飯食え・アーカイブ   作:混沌の魔法使い

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メニュー2 フレンチトースト

メニュー2 フレンチトースト

 

ユメ先輩と一緒に登校する。もしかするともう会えないかもしれないと先日まで思っていたので、こうしてユメ先輩と一緒に入れるのはとても嬉しいのだが……。正直今はどんよりというか、もやもやとした自分でも上手く表現出来ない塊が胸の奥にある感じがする。

 

「カワサキさんにもスマホを用意したほうが良いかな? 多分スマホもってないだろうし」

 

「どうでしょう? 案外すぐにアビドスを見限って別の学区に移動するかもしれないですよ?」

 

カワサキ――。ユメ先輩を助けてくれた恩人で「大人」で、黒服の実験台にされていた外から来た人。その人に会うのが私は凄く気まずかった。

 

(疑っていた、警戒していたんです)

 

キヴォトスにはいない大人の人型の男性。本当な黒服達の仲間ではないのかと疑い、傷の手当という名目でカワサキの上半身を見て絶句した。切り傷、刺し傷、火傷の後に切開されたであろう痕跡の数々……それはどう見ても実験台にされていたという証拠で、私もそうなっていたかもしれない光景を私に容易に想像させた。

 

(それなのに私は、まだカワサキに良い感情を抱いてない)

 

あの凄惨な姿を見ても、大人ということで嫌悪感を抱いてしまう自分にうんざりする。

 

「出来れば協力して欲しいなー。私とホシノちゃんじゃ分らない事もカワサキさんは知ってそうだし」

 

「そうですね、仮にも大人ですし、知識は私達より上かもですね

 

そんな私の心情に気付かず嬉しそうに話をするユメ先輩に適当に相槌を打つ、ユメ先輩が楽しそうなのは良いがその話題がカワサキというのがどうも複雑だ。そんな事を考えながらユメ先輩と登校する。

 

「あれ。カワサキさんいないね?」

 

「ですね」

 

用務員の部屋を宛がったが、ボロボロのままでとてもここで一晩を過ごしたとは思えない。いや、過ごせるような部屋ではないのでいなくて当然なのだが……。

 

「今日は掃除を手伝ってあげたほうがいいかもね」

 

「……ですね」

 

追い出そうとしてこの部屋を宛がった私には気付いていないだろう。笑みを浮かべて片づけを手伝ってあげようというユメ先輩に曖昧な返事を返す。

 

「あ、それにコンビニとかの場所も教えてあげないといけないかも。ホシノちゃんはどう思う?」

 

「魔法使いでも日用雑貨とかは必要かもですね」

 

魔法使いなんて馬鹿げてると思いつつも、昨日の空を飛んだ経験と一瞬で私の傷を治した液体を思えば魔法使いとしか言いようがないのも事実だった。でもだからこそ……思うのだ。

 

(なんでアビドスに残ろうとするのか分らない)

 

昨日も言ったがあれだけの能力があれば何処でもやっていける。それなのにアビドスに残ろうとするのがどうしても腑に落ちない、黒服の所から逃げてきたとユメ先輩が聞いたと聞いているし、昨日凄惨な実験の痕跡を見たのに、それでも嘘かもしれないという疑念がどうしても消えない。

 

「だよねー」

 

にこにこと笑うユメ先輩と共に生徒会室へ向かうと明かりがついているのが見えた。

 

「おはようございま……」

 

「どうし……は?」

 

扉を開けて絶句しているユメ先輩を押しのけて生徒会室を覗き込み、私も絶句した。何故ならそこには想像にもしなかった光景が広がっていたからだ。

 

「……ブツブツブツ。あー……ちっ、違うな。また資料の探しなおしかよ。連邦生徒会が1枚噛んでるしかわからねぇじゃないか。やっぱもうちょっと奥に行かないと駄目か? いや、それとも本館を探すべきか……?」

 

砂塗れの服で机の座り何かを書いているカワサキ。その回りにはとんでもない数の本が山積みになっていた。それは昨日下校した時にはなかったもので、カワサキがどこから運んで来た物だったのは明らかだった。

 

「昨日から?」

 

私とユメ先輩が下校した後もずっと何かを調べていたのだろう。砂埃で汚れ、どこかで切ったのか少し色が変わっているワイシャツと苦労の跡が見て取れる。口先だけではなく本気でこのアビドスをなんとかしようとしている証だった。

 

「ん? ユメとホシノ? んだよ、もう朝かぁ。全然気付かなかったぜ……」

 

私とユメ先輩に気付いたカワサキは見ていた本を閉じて、机の上のマグカップに口をつけてから背伸びをしながら立ち上がった。

 

「朝飯食ったか? まだならなんか作るぞ」

 

なんでもないように何か食うかと尋ねてくるカワサキ。それは純粋な好意であり、私達の身を案じているのが分ってしまった。

 

「カワサキさん寝ました?」

 

「あん? 1日くらい寝なくても大丈夫だ。ああ、そうだ。朝飯食ったらちょっと色々聞かせてくれ、俺だけじゃ分らんことが多すぎる。推測で動くわけには行かないからな」

 

「いや、それはいいですけどちゃんと寝てください」

 

ユメ先輩に叱られながらも分かった分かったと軽く流すカワサキは私の知る大人とは違いすぎた。心身を削り、本気で私達に寄り添おうとしている。口先だけの大人とは余りにも違いすぎた。

 

「そうだ。ホシノ」

 

「は、はい!?」

 

突然声を掛けられ思わず上擦った声で返事をしてしまう。

 

「甘いもんって平気か? いや、俺は年頃の娘さんが喜びそうなもんっていえば、ホットケーキとかフレンチトーストくらいしか思いつかんのだが、どっちがいい?」

 

「え、あ……じゃあフレンチトーストを」

 

反射的にそう返事をするとカワサキは了解と笑い、家庭科室へ向かって歩き出し、私とユメ先輩もその後を追って家庭科室へと向かうのだった。

 

 

砂を取り除いたりしてやっと入れた本館の旧生徒会室には連邦生徒会とのやり取りが記されたメモなどが多数残されていた。砂嵐のおかげで事前に回収されずその場に残されてたのは本当に良かった。

 

(見た感じだとこのキヴォトスの学校の取りまとめみたいなもんか、まぁ実際は汚職議員みたいな集まりみたいだが)

 

連邦生徒会が定めた法律や条約には「各学園およびその生徒が健全な生活を送れるように支援する」という物があったが、現状それが果されていない事、そしてユメ達の前の生徒会にカイザーローンを紹介したのも連邦生徒会だと分った。それが俺の徹夜で調べた成果で、胸を張って成果とは言えんが切り口くらいは見つけられたようだ。

 

「さてと……ちゃっと作るから少し待っててくれ」

 

ユメ達にそう声を掛け、アイテムボックスから4枚切りの厚切り食パンを取り出す。

 

「それどうなってるんですか?」

 

「知らん」

 

使えるから使っているのであってアイテムボックスの原理なんか知るはずもない。俺の返事に呆れた様子のホシノに苦笑しながら包丁で食パンを半分に切り、横方向に切れ込みを入れる。

 

(フライパンだしな、まぁこれで良いだろ)

 

格子状に切れ込みを入れて1枚で作るのもいいが、フライパンで作ると崩れやすくなるので焼きやすく、崩れないように半分に切って切れ込みを入れる。

 

「わ、カワサキさんって片手で卵を割れるんですね?」

 

「言っただろ? こんななりでも料理人だってよ。というかこんなの難しくともなんともないもんだ」

 

ボウルに片手で割りいれた卵を泡だて器で軽く解き解してから砂糖を加えて、切るようにすり混ぜる。利き手でかき混ぜながら生クリームと牛乳を少しずつ加えて卵液を作り、漉し機で漉してバットに移し卵液の中に食パンを浸し、残った卵液を上から掛けて冷蔵庫に入れる。

 

「次っと」

 

サニーレタスを手で千切り、トマトは2cm角で切り、水気をしっかりと切ったらサニーレタスとトマトを合わせて冷蔵庫に入れ、変わりに卵液に浸しておいた食パンを取り出し、ひっくり返す。

 

「醤油、みりん、ごま油、砂糖っと」

 

醤油とみりんは大さじ1、酢は大さじ2、ごま油と砂糖は小さじ1でドレッシングを作る。

 

「手際いいですねー」

 

「練習すれば誰だって出来る。そう難しいもんじゃない、大体は段取りだよ」

 

フライパンにバターを1欠溶かし、バターが溶けたらパンをフライパンの中にいれ弱火でじっくりと焼き始める。

 

「目玉焼きの付け合せウィンナーとベーコン、どっちがいい?」

 

「あ、私はウィンナーがいいです」

 

「わ、私はベーコンで」

 

「了解」

 

新しいフライパンにスライスベーコンを格子状に並べ、もう1つのフライパンには少量の水をいれそこでウィンナーを茹でる。

 

「ほっと」

 

フレンチトーストを90度回転させ側面を焼き、焼けて来たベーコンの格子状の真ん中に卵を落としたら、水を大さじ1加えて蒸し焼きにする。軽く茹でたウィンナーを今度は焼きパリッとした食感に仕上げる。

 

(耳はしっかりと焼いて、目玉焼きは半熟、後はスープは手抜きだがコンソメスープの元を使うか)

 

マグカップにコンソメスープの元を入れ、片手鍋でお湯を沸かす。

 

「良し、OKっと」

 

各面をしっかり2分焼いてカリっと仕上げたフレンチトースト。半熟卵のベーコンエッグとウィンナー。ごま油の和風サラダとコンソメスープ。後は飲み物でパックの紅茶とまぁ朝食と考えれば妥当なラインの仕上がりにはなったな。

 

「手抜きで悪いが、まぁこんなもんで勘弁してくれ。ちょっと調べ物に夢中になりすぎた」

 

あれを作ろうか、これを作ろうかとか色々と考えていたのだが……結局手抜きになってしまったと謝罪しながら完成した朝食をユメとホシノの前に起き、俺は自分の分のベーコンエッグを焼き始めるのだった……。

 

 

 

手抜きで悪いといって差し出された朝食は私からすれば到底手抜きとは思えないメニューだった。それに待っていたのも10分くらいと考えると本職の人は違うんだなあとぼんやりと思う。

 

「俺はいいから温かいうちに食べな」

 

「あ、はい。いただきます」

 

「い、いただきます」

 

ホシノちゃんと一緒に手を合わせていただきますと口にしてナイフとフォークを手にし、フレンチトーストを小さく切って頬張る。外はカリっと、中はふわふわで、噛み締めると口の中にじゅわっと甘さが広がる。

 

「美味しい! カワサキさん美味しいです」

 

前にDU地区で食べたフレンチトーストよりもずっと美味しい、そんな気がする。あれはもうちょっとべちゃべちゃしていたし、こんなにカリっとした食感ではなかったし、何より1500円も払うことになったことを考えるとあれに1500円の価値はなかったような気がする。

 

「そりゃ良かったよ。あんまり作ったことは無いが、なんとかなるもんだ」

 

「……作ったことないんですか?」

 

ホシノちゃんが口に運びかけていたフレンチトーストを皿の上に戻し、カワサキさんにそう尋ねる。

 

「甘いもんは俺はあんまり食わんからな、頼まれれば作るが……まあ積極的に作ることはないかな」

 

積極的に作らなくてこの完成度……甘くて美味しいフレンチトーストなのだが……。

 

「なんかしょっぱい」

 

「……言わないでくださいよ、ユメ先輩」

 

「ん? 目玉焼きに塩を掛けすぎたか? 熱中症にならないように塩を多めにしたんだが」

 

違う、そういうことじゃない。いや、本職に勝てないのは分るんだけど……なんか凄く負けた気がする。

 

「むぐむぐ、このサラダも美味しいですよ。ただフレンチトーストには合わないと思いますが」

 

「手抜きって言っただろ? 本当はフルーツサラダとかオムレツ作りたかったんだけどな」

 

トーストの上にベーコンエッグを乗せ、キッチンシンクに凭れて食べながらなんでもないように笑うカワサキさん。

 

「止めようホシノちゃん。傷が深まるだけだよ」

 

「……ええ、そうですね」

 

柴関ラーメンの柴大将も良く笑う人だけど、カワサキさんも良く笑う人だ。料理人は皆笑顔良しなのかな? と思いながらベーコンエッグをナイフで切ると半熟で黄身が溢れてくる。ベーコンに黄身を絡めてフレンチトーストの上に乗せて頬張る。ベーコンの塩気と脂、半熟の目玉焼きのまろやかさと濃厚な旨味がフレンチトーストに加わる。

 

「本当に美味しいです、この半熟とか絶妙すぎます」

 

自分で作るとカリカリになりすぎたり、綺麗に半熟にならなかったりなのに、カワサキさんの目玉焼きは焦げ1つない上に、黄身も最高の状態の半熟になってる。

 

「ベーコンを先に焼いて、その上で焼くからな。後は弱火で蓋をして蒸し焼きにするのがコツだ」

 

「言われても良く分んないですよ」

 

その内分るとからからと笑いながらベーコンエッグトーストを頬張るカワサキさん。なんというかあれだ、大人の余裕って言うのを感じる。

 

「そういえば連邦生徒会がどうとか言ってませんでした?」

 

「飯が不味くなる話だから止めとけ、飯を食い終わってから話す。俺の推測も多いしすり合わせをしたい」

 

ホシノちゃんの問いかけに手をひらひらと振り、紅茶を飲んでいるカワサキさんに今は聞くべきじゃない話なんだろうと思い、コンソメスープを口にする。

 

「甘いのとしょっぱいのって美味しいですよね」

 

「それは間違いないな、旨味もずっと強くなるし、口の中もリフレッシュされる感じがある」

 

ここ最近携行食料とかビスケットが多かったのでちゃんとした食事は本当に久しぶりだから余計に美味しく思える。

 

「フレンチトーストにウィンナー……合うんですね、意外でした」

 

「甘いとしょっぱいの組み合わせは美味しいけどこれは意外だよねー」

 

私はベーコン、ホシノちゃんはウィンナーと違うけど、フレンチトーストにこういう脂っぽくて塩辛いものが合うって言うのは意外な発見だった。

 

「作り方次第だな。ここに粉砂糖とかシナモンとか掛ければ一気にデザートっぽくなるし、ハムとチーズをはさんでホットサンド風のフレンチトーストにしても美味い」

 

「得意じゃないっていう割にはすぐに出てきますね?」

 

「まぁレシピ本とか見るのは趣味でもあるしな。それで足りたか? 足りなかったらもう1枚焼くが、今度はホットサンド風かデザート風にしてみるか?」

 

「えっとじゃあ私はデザート風お願いしてもいいですかね? ホシノちゃんはどうする?」

 

「わ、私もデザート風を」

 

ちょっと物足りなさを感じていたのでカワサキさんの誘いに乗ったのだが……。

 

「ひぃん……これデザート風じゃなくてデザートそのものですよぉ」

 

「カロリーの暴力って知ってます?」

 

「うん? 甘いもんは別腹とか言わないか?」

 

フレンチトーストに蜂蜜とバニラアイスがトッピングされ、その上バニラアイスにはチョコソースと華の女子高生には体重計が怖くなるものをお出しされるとは夢にも思っていなかったが、私もホシノちゃんもしっかりと完食するのでした……。

 

 

 

 

朝から食べるには多すぎる量を食べ、カワサキが淹れてくれたカフェオレを飲みながらカワサキの言っていた食事が不味くなる話を聞くことになった。

 

「まず何だが、アビドスから連邦生徒会に支援の要請は出してるのか?」

 

「はい、1ヶ月に1回出してますけど返事はないですね」

 

カワサキがまず尋ねて来たのは連邦生徒会への支援の要請の有無だった。私もユメ先輩と一緒に文章を考えて送ったがただの1度も返事はない。

 

「……なるほど。次に聞きたいんだが、連邦生徒会っていうのは各自治区から選ばれた役員によって運営されているってことで合ってるか?」

 

「はい。それで合っていますけど……えっとカワサキさんは何が聞きたいんですか?」

 

ユメ先輩の言葉にカワサキはちょっと待てと言って机の上の山積みの本から1冊を取り出す。

 

「各学園およびその生徒が健全な生活を送れるように支援する。あとは予知出来ぬ災害が発生した場合自治区への支援を行うというものが定められているとある」

 

「ええ。そんなのは私達も知ってますよ。だから支援を要請しました」

 

私があんまりにも危なっかしいユメ先輩が心配になり、生徒会に所属した際に私もその本は調べている。だからアビドスは連邦生徒会に支援を受ける権利がある。

 

「最初に言っておくぞ? これは俺の憶測だが、多分連邦生徒会はアビドス高等学校に自治区を収めるだけの能力がないとして、自治区として認めてないんじゃないか? いや、そもそも自治区が残ってないのかもしれない」

 

「「は?」」

 

カワサキの言葉に思わずユメ先輩と一緒に呟いてしまった。カワサキが何を言っているのかすぐには理解出来なかった。

 

「ど、どういう事ですか!? アビドスの自治区がないってそんな馬鹿な事があるわけないじゃないですかッ!?」

 

「悪徳な金融会社から金を借りてるんだろ? 利息が払えない時に土地を売って、その金で利息を払えばいいとか提案して来た可能性はあるぞ。アビドス高等学校の近郊だからアビドスの土地って思い込むのはやばいと思う。下手をすれば不法占拠とかでありもしない罪をでっち上げられるかもしれない」

 

「い、いやそんな……事は」

 

カワサキが言うのは最悪の話だ。だけど……ありえなくはないと思う話でもあった。

 

「アビドスの管轄が既にこの高校回りだけとなると、支援をするよりもアビドスを潰したほうが早いってなる可能性はある。それに自治区として成立してないって判断されているかもしれない。例えば各学園は連邦生徒会に税金を納めるとあるが、アビドスは税金を納めてるか?」

 

「……納めてないです。借金の返済で手一杯で」

 

「次。現在の連邦生徒会にアビドスの生徒はいるか?」

 

「いませんね。私とユメ先輩だけですから連邦生徒会に所属する余裕なんて無いです」

 

私が入学した時にはまだ何人か生徒がいたが、今はその生徒も他校へ転校してしまっている。私とユメ先輩、それが現在のアビドスの生徒だ。

 

「次。かつてアビドスはマンモス高で、ゲヘナ・トリニテイ以上の権力を持っていたっていうのは合ってるか?」

 

「私は知らないですけど、昔はそうだったと聞いてます」

 

「カワサキ。回りくどいです、何を言いたいのかきっぱりと言って貰えませんか?」

 

本題を切り出してくれと私が言うとカワサキは小さく唸りながら、机をトントンっと叩いて考える素振りを見せる。

 

「……あのそんなに悩むことなんですか?」

 

「ん。いやな、第3者の目線から見ての話に加えてキヴォトスを知らないからな。俺の勘違いや思い過しも多いと思う、ユメとホシノに嫌な先入観を与えたくないっていうのもあるんだ。もっと証拠を集めないといけない段階だからな。とりあえず、これが正解と思わないでくれよ?」

 

カワサキはそう前置きし、私とユメ先輩がどこかで感じていた事を口にした。

 

「多分連邦生徒会はアビドスを潰したいんじゃないかと思う。だから他校への転校を勧めたんだ。この件は間違いなく随分と前の因縁というか恨みもあると思うんだよ。今の連邦生徒会は直接経験してないとしても、先輩とかに聞かされた恨みとかがあるのかもしれない。鉄拳政治のシェマタのな」

 

鉄拳政治のシェマタ――かつてアビドスに70人の生徒会長がいたアビドス混乱期を収め、アビドスの全盛期を率いた伝説的な生徒会長の名前がカワサキの口から出た。

 

「俺の予想ではかなりの人数がアビドスから連邦生徒会に所属していた筈。他の学園の意見を押さえ込んでアビドスに有利な条約を締結させたこともあると思う」

 

「ま、まさか……その時の恨みでアビドスに支援をしたくないってことですか?」

 

「ありえない話じゃないと思う。証拠も確証もないが……少なくともユメよりも前の生徒会にカイザーローンを紹介したのは連邦生徒会の会計の可能性が高い。多分砂に埋もれている本館の資料室とか、昔使っていたであろう他の校舎とか、資料庫とかを見つけれればもっと色々と分ると思うが、現状の資料から推測出来るのはこれくらいだ」

 

夢物語と笑うには腑に落ちてしまった。何度も出している支援要請の無視や、不自然に移転していくアビドスに残った店舗や転校していった生徒達――その全てに連邦生徒会がかかわっていた可能性があるというカワサキの推測は余りにも納得出来てしまうものなのだった……。

 

 

下拵え 現状/逆転の策/ユグドラシルズアイテム へ続く

 

 




連邦生徒会へのアンチではないですよ? ただ別の視点と観点から見たのと、連邦生徒会の癒着とか賄賂でまさかと思っただけですので、これはアリエナイだろうと思うかもしれないですが、私はこうかもしれないと思ったのでこうしてみたってだけですので、後この時代ではまだ連邦生徒会長は会長じゃないと思うのでそこら辺も関係してるかなと思ってこうして見ました。
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