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Illustratorが「こんなこと」になっている理由と背景

Illustrator 2025(ver.29.x)は「バギー(不具合が多い)」という声が目立ちます。特に29.8.1はまったくダメで、私(鷹野)もDTP Transitの記事で「非推奨」と書くほどでした。

Adobe MAXを控え、「Illustrator 2026のリリース前に、いまのうちに2024を入れておこう」というニュースまで出るほどです。多くのユーザーにとってアドビは「寄らば大樹の陰」的な存在ですが、こと、Illustratorに限っては現在、非常にシビアな状況です。

では、なぜこんな状況になっているのでしょうか。
背景には、アプリケーションの歴史的な構造と開発体制の変化があります。


1 | 建て増しによる弊害:38年分の積み重ね

Illustratorは1987年に登場し、現在で38年目
コンピューター業界で「10年」はひと昔と言われる中、その4倍近い歴史を持つソフトです。当然、ベースになっているコードは古く、改修と拡張を繰り返しながら今日に至っています。

たとえるなら──
もともとは小さな「平屋の商店」だったものが、改築を重ねて「巨大なショッピングモール」になっているような状態。
建て増しの度に配管や配線が複雑化し、思わぬところで不具合が生じるのです。

さらに、現在は開発拠点がインドに移転しており、不可能だったことを次々と実現しています。その裏で、既存機能との整合性がとれず、思いもよらないバグが発生するケースも増えています。

現在、アプリに求められる挙動に「共同編集」があります。これはクラウドに保存するからこそ、可能になる機能ですが、残念ながら、IllustratorやPhotoshopでは2025年の現在でも可能になっていません。

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2 | 新しい文字組みエンジンの導入

近年、Illustratorにも新しい文字組みエンジンが組み込まれました。
過去の文字組みとの互換性を保つための“橋渡し”機能も用意されていますが、そのぶん複雑化が進み、不具合の温床になっています。

日本語組版を扱うユーザーにとっては特に影響が大きく、表示崩れやレイアウト不整合など、従来では考えられなかった問題が散見されます。

文字組みアキ量設定に追加された新しいプセット「行末約物全角/半角」はむっちゃ使えます!

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3 | 開発体制とテストの課題

一般的に大規模アプリでは、ベータテストを通じてリリース前に十分な検証を行います。Illustratorにもその仕組みはありますが、実際のテスト期間は短く、ユーザーからのフィードバックが十分に反映されないまま正式版が出ることが多いようです。

かつては詳細なリリースノートが公開され、改良点が明確に共有されていました。しかし最近は、簡単なメモ程度の情報しかなく、変更点をユーザー自身が「宝探し」のように探し出す状況になっています。

せめて「こことここ、変えたからチェックしてみて」とあれば、もう少し念入りにチェックできそうです。

ベータ版

Illustratorに限らず、「ベータ版に新しい機能を入れたから使って!」という流れが増えています。

「ベータ版は商用利用不可」が基本ですが、仕事で使ってみないことには、きちんとしたテストはできないんですよね…

アプリのベータ版と、機能のベータ版も紛らわしいですね…


4 | 新機能をすぐに取り込みたがる文化

開発チームの立場から見れば、「新しい機能をいち早く実装したい」という意欲は理解できます。ですが、それは本来ベータ版の段階で検証すべきことであり、正式版で実験的な機能を投入すれば、ユーザーに混乱を招きかねません。

特にIllustratorのように業務ツールとして使われるソフトでは、安定性こそが最重要。“新しさ”よりも“堅実さ”を優先してほしいという声が、ユーザー側から強まっています。

その一方、ここ数年のIllustratorの細やかなアップデートは、これまでにない動きとして高く評価しています。ただし、もう少しじっくり。熟成させてから製品版に取り込んで欲しいんです…

消した機能はどうなった!!!???

2025年2月リリースの Illustrator 2025(29.3)でRetypeが正式版になったタイミングで[テキストを編集]機能が削除されてしまい、その後、戻っていません。

2024年4月リリースのIllustrator 2024(28.5)で〈このフォルダー内の見つからないリンクを検索〉という神機能がつきました。

ところが、2025年1月リリースのIllustrator 2025(29.2.1)で消えてしまいました。

改良版を改めて…とのことですが、できた時点で差し替えればいいだけ。ワークフローとして定着したものを消されてしまうのは非常に困ります。

開発チームの方は、私たちがIllustratorを仕事で使っているということを理解していない様子…


5 | 不必要なMAXリリース

Illustratorのメジャーアップデートは、毎年秋に開催されるAdobe MAXに合わせて行われます。本来は新機能の発表や技術共有の場ですが、現在では営業的なイベントの節目として利用されており、そのタイミングに合わせて無理なアップデートが押し込まれることが少なくありません。

結果として、「新機能は増えたが安定性が落ちた」という構図が毎年繰り返されています。IllustratorもmacOSも、年1回のメジャーアップデートは本来不要です。ユーザーにとっては安定した環境で作業できることのほうが、はるかに価値があります。

公式アカウントで「大幅なアップデート直後は、作業に思わぬ支障が出る場合があります」って言ってしまっています。笑えない。

ひとりのユーザーとしては、MAXのお祭り感は楽しくてダイスキ!
でも、現場が求めているのはアプリの安定性なんです。


6 | 具体的な不具合

ものかのさんがまとめてくださっています。

https://helpx.adobe.com/jp/illustrator/kb/fixed-issues-jp-2025-29-8-2.html


7 | 自衛策

最低限、ユーザーがしておくべき自衛策を把握しておきましょう。

インストール

  • [自動更新]をOFFにする

  • [以前のバージョンを削除]をOFFにする
    (OFFにしてもいつの間にかONになるので、慎重に行う)

Illustratorの設定

  • バックグラウンド書き出し/保存機能をOFFにする

  • [リアルタイムの描画と編集]もOFFに

IllustratorとInDesignは、可能な限り、古いバージョンは残しておきましょう。


まとめ:歴史あるアプリの宿命と、これから

Illustratorが抱える課題は、「古い土台の上に新しい建物を積み上げ続けてきた結果」と言えます。建て増しの限界に近づく中で、アーキテクチャの抜本的な見直しが求められているのかもしれません。

長年のユーザーとしては、
「もう一度、安定性を最優先にしたIllustratorを見たい」
──そう願わずにはいられません。

アドビの人も開発者も同じ人間ですので、強く言葉で非難することは避けたいですね。

いにしえの奇数バージョンののろい

Illustratorの歴史を紐解くと、奇数バージョンで公開ベータテストを行い、次の偶数バージョンで安定、というサイクルを繰り返していました。

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そう考えると、「公開バージョンをベータ版のように扱う」のは伝統でした…(悲)

Illustrator iPad版、ブラウザー版

同じアドビでも、(開発が止まってしまった)XDは驚くほど軽快です。

Illustratorもあるタイミングで過去の互換性を犠牲し、新しく作り直す必要がありました。その流れで出てきたiPad版やブラウザー版が進化していくことも要期待です。

iPad版のIllustratorは残念ながら、現在、開発が止まっているように見えます。

さいごに:電子レンジとIllustrator

電子レンジに食品を入れて「600Wで15秒」で設定したら、そのとおり実行されるのが家電です。
でも、Illustratorに限らず、アプリって家電のようには実行されないものなんですよね〜

って笑ってられたらいいのですが、ちゃんと「600Wで15秒」で実行されないと困るんです… 
なぜなら、仕事の道具だから!ってことをアドビの人(というか、インドの開発チーム)に、もう少しだけ理解してほしいです。

そしてそして、憎むほどに愛してるんです!とまとめます。


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Illustratorが「こんなこと」になっている理由と背景|鷹野 雅弘
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