日本経済を上向かせるラストチャンス
わが国の存在感が低下するようだと、国際世論におけるわが国の発言力の低下は避けられない。投資先としての日本の魅力度も低下する。
それを回避するため、今すぐに政治は協力して成長戦略を取りまとめ、実行に移すべきだ。取り組むべき範囲は広くなるだろう。成長期待の高いAI、ロボット、再生可能エネルギー、量子計算分野など、わが国の製造技術の重要性が高まる分野は多いはずだ。産業競争力の根幹をなす、基礎研究の強化も待ったなしだ。今ならまだ挽回のチャンスはある。
規制緩和などの構造改革により、一時的に企業の倒産が増えたり、失業率が高まったりするという痛みは避けられない。しかし、痛みなくして経済運営の効率性を高めることは難しい。世界経済の環境に合わなくなった法律や制度を改変する。起業支援を拡充し、人々のチャレンジ精神や新しい取り組みを増やす。
新しい発想、取り組みを増やし、持続的な経済の成長につなげる。そのための政策議論こそが、今のわが国に必要であり、重要なことと考えられる。もし、成長戦略が実行に移されれば、企業の設備投資や人材育成は加速し、成長期待は高まるだろう。
優先すべきは政権抗争ではなく成長戦略
それにより、個人金融資産(6月末で2239兆円)の50%を占める現金・預金が消費に回る可能性は高まる。個人消費の増加は、国内の企業が637兆円に膨れ上がった内部留保を賃上げや追加的な設備投資に回すことにもつながるだろう。
政府、政治家は多様な利害を調整し、人々のリスク許容度、成長期待を高めなければならない。党利党略に基づいた政権抗争ではなく、中長期の視点で日本経済の成長率を押し上げる政策議論が必要だ。
海外では、実際にそうした取り組みを進めた国もあった。リーマンショック後、イタリアは挙国一致で実務家内閣を組閣し、痛みを伴う改革を断行した。それがあったからこそ、現在、イタリア経済はユーロ圏の中でもそれなりの底堅さを維持している。
不安なのは、現在、わが国の政治家から、そうした覚悟が感じづらいことだ。このままだと、世界経済における日本経済の凋落はさらに鮮明化し、わたしたちの生活負担はこれまで以上に高まると懸念される。