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第25話 迷惑系? ただの犯罪者じゃないか

:ねねこトークうまいなー

:【10000JPY】刹月華の次に推してやろう

:刹月華の情報がざぶざぶ入ってくるのたすかる

:【50000JPY】刹月華を供給してくれてありがとう

:画面がかわいい女の子でいっぱいすぎてつらい

:てぇてぇ


 配信開始から約一時間。経過は順調だった。

 ちなみに現在潜っているのは第三層。

 僕のレベル上げも兼ねて、刹月華の三人が出てくるモンスターを討伐したりしながら和やかに雑談していた。


 モンスターを倒した時に近くにいれば、放出された魔素が云々(うんぬん)とのことで、特に僕は何もしなくて良いらしい。


 暗がりから飛びかかってくるボウリング玉サイズの樹木塊――木ネズミなるモンスターをぶっ飛ばして、好きな音楽の話で盛り上がる四人。ある意味唯一無二な絵面なのは間違いないし、何より眩しい笑顔は視聴者(リスナー)のみならず僕にとっても眼福である。


「あとはバンプオブビーフとかもけっこう聞きますよ」

「良いわよねぇ……私もよく聴くわ~♪」

「分かる~! 白虎も歌ってみたとかでよく歌います! 千華ちゃんは好きなアーティストとかいないの?」


 自らを苗字呼びするねねこは、普段から配信をやっているだけあってかなり話なれていた。自分のことにも触れつつ、良い感じに話を振っている。

 お陰で刹月華も自然と情報が開示されまくりで、スパチャも飛びまくりである。

 ガチ勢かどうかは知らないけれど、刹月華ファンにとっては永久保存版といっても過言ではない配信になりそうである。


「私? ん~、わりと何でも聴くけど……あっ、でもいまは友達とTAIYOU.(16)の曲でダンス練習中」

「おっ、ダンス好きなの? 今度、白虎と踊っちゃう?」

「体育祭の応援合戦で踊る予定なんだー! ねね姉も一緒に体育祭出る?」

「応援合戦……義務教育特有のワードが眩しいぜ……!」


 お小遣いにもならない、と木ネズミの素材を無視して適当にうろつく四人。このまま何の問題も無いかと思いきや、気になるコメントが飛び込んできた。


:気をつけろ 迷惑系配信者が刹月華を狙ってる

:「ダンジョン特定した」って突撃配信始めやがった


 迷惑系……?

 なんだそれ。


:うわマジだ 配信閉じて良いからさっさとダンジョン出ちゃった方が良いぞ

:なにそれ

:♰刃影(シャドウ)♰っていう覚醒者だ

:チーム名アイタタタタタ

:ニュースで見たわ ヤクザの事務所で大暴れして捕まってた奴らだ

:書類送検な

:その後キャバクラで女の子に暴力振るって捕まってなかった?

:そっちは本当に捕まってたな ちょっと前に出て来てたけど

雷神:すぐ行く 持ちこたえてくれ


 どうやら相当に面倒な奴らが近づいてきているらしい。

 コメントを示して状況を伝えると、ねねこの顔が険しくなる。配信中だからか、すぐさま柔和で明るい表情に戻ったけれど、思わず顔を顰めてしまうような奴らなんだろうな。


 刹月華なら実力で退けることもできそうな気もしたけれど、所長まで出動するくらいだから結構ヤバイ奴らなんだろう。


「……さて、配信も良い時間になってきたし、そろそろ配信終わろうと思いま――」

「オイオイ。折角出会えたってのにそりゃねーんじゃねーの?」

「おーっ! ホントに居るじゃーん! かわいー!」


 ……間に合わなかった。

 おそらくは僕たちに逃げられないよう、ギリギリまで近づいてから配信を始めたのだろう。

 片方は茶髪のロン毛をカチューシャでオールバックに流した男。

 もう片方は鼻にピアスをつけた、厳つい体格の坊主頭だ。


 LEDライトが取り付けられたカメラを片手に、オールバックがずかずかと歩み寄ってくる。


「はーい! 刹月華発見でぇーす! 前評判通りはづきちゃんっておっぱい大きいねぇ。何カップあんの?」


 あまりにも無礼で下品な質問に刹那さんが柳眉を逆立てる。

 が、何かを喋る前にねねこが刹月華を庇うように前に出た。


「やめてください! 今は私の配信に出てもらってるんです!」

「はー? 猫耳? 痛ってぇ女だな」

「良いじゃん。撮影しながら剥いてみて《《下の毛》》まで白いか確かめてやろうぜ」

「……あなた達。いい加減に――」


 刹那さんが手刀(しゅとう)を構える。これ以上迷惑をかけるならば実力行使も辞さない、と警告しているのだ。

 しかし、最初から迷惑をかけるつもりでやってきたこいつらにとって、それは悪手だった。


「――影縛り(シャドウバインド)


 スキンヘッドから魔力が迸った。何かの魔力を使ったのだ。

 ばちっ、と静電気にも似た衝撃が身体に走り、身体から一切の自由が消える。


 スキルのせいか、彫像のように固まってしまい、指先ひとつ動かすことができなくなってしまった。


「おーっ、やりぃ! 一発で全員固まったじゃんか!」

「へへへ、良いポジションで照らせたからな……人質取って交渉しなくて良いなんて楽だぜ……さて、今日の企画ですがァ」


 どぅるるるる、と口でドラムロールを真似したスキンヘッドがいやらしい笑みを浮かべる。


「人気覚醒者の裸、拝見しちゃいましょうのコーナーでぇす」

「ははははっ、サイコーだわ! 嫌だったらやめてとか言ってくれよなぁ」

「そうそう。何も言わないってことは同意よ、同意」

「……ッ!」


 あまりにも身勝手な言動。そして、本当に《《やる》》であろう気配に皆の顔色が変わる。表情すら動かせないスキル。

 動けないのであれば、どんなジョブだろうと関係ない。Aランクの刹月華に対してやけに強気だったのはそういうことか。


 迷惑系? ただの犯罪者じゃないか!


「最初は誰にする? やっぱはづきちゃんのヌードが一番楽しみっしょ」

「いやいや、最初でデカパイ剥いちゃったら楽しみ減るじゃん。まずは一番貧相なチビガキか――」


 バルト、やれッ!


『わぉんっ!』


 唯一動かせる眼で、バルトに指示を出す。

 同時、僕の意図を汲んでくれたバルトがとびかかり、実体化。


 ――オールバックの持つ《《カメラを》》すっ飛ばした。


「あぁッ!? 何してンだよ!」

「わ、悪ぃ!」


 焦る二人が慌ててカメラを拾いに行くが、既に僕らの身体の自由は戻ってきている。

 会話からの推測だったけれど、予想通りスキルの発動条件に光源の位置が関係していたようだ。


「クソッ、影し(シャドウバ)――」

「させる訳ないでしょう」


 ダンッッッ!


 スキンヘッドが再びスキルを発動させようとしたが、刹那さんの方がずっと早かった。

 大地を揺るがすような、強烈な振動とともに、ビル用の鉄骨よりも太く長い《《剣》》が召喚されていた。

 スキンヘッドの一歩横に、自重で大地にめり込む大剣。巨人が使うと言われれば納得してしまうサイズのそれは、当たれば間違いなく死ぬであろう一撃だ。


「妙な真似をしたら当てます」

「はっ! 殺すってか? ハッタリに決まってる! 覚醒者同士でも殺しは犯罪なんだぜェ!」

「……犯罪者はあなたたちでしょう。証拠の動画もありますから、ダンジョンの外に出たら自首してください」

「あ、ああ! 分かった! 自首する、するから見逃し――」


 大剣を手放した刹那さんが再び何かを召喚する構えを見せたことで、スキンヘッドが命乞いを始める。

 その場しのぎのでまかせにしか聞こえないそれに刹那さんの表情が険しくなる。

 

「――言っておきますが、ただの脅しではありませんからね。もし逃げるようならば、」

「逃げるようなら、君の大事なオトモダチ二人の顔に、傷が残るかもしれねーぞ」


 両手を前に突き出したオールバック男が刹那さんの言葉を遮った。

 追い詰められているとは思えない、見下したような表情をしている。


「ほら、後ろを見てみろ」

「……ッ!」


 オールバック男のスキルだろうか。

 千華ちゃんとはづきさんの肩に、ぬいぐるみが載っていた。可愛らしいキャラモノのぬいぐるみはしかし、両手に剃刀が取り付けられている。

 片方を首に、もう片方を頬に当てていた。


 ……どこまで卑怯な奴らなんだ……っ!


「おらっ、形勢逆転だぜ」

「へへへっ。ヌード企画、ラウンド2、ってなぁ……順番は前後すっけどよぉ、テメェから脱げよ」

「くっ……!」

「おおっと。『脱ぐから撮影してください』って言えよ。そうしないと、俺達が脅して強要したって《《勘違いされちまう》》からな」


 下卑た笑いを浮かべるふたりに、もはや我慢の限界だった。

 僕の正体がどうとか言ってる場合じゃない。こいつらをぶっ飛ばして三人を助けよう。


『ぐるるるるるるっ』


 バルト、お前も怒ってるよな。


「――バルト、やるぞッ!」

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