なぜ不登校になったのか
前兆
私は昔から口数が少なく、集団行動が苦手だった。
保育園の時は、クラスみんなが積み木遊びをしている中、勝手に仲の良い子を連れて2人で遊具で遊んだ。その仲の良い子以外と遊んだり、話したりした記憶はほとんどない。
小学校低学年の頃は、口数が少ない私のことを「優しい(裏を返せば何をしても言い返さない都合のいい子)」と言ってたくさんの子が仲良くしてくれた。しかし、これがいけなかった。この出来事から、「何も言わない(優しい)=みんなが仲良くしてくれる」と勘違いするようになった。
高学年になると、何も話さない私を気味悪がるようになり距離を置かれるようになった。しかし、私は何も言わなければ仲良くしてくれると思ってたので自分が悪いとは思わず、自分を変えようとはしなかった。
中学に入り、今まで通りの人間関係の築き方をしたら見事に距離を置かれた。グループワークなど、嫌なことを押し付けられても私は何も言わなかった。それが正しいと思っていたから。「なぜクラスの中だけ私だけ誰も話しかけてくれないのか」この疑問が私の中にいつもあった。クラスメイトと上手くコミュニケーションを取れない私は更に孤立していく。
コミュ力の乏しい私は相手の考えていることを聞くために話しかけることなんて出来なかったため、表情や仕草でしか相手を知ることが出来ない。よって、「なぜ私だけ話しかけてくれないのか」についての被害妄想は肥大化していくばかりだった。
自分の感情を言葉にできない
私は高一までありえないくらいの八方美人だった。
「この漫画好き?」「この食べ物好き?」
など好き嫌いを問われたら、まずは相手の意見を聞いて、その次には必ず相手の意見に同意する。人と接する時は自分の意見を押し殺してきた。相手の機嫌が全て。自分のことなんてどうでもいいのだ。笑う時も、必ず相手が笑い出してから。相手が面白いと感じていないのに自分が勝手に笑ったら相手に申し訳ないと思っていたから。
そんなこんなで生きてきたから自分の意見を意見を発する方法が分からない。でも、自分の中の意見は確かにある。
次第に私の中で何かが爆発寸前になる。しかし、「自分の意見を言うと嫌われる」と思い込んでいた私は誰にも相談できなかった。
爆発
私は、中一の冬に不登校になった。
いつも通り通学カバンを背負って家を出ようとしたのに何故か足が動かなかった。
親が部屋に来て、「なぜ学校に行かないのか」
「もしかして、ズル休み?」などと私に冷たい目を向ける。私は黙り込んだ。
1週間くらい休んだ頃、先生が気にかけてくれて家庭訪問に来た。1時間ほど話して「明日は必ず来ること」を約束した。
1週間も休んでズル休みだとみんなに疑われるのだろうかと不安だったが約束したからと、私は翌日登校した。
私のクラスはいい人ばかりだった。私が教室に足を踏み入れると「待ってたよー」「久しぶり!」などと歓迎してくれた。
しかし、私の心の中はモヤモヤとしていた。
「なんで私なんかに優しくするんだろう」
そんな疑問でいっぱいだった。
登校した日に、体育で野球の授業があった。
運動神経の悪い私はチームの足を引っ張ってばかりだった。バットにボールを当てることが出来ないし、足が遅くてベースに触れられない。朝は歓迎してくれたクラスメイトも、私による失点が重なると表情が曇っていく。小言を吐いている子もいた。
そんな冷ややかな雰囲気の中、1人の男の子が口を開いた。
「今日のMVPはめだか(私)さんです」
彼の目はスナイパーのように私の瞳を貫く。そして、目尻を垂らして口角をひきつらせて笑みを作った。子供の無邪気な笑みでは無いと、すぐに分かった。すると、他のチームメイトが「めだかちゃん最高だったよ!」「今日1番活躍してくれたもんね!」と彼に合わせて場をあたためようと何とか笑い、励ましてくれた。
しかし、当時の私にとってそれは逆効果だった。チームメイトが言葉を吐く度に私の心の堤防にヒビが入っていく。
私がいる前では、みんな芝居を始める。私がそこにいなければ、みんな”普通”に笑って”普通”に怒る。私が来た途端、みんなお化粧をして私だけが知らないストーリーが始まる。この時の感覚は、小さい頃プールで溺れた時に似ている。自分は苦しくて、息が出来なくて、必死に水上に顔を出そうとプールの床をつま先でジャンプしてもがいているのに、まわりは誰も気づいてくれない。どうして、私はこんなにも苦しんでいるのに。
不安という名の海に、私は溺れてしまったのだ。
「私になぜ気を遣うのか」「どうして普通に接してくれないのか」「そんなのならもう放っておいてよ」
抗えない大波に私の心の堤防は決壊してしまった。その海水と外の世界の冷たい外気により、私の心は凍てついてゆく。冷たい言葉と、大量の不安の海水で、心は氷のように固まってしまった。痛い、痛い。辛い辛い辛い辛い。
凍ってしまった心を溶かしたいがために私は不登校になったのだろう。


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