飯食え・アーカイブ   作:混沌の魔法使い

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メニュー3 おにぎり定食

メニュー3 おにぎり定食

 

夕食を食べ終えた段階で襲ってきたヘルメット団と戦っているユメとホシノを窓から見る。

 

「タンクのユメとアタッカーのホシノって所か。2人ともめちゃくちゃに強いな」

 

大きな盾を持ってるユメが守り、ショットガンと拳銃を使うホシノがアタッカーと役割分担がきちんとされ、闇雲に攻撃を仕掛けてくるヘルメットを被っている女子高生を次々と撃退する。

 

「こっのおッ!」

 

「げぶっ!?」

 

シールドバッシュで吹っ飛ぶヘルメット団とやら、普通なら死んでるほどの鈍い音だったが痛いと叫びながら撤退している。

 

「ぎゃあッ!?」

 

「いてえッ!?」

 

「本当に数ばかり多くて困ります」

 

ショットガンを至近距離でブッパするホシノは少し怖いが、それよりも撃たれたほうがピンピンしてることに驚かされる。

 

「マジで痛いだけなんだな……」

 

銃で撃たれても血が出る事も無ければ、死ぬ事もない。多分俺なら即死だろうが、これがキヴォトスでは当たり前なのかと戦慄する。

 

「まぁ訳の分からん俺が言う事じゃないか?」

 

前世の記憶のようなものがある俺がいるんだ。正直子供の喧嘩の延長で銃を撃ち合うのは異常だが、これもここキヴォトスでは当たり前と無理に納得する。

 

(しかし、なんだ。全員同じ銃を使ってるな? いや、違うのか? 分からん)

 

銃に詳しい訳ではないので詳しい銃は分らないが、どうもあのヘルメット団とやらは全員同じ銃で武装しているように見える。銃の値段は分らないが、決して安くはないだろう。それなのに全員同じ武装というのがどうも引っかかった。

 

(グルか? となると大分不味いか)

 

地上げ屋がヤクザや反グレを雇うのは良くある事だ。出て行かざるを得ない状況を作るために嫌がらせや襲撃をするのはやつらの常套手段だ。

 

「……止め止め、悪く考えるのは止めだ」

 

不良が喧嘩を仕掛けてきている。それも問題があると言えば問題はあるが、借金取りと繋がってるなんて悪く考えるのは止めようと頭を振り、俺はユメとホシノを労う為に話が終わった後に出そうと思っていたアイスクリームを冷蔵庫から取り出した。

 

「冷たくて美味しい~」

 

「ですね。甘さと冷たさが身体に染み渡っていくようです」

 

ヘルメット団を撃退した2人には何故かクックマンのスキルの料理バフが入っていたようだった。その件については先に言えと言われたが、俺も知る良しも無かったのでそこに関しては許して貰いたい。

 

「えっとカワサキさん。クリアするべき問題って言ってましたけど、人員と土地の他にもありますか?」

 

「ん? そうだな……大々的な広告をしたい。と言ってもアビドスに商業施設が出来たって言っても嘘にしか思われないだろうから、出来ればTVとか動画でアピールしたい。キヴォトスにTV局とかあるか?」

 

逆に俺がそう尋ねるとユメもホシノも揃って気まずそうな表情をする。

 

「もしかして……報道関連も学生か?」

 

「はい。クロノスジャーナリズムスクールが報道関連をしています。ただ……私情が入ったり加熱するのでフェイクニュースとかも多くて」

 

「マスゴミじゃねぇか」

 

なんで学生が、いや100歩譲ってもフェイクニュースやガセは駄目だろう。

 

「あ、でもでも、雑誌とかはしっかりしてますよ? 月間キヴォトスとか、月間クロノスサイトとか!」

 

「雑誌……雑誌かぁ……それだとちと遅いよなあ……初手は出来れば大きく打ちたいんだが……」

 

報道関連は学生ではないと思っていたが、報道関連も学生で、しかもかなり信憑性が怪しいとなるとCMの効果はかなり薄くなりそうだ。

 

「ここで1回情報を整理しましょうよ。解決しないといけない問題も、その解決策も1回整理したほうがいいです」

 

「そうだな、よし。そうするかユメ」

 

家庭科室ではなく、生徒会室へ向かい。アビドスを復興する為に解決しなければならない問題を1度書き起こすっていうのはいいアイデアだと思ったのだが……。

 

「ひぃん……多いよぉ……」

 

書き起こせば思った以上に問題が多く、半泣きのユメの嘆きの声に俺は深い溜息を吐くのだった……。

 

 

 

生徒会室の黒板に書かれている問題は分かっていることだがかなり多かったです。

 

1 砂嵐問題

 

2 借金の返済問題

 

3 カタカタヘルメット団の襲撃についての対策

 

4 土地の問題

 

5 人員問題

 

6 生徒問題

 

7 ハイランダーとの交渉

 

8 砂漠横断鉄道の利用権の捜索

 

9 カワサキにキヴォトスの情勢を覚えて貰う。

 

 

と箇条書きにしても9つ、その内で2・4・8・9の問題の解決は急務だった。外の世界のルールや法律は知っていても、キヴォトスの法律を知らないカワサキにキヴォトスの情勢を覚えて貰うのはかなり重要な事だ。

 

(悔しいですが、私達では思いつかない事を提案してくれますしね)

 

私やユメ先輩では気付けなかった点や、別のアプローチを提案してくれるが、やはりキヴォトスのルールを覚えて貰わないとカワサキ自身に危険が及ぶかもしれないので、そこも急務だ。

 

「さてと……とりあえずだが、今差し当って解決しないといけない問題はどれだ? ホシノ」

 

「そうですね、利息の返済日が5日後なので足りない分の480万円をなんとかしないといけないですね」

 

「ひぃん! ごめんね、ホシノちゃん」

 

「いえ、ユメ先輩が悪いのでは……」

 

ユメ先輩の捜索の為に時間を割いた4日間その間のバイトを全部キャンセルし、宝探しも中断していたので返済しなければならない利息に500万近く足りないのが急務だ。

 

「……500万も稼げるのか?」

 

「まぁ……本来ならギリギリで間に合う予定でしたよ。キヴォトスの住人全部がヘイローを持つわけではないので、ヘイロー持ちがやるアルバイトは比較的高額なんですよ、あとは指名手配犯を捕まえてヴァルキューレに連れて行って懸賞金とかを貰ったりしてます」

 

1時間2000円とかのアルバイトも決して少なくない。だがそれと同時に悪辣な大人に騙されることも多い。だからアルバイトよりも指名手配犯を捕まえるほうがいいが、今は間が悪く指名手配犯の情報もないので宝探しをするしかないのだ。

 

「それで5日後までに間に合うのか?」

 

「今回は大分厳しいです……宝探しでもしないと……駄目かなあ」

 

埋もれてしまった廃墟から貴金属などを探して売却するのが1番現実的だけど……。

 

「でも校舎の近くだともう可能性はほぼ無いですよ? かなり遠出しないと……」

 

ここら辺で売れそうなものはもう全部掘り尽くした。宝探しをするとなるとかなり遠出しないといけないが、移動と運搬を考えるとかなり厳しい。

 

「足があれば良いんですけど、カワサキ。何かありませんか?」

 

「……車でも出すか? 確かあったような気がする」

 

「え!? 車あるんですか!? じゃあなんであの時空を飛んで」

 

「道が判らないのに当てずっぽうで移動して更に遭難する訳には行かなかったからな。それで車を出せば何とかなるか? 見つけた売れそうなものはアイテムボックスに格納すればいいし、それで行くか?」

 

移動の足があるなら遠出も可能になるし、なによりカワサキがいれば異次元みたいな所に道具を格納出来るので運搬問題も解決だ。

 

「宝探しのついでに利用権を見つけれるといいね」

 

「……かなり厳しいと思いますが、やってみましょう」

 

ユメ先輩の鞄を砂漠地帯から見つけるのはかなり難しいが、横断鉄道の利用権が必要なので宝探しと平行して探してみる価値はある。

 

「次は土地の問題だけどやっぱり買い戻すしかないかな?」

 

「それは無理でしょう。借金がある私達では土地を買う前に借金を返せと言われるでしょうし……」

 

私とユメ先輩がカワサキに視線を向けるとカワサキは分かってると頷いた。

 

「アビドスと無関係を装ってカイザーだったか? 土地を買えるか、もしくは借りれるかは試してみるか、問題は元金だが……宝探しで見つからなかったらこれを使おう」

 

そう言ってカワサキが出したのは金の延べ棒だった。私もユメ先輩も思わず目を丸くする。

 

「こんなものがあるなら先に言ってくださいよ。これを売れば今回の利息は何とかなりますよ」

 

「いや、ホシノもユメも見てくれ、これシリアルナンバーないんだよ」

 

言われて金の延べ棒を確認すると確かにシリアルナンバーがない。

 

「これってなんで持ってるか分からない類ですか?」

 

「YES」

 

「なんで英語なんですか……とはいえ、これを売るのは不味いですね。下手をすれば私とユメ先輩は更正局送りですよ」

 

「ひぃん……やっぱりそう上手い話はないよね……」

 

金の密造や窃盗を疑われれば終わりだ。だからカワサキも出し渋っていたのだと分った。今の問題が解決しても後々大きな問題になる可能性があるのならばそれを避けるのは当然だ。

 

「とりあえず明日の宝探しで大当たりを見つけれることを祈るか」

 

「……ですね」

 

「頑張ろう! 3人で知恵を出せばきっとなんとかなるよ。それじゃあカワサキさん、キヴォトスの勉強をしましょうか?」

 

「悪いな。よろしく頼む」

 

「構いません。美味しい食事も作って貰ってますしね」

 

ユメ先輩の明るい励ましの言葉に笑みを零し、次の問題――即ちカワサキにキヴォトスのルールを覚えて貰う為の授業を下校時間まで行い。

 

「ここで休んでくださいね! いくら平気でもちゃんと寝ないと駄目ですから」

 

「分った、今日はここで休ませてもらうよ」

 

「はい、そうしてくださいね。じゃあ帰ろうホシノちゃん」

 

「分りました。ではカワサキまた明日」

 

「おう。ユメもホシノも気をつけてな」

 

用務員の小屋ではなく、生徒会室の机を片付け保管しておいた羽毛布団やマットレスをユメ先輩と一緒に準備し、気をつけて帰れよと見送ってくれるカワサキに頷き、私とユメ先輩は帰路についた。

 

「クラン長が私で……ホシノちゃんはどんな役職が良い?」

 

「別に何でもいいですよ。飾りですし」

 

「そんな事ないよ。やっぱりこういうのは大事だと思うんだ。あ、そうだ。カワサキさんは先生とか、顧問とかどうかな?」

 

「どうでしょう? あの人ならそういう柄じゃないって良いそうです」

 

「あは。確かに言いそう」

 

私とユメ先輩だけのアビドス生徒会。今も大人は嫌いだけど……それでも私とユメ先輩とカワサキがいる今は不思議とそう悪い気はしなかった……。

 

 

 

気のせいかもしれないけど、カワサキさんがアビドスに来てくれてから少しずつ視野が広がって来た気がする。闇雲に借金を返済するのではなく、何をすればいいのか、そしてそのために解決しなければならない問題が見えてきた気がする。

 

「見えてはいますよユメ先輩。ただその問題の解決策が不明瞭ってだけで」

 

「ひぃん……ホシノちゃん。もうちょっと前向きになろうよ。多分土地問題が解決すれば、最初の一歩は踏み出せるよ」

 

カワサキさんが持っている道具で商業施設を作る、勿論維持費と人件費という問題はあるがそれでもアビドス復興の第1歩は踏み出せる。

 

「その為にも今日の宝探しは気合を入れないと駄目ですね、利息の確保と、土地を借りるか買うための代金に、砂漠横断鉄道の利用権も探さないと」

 

「ひぃん……現実に引き戻さないで……」

 

いつもの宝探しだが、いつも以上に厳しい条件が幾つもあり泣きたくなるが……それでも不思議と前よりは不安はなかった。

 

「おはよーござまーす!」

 

「おはようございます」

 

「朝から元気だな2人とも、おはよう」

 

家庭科室で待っているという書置きを見て、家庭科室に向かうとカワサキさんは家庭科室で何かを作っていた。

 

「何をしてるんです?」

 

「何って弁当だよ、弁当。宝探しって事は戻ってこないだろ? 昼飯を準備しないと駄目だろ? 良し、出来たっと。今朝飯を用意するから待っててくれ」

 

弁当の準備が終わってすぐ朝食の準備に入るカワサキさんに一体何時から起きてたんですか? と尋ねる。

 

「ん? 4時くらいだな。爺だから目が覚めるのが早いんだよ」

 

「爺ってカワサキさん若いですよね?」

 

「んー? どうだろうな。覚えてないから分らんよ」

 

「自分の年齢……あ、いや。失礼しました」

 

「はははは、気にするなホシノ。ちょいと実験の影響で記憶の欠落があるだけだ、大した問題じゃない」

 

「「大した問題ですよ!?」」

 

記憶の欠落を大した問題じゃないというカワサキさんに思わずホシノちゃんと怒鳴ってしまった。

 

「その内思い出すさ。俺は俺、それで良い。ほい、出来たぞ」

 

自分の事になるとすぐ話を切り上げてしまうカワサキさんは卵焼きと味噌汁を私とホシノちゃんの前におき、のりの佃煮や鮭のほぐしみ等を机の上に並べる。

 

「さて、おにぎりにするが何にする?」

 

「あ、じゃあ鮭を」

 

「では私はツナマヨを」

 

了解とカワサキさんは頷き、手を濡らすと炊飯器から湯気の立つご飯を取りおにぎりを握り始める。

 

「熱い、それ絶対熱いですよ!?」

 

「熱くないんですか?」

 

手の上に米を広げ、その上に具材を広げ、上から米で蓋をして優しく優しく三角に握っているが、手の間から湯気が上がっていてお米の熱さが簡単に想像出来て熱くないのかと、熱いと分かっているのに尋ねてしまう。

 

「あん? 熱いに決まってるだろ? なに言ってる?」

 

なんか私達がおかしい見たいに言われた……私としてはカワサキさんを心配したつもりなんだけど……。

 

「美味い物は美味い作り方があるんだよ。熱いのは我慢すれば良い、ほい。出来たぞ」

 

綺麗に三角に握られたお米に乗りが巻かれた、少し大きめのおにぎりが皿の上に乗せられる。

 

「いただきます」

 

「いただきます」

 

「おう。召し上がれ」

 

おにぎりを手に取り小さく齧って驚きに目を開いた。

 

「甘い! このおにぎり甘いです!」

 

砂糖とかの甘さではなく、お米が持ってる自然の甘さが口の中一杯に広がり、米も口の中でほろりと広がり、塩鮭の脂と丁度良い塩加減がお米の甘さと一緒に口の中に広がる。

 

「これ……どうやってるんですか?」

 

「普通だよ、普通。良い米と水に気を使えば誰でも出来る」

 

カワサキさんの誰でも出来るは物凄くハードルが高いと思う、少なくとも私とホシノちゃんには無理だと思う。

 

「お米も綺麗ですし、それに凄く舌触りが良いです」

 

「そう、それ! なんかこう噛んでても全然気にならないんですよ」

 

艶々のお米は見ていても綺麗だし、パリッとしている海苔の食感も凄く良い。

 

「飯を食って疲れてたらしょうがないだろ? 飯を食うときはリラックスしないとな、良し。出来た、牛時雨出来たけどどうする?」

 

「あ。それお願いします!」

 

「私も」

 

牛時雨なんて絶対美味しいと思いながら鮭おにぎりの残りを食べ終え、卵焼きに箸を伸ばす。

 

「これ少し塩辛いですね?」

 

出汁ではなく、醤油を使ってるのか少し辛い卵焼き。だけどこれが抜群にご飯のお供になる。

 

「熱中症にならないように少し濃い目にしてるんだよ。熱中症に脱水症状なんていくら対策しても対策出来ないからな」

 

「なるほど、一理ありますね。だからこの味噌汁も少し辛めと」

 

「でもお揚げの味噌汁私は好きだよ」

 

お揚げとネギの赤味噌の味噌汁。確かにちょっと濃い目だけど……カワサキさんのいう通り砂漠で宝探しをするのだから摂りすぎは怖いけど、しっかりと塩分を取っておいたほうがいいのは間違いない。

 

「そういうこと、ほれ、出来たぞ。牛時雨」

 

「わぁ! ありがとうございます。んー! これも美味しいです!」

 

甘めのお米の中の牛肉の薄切りの甘しょっぱさと、その歯応えと脂は朝から食べるには些か重いけど、宝探しの事を考えて体力をつけると思えば食欲が出て来る良い味付けだ。

 

「カワサキは食べないのですか?」

 

「お前達が来る前にもう食べた。インスタントラーメンだが」

 

そういわれてふと気付いた。カワサキさんが私達にご飯を作る時カワサキさんは一緒に食事をしてないことに……。

 

「もしかして私達に普通に食べさせて、カワサキさんってインスタントばっかりですか?」

 

「ん? まぁあれだ。自分で食うのはずぼらになるんだよ。人に食わせるのは気を使うけどな」

 

「今度からは私達と一緒に食べましょう。そっちの方がいいですね、決まりです! あ、カワサキさん今度は梅干をお願いします」

 

「はいはい、分りましたよっと、クラン長がそういうならそうしましょうかね」

 

「馬鹿にしてます?」

 

「さぁ? だがそうだな……ユメは……俺の親友に似てる……ような気がする。お人よしで、面倒事を背負い込んで、貧乏くじを引いても、仲間の為に笑ってられる……うん。分った、これに関しては俺が全面的に悪い。お前の言う通り食事をする時は一緒にしよう」

 

どこか寂しそうな、儚く消えてしまいそうな表情のカワサキさん。その姿を見れば嫌でも分ってしまった。

 

「思い……だせないんですか? その親友さんの事を……」

 

「まぁそうなる。でもまぁ……その内思い出せるだろうよ」

 

思い出せる保証もない。いや、思い出せるかもしれないという可能性に縋っているように私には見えた。

 

「良し、決まり。生徒会の急務追加!」

 

「なんですか? でもまぁ分りますけど」

 

呆れたようなホシノちゃんだが、私の考えている事を理解してくれたのかしょうがないなあと言わんばかりの笑みを浮かべていた。

 

「カワサキさんの記憶が戻るようにする! これも急務で!」

 

この優しい人が、心から笑えるように、欠落してる記憶が戻るように生徒会として解決する問題に付け加えた。

 

~2年後~

 

「私は2年前の自分を殴りたいよ。ホシノちゃん」

 

「気持ちは分かりますけど止めて下さいね? ユメ先輩」

 

「だっておかしくない!? セミナーに、正義実現委員会に、ゲヘナの指名手配犯に、百鬼夜行の問題児に、ワイルドハントの鬼才、皆カワサキさんをアビドスから連れ出そうとするの止めて欲しいんだけどッ!?」

 

「それは分ります。カワサキさんはアビドスのカワサキさんですからね」

 

「ん、先輩達がまた何時もの話をしてる。だけどカワサキは私達のカワサキなのは同意する」

 

「あはは……ですね。でもカワサキさんはカワサキさん自身の物なのでは?」

 

「でもカワサキさんを引き抜こうとするのは止めて欲しいですよね~」

 

「っていうかなんでアビドスの責任者を連れてこうとするのよ!? おかしいわよ」

 

カワサキさんのように記憶が欠落しているが、カワサキさんを知ってる生徒があちこちにいて、「私達」のカワサキさんにアプローチを掛けて来る事がとんでもないストレスになっていた。

 

「昼飯出来たぞ。んん? どうした。なんか妙な雰囲気だが?」

 

「いえ、なんでもないですよ。皆ご飯の準備しよ」

 

「お前はお前でいい加減わざと留年する止めた方がいいと思うんだが?」

 

「あーあーきこえませーん」

 

2年間留年してる私にはカワサキさんの小言よりも、私達からカワサキさんを奪おうとする相手の方がよっぽど脅威であり、それが理由で私は自分の意志で留年を続けていたのだった……。

 

 

下拵え 宝探し/取引 へ続く

 

 




という訳で今作ではユメパイセンは留年しております。カワサキさんの側にいること、カワサキさんを奪われないようにと、もう大分グラビテイですが、まぁここまで重くなるまでの過程も今後書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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