『第34回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント』(GⅠ)は最終日の26日、12Rで決勝が行われ、GⅠ初の決勝に臨んだ嘉永泰斗(27)=熊本・113期=が3番手からまくり切り、優勝賞金4390万円(副賞含む)と年末の『KEIRINグランプリ2025』(12月30日、平塚)の出場権を獲得した。九州勢によるGⅠ優勝は、2019年6月に高松宮記念杯を制した中川誠一郎以来。2着に松本貴治が入り、史上初の当大会3連覇を狙った古性優作は3着に終わった。
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GⅠ初の決勝と思えない度胸と勇気で、端正なニューヒーローが栄光の頂点へと駆け上がった。犬伏が誘導を残して引くとおのおのの神経戦が続いたが、先頭に立った吉田が打鐘前から意を決して先行。3番手を確保した嘉永は真後ろに古性がいながらも、かぶる前に2角まくりで前団を粉砕。そのまま後続を振り切り、右手を突き上げて初戴冠の喜びを爆発させた。
「うれしいのと信じられないのと両方って感じ。この舞台であんな絶好の位置を回れることはそうない。昨年やその前も調子を落としたり苦しい時期があったけど、優勝するチャンスをものにできてよかった」
2018年7月のデビューから7年3カ月で手にした栄冠。状態の浮き沈みだけではなく、九州勢の層が薄いこともあってビッグ戦線で苦しい戦いが続いていたが、「オールスターくらいからかみ合ってきた感じがしていた」と良化の兆しはつかんでいた。好機を最高の結果へ昇華させて113期では真杉匠に次ぐタイトルホルダーの仲間入りを果たすと、「ここまで長かったですね」とかみしめるように言葉を絞り出した。
「まだ実感はわかないけど、来年2月の地元の全日本選抜も目標にやってきていたので。GⅠ覇者としてプレッシャーもかかると思うけど、それに負けないようにしていきたいですね」
九州勢で2019年6月高松宮記念杯の中川誠一郎以来となるGⅠ制覇を飾った若武者にとって、地元地区で大きな期待を背負う競輪祭、そしてグランプリや地元の大一番など、今後も注目舞台がめじろ押し。根を伸ばして力を蓄え、見事に大輪の花を咲かせた〝火の国の貴公子〟のさらなる躍進から目が離せない。(小橋川寛)
■嘉永 泰斗 (かなが・たいと) 1998(平成10)年3月23日生まれ、27歳。熊本県玉名市出身。九州学院高卒業後、113回生として2018年7月に武雄でデビュー(①①❺着)。GⅡでは23年3月のウィナーズカップ、同9月の共同通信社杯、今年9月の共同通信社杯と3度ファイナルに駒を進めていたが、GⅠ決勝は今回が初めてだった。通算成績は523戦202勝、2着98回、3着38回。通算取得賞金は2億5611万1674円(26日現在)。175センチ、80キロ、血液型O。