日本人の心理を突いた参政党が躍進

そこからさらに80年が経過して、またしてもわれわれ日本人は物価高騰に苦しめられている。

ご存じのように、ロシア・ウクライナの戦争での原油・エネルギー高になって以降、日本では物価が上昇し続けている。もちろん、物価高は先進国に共通する悩みだが、2024年11月からワンランク上のステージに上がったことが総務省のデータからわかる。G7諸国、中国・韓国を軽く追い越して、異常な伸び率になっているのだ。

※第一生命経済研究所「気がつけば、日本の物価上昇率はG7最高

ここまで物価高騰すれば当然、庶民の生活は困窮する。そうなると「われわれを苦しめているのは誰だ」と犯人探しが始まるのが世の常だ。無能な首相が悪い。減税を阻むザイム真理教が悪い。ただ、それよりももっとわかりやすくて、疲弊した国民の溜飲が下がるような「犯人」がいた。そう、「外国人」である。

それを象徴するのが今年7月の参議院選挙で「日本人ファースト」を掲げて躍進した参政党である。この時、同党の候補者はこんなことを主張した。

「外国人の重要犯罪が増加しているので取締りを強化すべき」
「外国資本が日本の土地を買い占めているので規制せよ」

参院選の投開票日の翌日、東京・新橋駅前で行われた集会で手を振る参政党の神谷宗幣代表=2025年7月21日
写真提供=共同通信社
参院選の投開票日の翌日、東京・新橋駅前で行われた集会で手を振る参政党の神谷宗幣代表=2025年7月21日

「外国人の悪事」自体はどうでもいい

メディアは「正確ではない」「ヘイトを煽るデマ」などと指摘したが、ネットやSNSではそれが「マスゴミが必死に誤魔化そうとしているということは、参政党候補者の言っていることの方が正しい」と逆効果となって結果、比例代表で742万5053票(得票率12.5%)と、自民、国民民主に次ぐ「民意」を得たのである。

このような形で、80年スパンで繰り返されてきた「攘夷」を振り返ってみると、日本人の「外国人ヘイト」の本質が浮かび上がってくる。

あくまで目的は、「物価高騰に苦しむ庶民たちの憎悪の発散」なので、実際に外国人がどういう悪事を働いたとか、どういう問題を引き起こしているかという事実関係はあまり重要ではない、ということだ。

幕末も戦前も、外国人が国家転覆テロを行ったとか、日本人を大量虐殺したという確固たる事実はなかった。しかし、「なんとなく怪しい」「どうせ悪いことをしているに決まっている」というイメージだけで「攘夷」が盛り上がっている。参政党候補者が訴えた「外国人の悪事」が、不正確であっても有権者から熱烈に支持されたのも同じ構造だ。