面接なしでスマホのアプリがあれば働ける「スキマバイト」は、介護業界で爆発的に広がっている。
東京都内を中心に介護施設20カ所で160回以上、スキマバイトをしている都内在住の介護福祉士の男性(34)から、東京新聞に情報が寄せられた。
「ひと言で表すなら、ひどい状態です」。男性が見た介護現場の実態とは──。(中村真暁)
◆利用者のことも教えてもらえず、放置状態
男性は今春、介護専門のスキマバイトアプリ「カイテク」から、東京都品川区の高級老人ホームのスキマバイトに応募した。
施設を訪れ呼び鈴を押すも、しばらく応答がなく、やっと出てきた職員は困り顔で答えた。
「あれ? 今日って募集してましたっけ」
他の職員にもあいさつしたが、無視が続いた。
現場は「丸投げ」状態だった。
利用者2、3人がいるダイニングに案内されたが、「掃除して」とだけ言われて1人にされた。
それ以外に具体的な指示はなかった。
男性は言う。「例えば利用者から水を飲みたいと言われても、水分制限やトロミの有無の確認が必要です。利用者のことも分からないまま自分の判断で動けば、命に関わります」
職員を見つけて「困っている」と訴えたが、「忙しいから、私に言わないで」と不機嫌そうだった。
◆「カイテクのくせに」バイトを見下す視線
別の職員から、男性は屈辱的な言葉も浴びせられた。
「カイテクのくせに、何言ってるの」
夜勤を終えたばかりの非常勤の男性にも話しかけたが、「ここの職員、やばいからね」とつぶやき、立ち去った。
スキマバイトを見下す視線だけでなく、きゅうきゅうとした雰囲気を感じ取った。
男性は介護歴14年のベテラン。カイテクで働き始めたのは、サービスが始まった6年ほど前、業界の新しい働き方に興味があった。
新型コロナウイルス禍ではスキマバイトを減らしたが、「稼ぎを増やそう」と最近再開した。
現在は派遣社員としてグループホームで働きつつ、時間があれば1日1~3時間、スキマバイトをしている。
◆8時間おむつ替えせず、嫌な作業はスキマバイトに
2年ほど前には大田区の特別養護老人ホームで、利用者10人ほどのおむつ交換を1人で担った。
必要な道具がある場所がどこかも教えてもらえず、利用者のADL(日常生活動作)の説明すらなかった。
試行錯誤していると、見に来た職員から「その人は感染症があるから最後にして」と注意された。本来は最初に説明すべきことだ。
気になったのは、多くがおむつから漏れるほどの便を失禁していたこと。
直前のおむつ替えの時間を聞くと、約8時間たっていた。あって...
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Саша 22 時間前
人手不足で人員配置基準を満たすためにスキマバイトを利用する施設があるのだろうけれども、新規入職した職員に仕事を教えるのと異なり、一度限りかもしれない人に入居者のADLや食事形態などを教えるのは現場の職員にとって負担を増やすだけだ。
負担が増えれば些細なことでイライラしやすくなり、不適切介護につながるだろう。そうなってしまうと、施設を運営する事業者、介護職員、入居者のすべてにとって不幸なことになると思う。
SNSを見る限りでは介護は誰にでもできる仕事と見下す人も多いが、誰にでも向いている仕事ではないし、入居者や利用者への声かけや介助方法を試行錯誤することも多いためスキマバイトなど単発の労働力に適さないと思う。
人手不足を解消するには、スキマバイトのような対処療法ではなく、すぐに実現できなくても根本的な問題解決をしないとならないのではないか。
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