BLUE ARCHIVE -SONG OF CORAL-   作:Soburero

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ヴェアアァァァ!!!投降遅れたァァァァ!!!
色々ゴタゴタしてたのが落ち着いたのでまた書いていきます!


7.覆面水着団、アッセンブル!

ブラックマーケット。金さえあれば何でも買える場所。

 何故アビドスと先生、そして俺がここに居るのか。

 時刻は昨日、風紀委員会を撃退した後まで遡る。

 

 ヘルメット団が運用していた兵器の型番をアヤネが調べたところ、既にキヴォトスでは生産が中止されている物だったのだ。

 これだけなら、何処かで中古の兵器を引っ張ってきたと考えるのが普通だろう。

 問題は、その兵器はブラックマーケットでよく見られる改造が施されていたというのだ。

 そこから、エアが兵器を販売していそうな店舗に目星を付け、目録を探ることでカイザーの違法な活動の証拠を掴もう、という事になったのだ。

 それじゃあ早速現地調査、という事で、全員でブラックマーケットに足を運んだのだが……。

 

 「あうぅぅ……。何でこんな事に……。」

 

 「まあまあ落ち着けって、何も取って食おうって訳じゃねぇんだよ。」

 

 「アタシらのビジネスをちょーっと手伝ってくれりゃぁ良いんだからさぁ。」

 

 1人の生徒が、チンピラ2人にカツアゲされていた。

 これが、ブラックマーケットの日常風景。

 見つけ次第殴り飛ばしているが、減る様子は一向にない。

 

 ”……あれ、マズいよね。助けないと。”

 

 「あいつら……っ。あれ、レイヴン?」

 

 あのチンピラたちの顔には見覚えがある。

 話を付けられるかもしれない。

 チンピラたちの後ろから近づき、肩を掴む。

 

 「何をしている。」

 

 「アァン?何だテメ――げぇ!?」

 

 「いぃ!?レ、レイヴン!……さんッ!」

 

 「お前たちにさん付けされるほど落ちぶれてない。」

 「それで、何をしている?」

 

 チンピラたちも俺の顔に見覚えがあったようだ。

 すぐに生徒から離れ、弁解を始めた。

 

 「い、いやぁ、ちょっと、ちょーっとお話ししてただけっスよォ……!な、なあっ!?」

 

 「そ、そうっスよ!アタシら、やましい事なんて何にも……!」

 

 「失せろ。そいつと話がある。」

 

 「えっ!?いや、でもぉ……!」

 

 何を怯えているのやら、そうして弁解を続けるほど自分の首を絞めることになるというのに。

 胸倉を掴み、少し強めに睨みつけながら言葉を続ける。

 

 「とっとと失せろ。こいつは俺の獲物だ。」

 

 「「スイマセンッしたァー!!!」」

 

 手を放すとチンピラたちは一目散に逃げだした。

 バカな奴らだ。金が欲しいなら脅す相手を選ぶべきだ。

 一息ついてからカツアゲされていた生徒に目を向けると、完全に怯え切っていた。

 さっき放った覇気にあてられてしまったらしい。

 

 「あ、あうあうあう……!」

 

 「……大丈夫か?ケガは?」

 

 「へ……?あっ!だ、大丈夫ですっ!ありがとうございます!」

 

 軽く声を掛けただけで、すぐに正気に戻った。

 案外肝が据わっているのかもしれない。

 いや、そうでなければ、こんなところには来ないか。

 

 ”無事で何よりだよ。その子はちょっと怖いけど、優しい子だから、安心して。”

 

 「うんうん、先生の言う通り、とっても優しい子なんだよ。でも、怒るとすっごく怖いから、気を付けてねー。」

 

 「ホシノ先輩、わざわざ怖がらせなくても……。」

 

 「あ、あはは……。」

 

 アビドスと先生も合流し、俺をフォローしていく。

 フォローになっていないような気もするが、あえて無視する。

 が、ここでアヤネが生徒の制服を見て、何かに気づいた。

 

 「あれ、その制服……?あなたもしかして、トリニティの!」

 

 トリニティ総合学園。

 確か、キヴォトス三大校の一角。

 金持ちが集まる悪趣味な学校だと聞いている。

 なるほど、奴らも獲物は選んでいたらしい。

 

 「実はそうなんです。どうしても、手に入れたかった物がありまして。」

 

 彼女はそういうと、背負っていたリュックをあさり始める。

 程なくして、彼女から差し出されたのは、白い――。

 

 

―――― ACS LOAD LIMIT ――――

 

??????????

 

 「あっ、それ!モモフレンズのペロロちゃんですね!私はミスター・ニコライが好きなんです。」

 

 「分かります!ニコライさんも哲学的なところがかっこいいんですよね!」

 

 「……??ぺろ?ん???」

 

 何だ??

 俺は今何を見た??

 脳が理解を拒んでいる。

 理解できぬ。

 

 「これ実は、100体しかない限定コラボ品なんです!ここで見つけられて本当に良かったです!えっと、他にも――。」

 

 「あー、そこまでにしてあげて。レイヴンちゃんが固まっちゃってるから。」

 

 「こいつが固まってる所なんて初めて見た……。」

 

 「あっ、ごめんなさい!私、つい……。」

 

 ”レイヴーン、帰っておいでー。”

 

 「……むっ?あ、ああ、すまない。」

 

 先生に背中を軽く叩かれて、ようやく思考が復帰する。

 思考がスタッガーを起こしたのは初めてだ。

 ペロロという白い丸々としたナニカ、鳥がモチーフのようだが、一目見ただけでは鳥と分からないデザインをしていたのだ。

 あれを可愛いという神経が理解できない。

 

 (愛嬌のあるキャラクターでしたね。あとで探してみませんか?)

 

 (勘弁してくれ……。)

 

 やめてくれエア、その発言は俺に効く。

 

 「あれ?誰かこっちに来てませんか?」

 

 「……確かに来てる。さっきの奴らの仲間かも。」

 

 シロコとアヤネが見ている方向に目を向けると、チンピラ集団がこちらに向かってくる。

 どうやら先ほどのチンピラたちが仲間を連れて戻ってきたようだ。

 そのチンピラが必死になって周りを止めようとしている。

 

 「おうおうおう!アタシのダチが世話になったらしいじゃねえか、レイヴンさんよォ。」

 

 「ちょっとボス、ホントにマズいですって……!」

 

 「ウッセェ!やられたまんま引き下がれっかよ!」

 「で?どう落とし前付けてくれんだ?アァ!?」

 

 リーダーらしき生徒と至近距離でにらみ合う。

 相手の数は約20、だが周りが狭く、機動力が生かしづらい。

 面倒だ、ここは丁重にお帰り願おうか。

 

 「こう付けてやる。」

 

パァン!

 

 「――ッ!?ア……ッ!〜〜〜ッ!!」

 

 鉄板仕込みのコンバットブーツでまたぐらを勢いよく蹴り上げる。

 快音から僅かに間を開けて、奴は股間を抑えながら膝からゆっくりと崩れ落ち、地面に頭を擦り付けていった。

 男女関係なく、“コレ”は効くらしい。

 

”……うわぁ……。”

 

 「……ひぇ~……。」

 

 「……あれは、痛い……。」

 

 「――ッ!?テメェ、何し――。」

 

 「俺の仕事を増やすな、殺すぞ。」

 

バッ!

 

 「……全員、逃げたみたいです……。」

 

 だらしのない奴らだ、少し睨みつけただけで逃げ出すとは。

 まあ、そのつもりでやったんだがな。

 

 「……まあ、怒ると怖いって言われた理由が分かったでしょ?」

 

 「は、はい……。あはは……。」

 「って、このままじゃマズいです!」

 

 「マズいって、何がですか?」

 

 「マーケットガードです!これ以上ここに居たら目を付けられちゃいます!」

 

 長距離スキャンを実行してレーダーを確認すると、複数の反応がこちらに向かってきている。

 さっきの騒動が余計な目を引き付けてしまったらしい。

 これ以上の長居は無用だ。

 

 「確かにな、そろそろ移動した方が良い。」

 

 「うーん、これは一緒に来てもらった方が良いかな?」

 

 「うんうん、そうしましょう!」

 

 「本気ですか!?もしトリニティに知られたら大変な事になりますよ!?」

 

 「バレなきゃ平気だってー。それじゃ、名前は?」

 

 「えっと、阿慈谷ヒフミって言います。」

 

 「よーし、ヒフミちゃん。おじさん達と一緒にいこっか―。」

 

 「は、はい!よろしくお願いします!」

 

 こうして、トリニティの阿慈谷ヒフミが合流、アビドスと共に探し物をすることとなった。

 ちなみに、ヒフミがブラックマーケットの事情に詳しいのは、グッズを手に入れるためによくここに入り浸っているからだそうだ。

 あんな物のために通い詰めるとは、物好きもいるものだ。

 アハハ、ペロロサマサイコウトイッテクダサイ。

 こいつ直接脳内に……!?

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 捜索開始から数時間、エアが目星を付けたいくつかの店から目録を回収することが出来た。

 もちろん、相手もタダで渡す気は無かったから、丁寧に“お話し”して、目録のコピーを渡してもらった。

 だが、目的の兵器の型番の記録はあれど、目録にカイザーの名前は無く、直接的な証拠としては使えないものだった。

 結果だけ見るのなら、数時間歩きっぱなしの調査は空振りに終わり、得たのは疲労だけ、というわけだ。

 

 「結局、あんまり収穫が無かったですね……。」

 

 「まあ、こんなものだろう。奴らもバカじゃないからな。」

 

 「それでも、ちょっとおかしいですよ。いくらカイザーでも、ここまで綺麗に証拠を残さないなんてできるんでしょうか?」

 

 ヒフミの指摘は尤もだ。

 だが、カイザーコーポレーションがキヴォトス有数のメガコーポであるという事を忘れてはならない。

 莫大な資金力があれば、取れる選択肢は大きく広がる。

 

 「不可能じゃない。使い捨ての奴らを雇いこめば済む話だ。」

 「基本的に、雇われた奴らは雇い主を明かさない。そうでなければ、雇われを使うメリットは薄くなる。」

 「無関係と思える奴らを辿っていけば、最終的にはカイザーに行きつくだろう。」

 

 『レイヴンの仮説は当たっていると思います。目録の人物を調べてみましたが、どうやらフリーランスの運び屋のようなのです。』

 『数か月前から、依頼主不明の長期依頼を受けています。おそらくはこの依頼主がカイザーでしょう。』

 

 やはりか、次はその運び屋を当たってみるのが良さそうだ。

 問題は、調査に用いる時間とリソースが足りない、という事なのだが。

 このままではいたちごっこだ、何か大きな一手を打っておきたいところだ。

 

 ”……前から思ってたけど、レイヴンとエア、この手の話に詳しいよね。”

 

 『経験則、というものです。“外”に居た時も、似たような仕事をしていましたから。』

 

 エアの言う通り、俺はフリーの傭兵だった。

 キヴォトスでの仕事とは異なり、幾分か血生臭い仕事ではあったが、命を懸ける分、報酬も莫大だった。

 その報酬も、大体は整備代とパーツ代に消えていったが。

 

 「あの、レイヴンさんとエアさんって、何者なんですか……?」

 

 「……実は、私たちもよく分かってない。」

 

 「そうなんです。“外”から来たって事と、とにかく強いって事しか分からなくて……。」

 

 「いやー、拾ってきた時は空き家の隅でプルプル震えてたのにねぇ。立派に育ってくれて、ママ嬉しいでちゅ。」

 

 「うんうん、今は私達、アビドスの一員なんです。ちゃんと懐いてくれて良かったです☆」

 

 「また犬猫みたいに……。怒られても知らないわよ……。」

 

 ノノミとホシノめ、また好き勝手に言いおって。

 扱いが捨て犬のそれじゃないか。

 状況は間違っていないのが余計に腹が立つ。

 

 「えっと、レイヴンさん。それって本当なんですか……?」

 

 「……恩はある、とだけ言っておく……。」

 

 「あ、あはは……。」

 

 「それにしても、随分歩いてきましたね。このあたりで――。」

 

 キュウゥゥ

 

 突如響く腹の虫の鳴き声。

 音の出どころを探した視線が、一斉にレイヴンに向けられた。

 

 「……すまない、俺だ。」

 

 実は数時間歩きっぱなしで、ずっと腹が減っていたのだ。

 この体、まともに動けるのは助かるが、この体質が困りもの。

 少し動くとすぐに腹が減って仕方がない。

 そんな俺を見かねてか、アヤネが屋台を指さした。

 

 「……たい焼きでも食べながら休憩しましょうか。」

 

 「さんせーい!うへへ、たい焼きだぁ。」

 

 「それじゃあ、ここは私が払いますね。」

 

 ”大丈夫だよノノミ、ここは私が払うから。”

 

 「良いんですか!それじゃあ、ご馳走になります!」

 

 大人の矜持、という事だろうか。

 カードを取り出そうとしたノノミを制して、先生が財布を取り出した。

 その厚意はありがたいが、今回は遠慮させてもらおう。

 俺の体質が問題になる。

 

 「シャーレ、俺はいい。自分で払う。」

 

 ”遠慮しなくてもいいよ。レイヴンはいつも頑張ってるでしょ。”

 

 「気にしなくていい。それに、俺には事情がある。」

 

 ”だとしても、だよ。こういう時ぐらい、甘えてほしいな。”

 

 俺の事情を知ってか知らずか、先生は引き下がる気はないようだ。

 そこで言うなら、思う存分甘えさせてもらおうか。

 

 「……店主、たい焼きを全種類、5個ずつくれ。」

 

 ”え゛っ。”

 

 「全種類!?お嬢ちゃんよく食うなぁ!今焼くからちょっと待ってな!」

 

 「……これでも払うというのか、シャーレ?」

 

 金額にして数千クレジット、1人に払うには手痛い出費だろう。

 これで諦めるかと思っていたのだが、この大人は、俺が考える以上に頑固だったようだ。

 

 ”……払い、ます……!大人に二言は無いから……っ!”

 

 「……好きにしろ。」

 

 先生が代金を払った後、店主が持ってきたのは、たい焼き一杯の紙袋が2つ。

 1つはアビドスとヒフミ、先生の分、もう1つは俺の分だ。

 屋台の前に並べられていたベンチに座り、たい焼きにかじりつく。

 

 「そ、そんなに食べるんですか……?」

 

 「そうだ。これだけ食べないともたなくてな。」

 

 「燃費悪すぎない?よく太らないわね。」

 

 「でも、あれだけ動き回って戦ってるなら納得。よく食べて、よく動く。運動の基本。」

 

 「その体質、ちょっと羨ましいですね。私もダイエットしようかな……?」

 

 「もーダメだよアヤネちゃん。アヤネちゃんは今が一番可愛いんだから。」

 

 「うふふっ。たくさん食べて、もっと大きくなってくださいね、レイヴンちゃん☆」

 

 「ノノミ先輩!これ以上レイヴンが大きくなったら、ドアがまともに通れなくなっちゃうじゃない!そうなったらレイヴンが困るでしょ!」

 

 セリカの言う通り、これ以上大きくなっても俺が困る。

 ACのコックピットに体が収まらなくなるのは避けたい。

 これ以上成長してほしくないものだ。

 

 「あ、あはは……。って、あれ……?」

 

 「……?どうしましたか、ヒフミさん?」

 

 「あのトラック、カイザーローンですよね。何でヘルメット団が近くに居るんでしょうか?」

 

 ヒフミが指を指した方向を見ると、ビルの傍に1台のトラック。

 荷台の横には、カイザーのシンボルである冠を被ったタコが描かれている。

 開かれた荷台の後ろで、ロボットのドライバーと光輪を浮かべたヘルメットが話し込んでいるようだ。

 

 「……あのトラック、私達に集金に来たトラックと同じじゃないですか?」

 

 「……おっ、さすがアヤネちゃん。うちに来たのとナンバーが一緒だよ。」

 

 「えっ?えっと、一体どういう事なんですか?もしかして、皆さんはカイザーローンにお金を借りてるんですか?」

 

 「……私達にも事情があるんです。話すと長くなっちゃうんですけどね。」

 

 ”……何か話してるみたいだね。”

 

 「……サインしてる。契約書かな?」

 

 「……えっ!?」

 

 「トラックからお金を、直接渡したぁ!?」

 

 ドライバーが荷台から袋を取り出すと、中に札束をいくつか詰めて、ヘルメットに渡している。

 これは、カイザーがヘルメット団と繋がっているという、決定的な状況証拠だった。

 

 「……私たちが稼いだお金を、直接ヘルメット団に……?」

 

 「ハアァァァ!?何よそれっ!せっかくのバイトの給料があいつらに行ってたってわけ!?」

 

 『……意外と大胆な手口ですね。』

 

 「……大胆というか、杜撰というか……。」

 

 いくらブラックマーケットは犯罪が横行しているからって、大胆に過ぎないか?

 カイザーよ、もう少し隠す努力をしたらどうだ。

 

 「……運転手、そのまま銀行に入っていきました。」

 

 「書類も一緒に持っていきましたね。あの書類、証拠にならないでしょうか?」

 

 ”そうだね、あの書類があれば、カイザーに揺さぶりをかけられるよ。でも、どうやって確保しようか……。”

 

 あの書類はこれから銀行で保管される。

 その書類がデジタル化されるとしても、内部ネットワークは外部からは遮断されているだろう。

 エアがハッキングしてデータを確保するにしても、物理的に書類を確保するにしても、銀行内部に潜り込むしかない。

 いずれにせよ、この仕事は厳しいものになるだろう。

 俺たちの誰かが銀行強盗でも計画していれば、話は別なのだが。

 

 「……こうなったら、例の方法しかない。」

 

 「お?シロコちゃん、もしかしてやっちゃう?」

 

 「確かに、あの方法なら!」

 

 「ちょっと待って、もしかして、あれ!?」

 

 「シ、シロコ先輩、さすがに冗談ですよね……?」

 

 「……まさか。」

 

 『なるほど、あの方法ですか。』

 

 「あ、あのう……、あの方法って一体何ですか?」

 

 シロコは抱えていたカバンから小さな布切れを取り出した。

 そしてそれを被ると、こちらに向かって振り返る。

 その額には、“2”の数字が大きく張り付けられていた。

 

 「銀行を襲う。」

 

 「普段なら止めるんだけど、今回は仕方ないよね。」

 

 「はい!銀行をやっつけちゃいましょう!」

 

 「……そうよね、こうなったらとことんまでやってやるわ!」

 

 シロコのカバンから色とりどりの覆面が取り出され、アビドスの面々はそれをためらいなく被っていく。

 みんなシロコのそれと同じように、額に番号が張り付けられている。

 何故シロコが覆面を持ち歩いていたのかは聞かないでおく。

 

 「ええぇ!?あ、あの、本当にやる気なんですか!?あ、アヤネさん……!」

 

 「……ごめんなさいヒフミさん。こうなったらみんな話を聞かないので……。」

 

 「あうぅ……!せ、先生……。」

 

 ”……それしか方法は無い。やっちゃおう!”

 

 「ええぇぇぇ!!先生まで!?みんなを止めてくださいよぉ!」

 

 もう誰もアビドスを止める者はいない。

 ヒフミが不憫に思えるが、実際襲撃してしまうのが一番早いのだ。

 俺としても反対する理由は無い。

 

 「ヒフミ、あなたも一緒。」

 

 「はい、間に合わせですけど、これどうぞ。」

 

 ノノミがそう言って差し出したのは、目の部分に穴がくりぬかれた紙袋。

 つい先ほどまでたい焼きが入っていたそれだ。

 ご丁寧に、額には油性ペンによって“5”の番号が割り振られていた。

 

 「えぇえぇぇ!?ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 「大丈夫、シロコちゃんの計画があるから行けるって。」

 

 「やけに細かかったからね、あれ……。」

 

 「あ、あの、そういう事じゃ……!」

 

 「……もしバレたら、トリニティのせいって事にしちゃいましょう。」

 

 「あうぅ……!も、もうティーパーティーの皆さんに合わせる顔がありません……!」

 

 そう言うと、ヒフミは渋々といった様子で紙袋を被った。

 開けられた穴からはヒフミの目がしっかり見えている。

 

 「ん、レイヴンの覆面、どうしよう……。」

 

 「……いや、俺は不要だ、エア。」

 

 『私たちは陽動として動きます。この近くにマーケットガードの待機所があります。』

 『そこをレイヴンが襲撃することで、この仕事から、彼らの目を逸らせるはずです。』

 

 「炎はより大きな炎に紛れるものだ。それに、奴らの数を減らしておけば、離脱もスムーズになるだろう。」

 

 これから襲う銀行の警備は、マーケットガードが担当しているはずだ。

 そいつらの戦力をそぎ落とせば、アビドスの仕事もやりやすくなる。

 何より、たった1人の傭兵にマーケットガードがしてやられたとなれば、“独立傭兵レイヴン”の名前も大きく売れるだろう。

 俺が強盗に参加するより効果的だ。

 

 「それ、“木を隠すなら森の中”って言わない?」

 

 「その森を今から作ろうとしてるんですけどね……。」

 

 「む、無茶ですよ!マーケットガードはレイヴンさんが思ってる100倍は強いんですよ!?」

 

 「なら20倍の技量で上回ればいい。単純だ。」

 

 「あ、あううぅ……!」

 

 「ヒフミさん、もうこうなったらやるしかないわよ。」

 

 「ん、一蓮托生。」

 

 『そちらの行動に合わせて仕掛けます。回線は繋いでおいてください。』

 

 「よし、早く行こう。先生、例のセリフ、お願い。」

 

 ”覆面水着団、出動!”




『オオサワ!どうやらうちの幹部にも、算数の授業が必要だったようだな!』
『なんの!足し算で勝てばいい!』
このセリフ最高にベイラムしててほんとすき。

次回
ブラックマーケット・ダウン
ホンっと戦場は地獄だぜぇぇ!!

次回も気長にお待ちくださいませ……
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