気質64類型における「心」
気質64類型において「人の心とは」という問いに対しどのような立場をとるのかについて考えをまとめてみる。
類型論は心の状態の解明ではない
心は言葉で形作られる
「考える」「思う」「感じる」「嬉しい」「悲しい」「楽しい」等の心の状態は、言語習得によって身に着いた第二の本性であるとする。
ある身体反応に対し、それを「嬉しい」と表現し、「嬉しい」を基にした言語ゲーム(言語活動)が開かれる。
その言語活動は「Aは嬉しいと感じている」「Aは嬉しいとは思っていない」「Aは嬉しいふりをしている」「Aは本当は嬉しくないふりをしている」などの「嬉しい」にまつわるいろんな言語使用をもたらし、嬉しいといえるような心の状態、嬉しいとは言えないような心の状態とを区別させる。
ある心の状態をあらわす述語「xは○○である」を想定する。
つまり人がある身体反応を示した際に、その人(仮にAと呼ぶ)がある心の状態にあると仮定し、「Aは○○である」と表現する。
そしてAに限らずあらゆる人がその特定の身体反応を示すことに対して、「Bは○○である」「Cは○○出ないように見える」「Dは○○であるようなふりをしている」「Eは○○でないように見せたがる」等いろいろないろいろな言語使用が開かれ、その過程を経て「○○である」というような心の状態が形作られる。
心とは言語使用の形成の中で仮定された存在である。
心を心理機能で形作る
日常言語において心の状態は「考える」「思う」「感じる」「嬉しい」「悲しい」「楽しい」などの言葉で形作られている(心が言語以前に存在すると考えるならば、ここにおいて言語が心の状態を分類していると表現できる)。
これに対し、気質64類型ではユング心理学由来の8つの心理機能「Ti」「Te」「Fi」「Fe」「Si」「Se」「Ni」「Ne」によって心が形作られているとする(日常言語と同様、心が言語以前に存在すると考えるならば、ここにおいて心理機能が心の状態を分類していると表現できる)。
この違いを視覚的に表すならばこうである。
類型論が心の状態を定義する
言語が心を形作るというのは言い換えるならば、言語使用が心の状態を定義するということである。
つまり類型論は心の状態の解明ではなく、心の状態を定義する言語使用のうちの1つということである。
気質64類型における「心」の定義
8つの心理機能
人の心は、その状態を表す8つの言葉で表せるものとし、その言葉としてユング心理学に用いられている8つの心理機能を用いる。
「Ti」「Te」「Fi」「Fe」「Si」「Se」「Ni」「Ne」
これらの機能に対する解釈は既存のユング心理学やその派生理論、その他類型論によって構築した独自解釈を、気質64類型用の解釈として用いる。
心の階層構造
まず基本の心の構造として、人の心の状態を表す語として8つの心理機能を用い、その心理機能から枝分かれした階層構造として心の構造を定義する。
つまりある心の状態を表す言葉は8つの心理機能の内どれかに当てはまるものとして捉えられる。
そして人の言動そのものを表すような言葉にも心の存在が仮定され、その心も8つの心理機能の内どれかに当てはまるものと捉えられる。
また一つの言動が複数の機能の組み合わせによるものとする場合もある。
例
「真偽を測るため真理値分析を行う」はTiに含まれる。
「攻撃されたので反撃する」はSeに含まれる。
「喧嘩になりそうなので冗談を言うことで場を和ませる」はNiとFeの組み合わせとする。
etc…
各心理機能の呼称
Ti:内向論理、てぃーあい
Te:外向論理、てぃーいー
Fi:内向論理、えふあい
Fe:外向倫理、えふいー
Si:内向感覚、えすあい
Se:外向感覚、えすいー
Ni:内向直観、えぬあい
Ne:外向直観、えぬいー
心理機能の分類
心理機能は複数の尺度によって分類され、それぞれ分類によって行為と欲求が異なるとする。
機能の2分類
8つの心理機能は「内向・外向」「合理・非合理」という2つの尺度で分類されるとし、それぞれが特有の行為と欲求を持つ。
内向機能(Ti,Fi,Si,Ni)
行為:意識を内側に向ける
欲求:内面的な充足感を得たい
外向機能(Te,Fe,Se,Ne)
行為:意識を外側に向ける
欲求:外界との触れ合いで充足感を得たい
合理機能(Ti,Te,Fi,Fe)
行為:物事を判断づける
欲求:ある判断基準を満たしたい
非合理機能(Si,Se,Ni,Ne)
行為:物事を捉える
欲求:世界の情報に触れていたい
機能の4分類
8つの心理機能は「内向合理機能」「内向非合理機能」「外向合理機能」「外向非合理機能」と言った4分類を持ち、それぞれが特有の行為と欲求を持つとする。
内向合理機能(Ti,Fi)
行為:内的な判断基準で物事を判断する
欲求:正しさを追求したい
外向合理機能(Te,Fe)
行為:外的な判断基準で物事を判断する
欲求:人や物事を管理したい
内向非合理機能(Si,Ni)
行為:状況に合わせた行動で調和を実現する
欲求:調和を保ちたい
外向非合理機能(Se,Ne)
行為:積極的な行動で刺激をもたらす
欲求:高揚感が欲しい
「論理」「倫理」は合理機能的な欲求に対するアプローチの分類であり、「感覚」「直観」は非合理的な欲求に対するアプローチの分類とする。
論理・倫理と感覚・直観
論理
・・・システム、構造、形式に基づく判断。またそれらに意識を向ける精神的なプロセス。
倫理
・・・人の在り方、人間関係、感情状態に基づく判断。またそれらに意識を向ける精神的なプロセス。
感覚
・・・具体的で直接的に知覚する。現実の物事の細部に知覚を向ける精神的なプロセス。
直観
・・・可能性や全体像を基に知覚する。現実の物事の細部から知覚を遠ざける精神的なプロセス。
機能の8分類
内向論理(Ti)
行為:物事を分析し真偽を判断する
欲求:情報を分類・整理し物事を構築したい
外向論理(Te)
行為:目的や利益に基づくマネジメント
欲求:人や物事を管理し有益な方向にもっていきたい
内向倫理(Fi)
行為:人間関係、感情に基づき良し悪しを判断する
欲求:より良い人間関係・価値観を作りたい
外向倫理(Fe)
行為:感情表現を用いて感情的な影響を与える
欲求:場の感情状態をより良いものにしたい
内向感覚(Si)
行為:五感を基に調和をもたらす
欲求:感覚的・物質的に満たされていたい
外向感覚(Se)
行為:その場において積極的に行動する
欲求:力が及んでいる実感が欲しい
内向直観(Ni)
行為:予測に基づいた行動をする
欲求:精神的な調和を実現したい
外向直観(Ne)
行為:いろんな情報に触れ、アイデアを創出する
欲求:知的・創造的な刺激が欲しい
あとがき
気質64類型における「心」を定義したうえで、その心を形成する各心理機能を定義した。
次の記事では各心理機能のイメージや特徴などを書き出し、それらをその機能が持つ気質として形作っていきたい。



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