようがないが。

 

「……よし!行こう、二人とも。」

「…うん。」

「…あぁ。」

 

外に出たレインは家に向かって「今までありがとうございました」と頭を下げる。俺とフィリアもそれにならい礼をして、3人で街へと戻る。その途中で、改めて決意する。

 

「フィリア、レイン。俺はみんなを守れるように、この剣を振るうよ。」

「いっぱい使ってあげてね。きっと師匠も喜ぶと思うから。」

「頑張ってねソーマ。応援してる。」

 

翌日、2人目のユニークスキル持ちのプレイヤーが現れたと、アインクラッド中に知られることになった。

 

 




Re:ホロフラを進めてるせいかフィリアの好感度が高い気がするのは気のせいかな?
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