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民謡・民俗芸能番組

 各地で歌い継がれる民謡や古くから伝わる民俗芸能は、放送メディアの誕生によって初めて日本全国に広く知られるようになる。

 放送によって民謡が普及していく足がかりは、戦後まもない1946年に始まった『のど自慢素人音楽会』(翌1947年に『のど自慢素人演芸会』に改題)と、その後継番組『NHKのど自慢』だった。

 日本各地の歌好きたちが全国大会をめざしてふるさとの民謡を競い、その結果、放送を通じて郷土の民謡を全国に広めた。この番組で三味線の藤本秀夫(のちの琇丈)が伴奏を工夫して民謡を歌いやすくしたこともあり、各地で「民謡歌手」が生まれる素地が整っていった。

 ラジオでは地元の民謡名人やプロの民謡歌手が出演する『民謡をたずねて』が1952年に誕生し、人気番組として定着していった。テレビでは、放送開始から不定期に『民謡風土記』が放送され、はじめての定時番組として『民謡お国めぐり』(1955~1956年度)が登場する。この番組は、音楽の娯楽性を重視し、「お座敷唄」を歌う小唄勝太郎・市丸・赤坂小梅などのいわゆる芸者歌手が登場した。

民謡お国めぐり
民謡お国めぐり
民謡風土記
民謡風土記

 1956年8月には、全国に点在する民謡と民俗芸能の保存・育成を図るために、「NHK全国民謡舞踊まつり」が東京日比谷公園大音楽堂で開催された。この模様はテレビとラジオで特集番組として放送され、1965年度まで続いた。

 この頃、高度経済成長の波に乗って大勢の若者たちが地方の農漁村から都会に流入した。地方の若者の欲求に呼応するように東京・浅草を中心として民謡酒場が隆盛をきわめ、地方出身の民謡歌手も、続々と上京。テレビは地域色を出すため、地方の民謡保存会や民謡歌手を番組に登場させた。

 1961年、総合テレビのお昼の時間帯に『ふるさとのうた』が新設され、全国各地の風土や生活を伝える映像にのせて、民謡や民俗芸能を広く紹介した。民謡をオーケストラや合唱に編曲する新しい取り組みは、特に地方出身の視聴者の支持を得た。

NHK全国民謡舞踊まつり
NHK全国民謡舞踊まつり
ふるさとのうた 〈1961~1963〉
ふるさとのうた 〈1961~1963〉

 1960年代半ばには、民謡は興行的にも会場を満員にするほど人気が出て、民謡歌手は民謡酒場からステージへと活躍の場を広げていった。総合テレビ午後9時台に放送した『芸能百選』も、当初は歌舞伎や能・狂言、舞踊が中心だったが、この人気に後押しされて、民謡や民俗芸能へと幅を広げて放送するようになった。

 こうした動きの中で始まったのが『ふるさとの歌まつり』(1966~1973年度)である。古くから日本各地に伝わる民俗芸能や年中行事を、地元出演者の参加で紹介する視聴者参加の公開派遣番組だ。『NHKのど自慢』で全国に顔を知られた宮田輝アナウンサーが司会を担当。放送開始2年目の1967年11月の調査で、すでに視聴率40%を超える人気番組になっていた。放送が続いた8年間に400か所の“ふるさと”を訪ね、視聴者にも番組参加者にもふるさとを意識するきっかけとなり、忘れ去られようとしていたふるさとの民謡・芸能の再発見や、地域の振興に寄与した。全国をまわり、視聴者と直接ふれあう公開派遣バラエティーというスタイルは、その後、『お国自慢にしひがし』(1974~1977年度)、『民謡をあなたに』(1981~1989年度 *1978年度に『夜の指定席』枠でスタート)などに引き継がれていく。

  • ふるさとの歌まつり
    ふるさとの歌まつり
  • お国自慢にしひがし
    お国自慢にしひがし
  • 民謡をあなたに
    民謡をあなたに

 NHKではさらに民謡の継承と普及を目指し、若いファンの獲得に力を入れた。1964年4月、その名もずばり『若い民謡』(1964~1966年度)とタイトルした番組が、土曜の午後8時台に総合テレビで始まる。三味線、尺八などの邦楽器の伴奏で歌われていたそれまでの民謡を、オーケストラによるモダンなアレンジで、歌謡曲、ジャズ、ポピュラーミュージックなど、幅広いジャンルの人気歌手たちが歌った。

 総合テレビの昼の時間帯に放送された『ひるの民謡』(1967~1969年度)や、『ひるのプレゼント』(1970~1990年度)でも、民謡歌手や歌謡曲の人気歌手が民謡を歌った。オーケストラやビッグバンドの演奏で、歌謡曲・ジャズ・ポップスの人気歌手が民謡を歌うことで、民謡はさらに視聴者の身近なものになっていった。

  • 若い民謡
    若い民謡
  • ひるの民謡
    ひるの民謡
  • ひるのプレゼント
    ひるのプレゼント

 若い層への民謡の浸透を図った取り組みは、1978年にスタートした総合テレビ午後11時放送の『夜の指定席~民謡をあなたに』で花開く。この番組は、民謡教室の増加とこれまでの様式にとらわれない民謡ステージが数多く開催されるという世の中の流れをいち早くとらえていた。レギュラー出演の2人の民謡歌手、原田直之と金沢明子が、それまでの“民謡は和服”のイメージを打ち破るジーンズ姿で歌い、相川浩アナウンサーの親しみやすい語り口にのせて民謡に新しい風を吹き込んだ。それをきっかけに起こったのが“民謡ブーム”である。

 翌1979年には、月1回放送の70分の大型番組『民謡とともに』(1979年度)が、土曜午後8時台のゴールデンタイムに編成された。1981年には、『夜の指定席』枠で放送されていた『民謡をあなたに』が、総合テレビ午後8時から月1回放送の定時番組として独立、1989年度まで続く人気の公開派遣番組となった。

 その後も民謡の公開派遣番組は1990年8月から『ふるさと民謡広場』(1990~1993年度)が土曜と日曜に不定時に放送。1994年1月に峰竜太と香西かおりの司会で『どんとこい民謡』(1994~2002年度)が、続いて伍代夏子の司会で『それいけ!民謡うた祭り』(2003~2012年度)、2013年に城島茂の司会で『民謡魂 ふるさとの唄』が始まり、全国各地の民謡の紹介とともに、その土地の風土や伝統文化を伝えている。

  • 夜の指定席~民謡をあなたに
    夜の指定席~民謡をあなたに
  • 民謡とともに
    民謡とともに
  • ふるさと民謡広場
    ふるさと民謡広場
  • どんとこい民謡
    どんとこい民謡
  • それいけ!民謡うた祭り
    それいけ!民謡うた祭り
  • 民謡魂 ふるさとの唄
    民謡魂 ふるさとの唄

 その他、イベントと連動した特集番組として、アジア各国の民俗芸能を紹介する『アジア民俗芸能祭』(1968~1992年度に断続的に放送)、NHKホールで三橋美智也・村田英雄・春日八郎らのスター歌手が出演する『日本民謡の祭典』(1975~1980年度)、『日本民謡まつり』(1977~1989年度)、『郷土芸能の祭典』(1977~1978年度)などを放送してきた。

 1995年にはNHK 放送開始70周年記念事業の1つ「記録事業・民間伝承と日本の心」の関連番組で『ふるさとの伝承』(1995〜1998年度)を放送。全国各放送局が各地に残る祭り、民俗芸能、年中行事、民間伝承などを克明に取材、記録した貴重な庶民文化史の集大成となった。また、放送番組ではないが、戦前から約半世紀にわたってNHKが全国各地の民謡を民謡研究者の町田嘉章らとともに収集してまとめた「日本民謡大観」は、未来に向けて日本の民謡を保存し継承する事業となった。

日本民謡の祭典のサムネイル画像
第1回 日本民謡の祭典

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