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utopiaに寄せて「この世界が何もわからなくても」

本日ジャンプ+にて近未来SF読切「utopia」が公開されました。このnoteはそのセルフライナーノーツです。
「utopia」の内容について語るというよりは、ジャンプ+さんで読み切りを描くことになった経緯、制作中にどんなことがあったか、これを描くにあたって考えていたこと、この漫画の(勝手に決めた)主題歌やその他の制作中に聴いていた音楽のことなどなどを1万字(1万字..…)越の文章にしました。
せっかく書いたので読んで欲しい気持ちと、込み入った内容につき誰かの気に触わりやしないかという心配が熾烈に戦っており、若干前者に軍配が上がったので公開しますが、このnoteに関してはあまり積極的に広めないでいただけるとありがたいです(utopia本編はジャンジャコ拡散してほしいです!)
そんなわけで、10/31(正確には11/1の早朝)まで無料、以降は有料記事にします。

utopia制作の経緯

2月 きっかけ

2月コミティアでジャンプ+編集部のAさんが声をかけてくださったことから始まった。
その前の回の、昨年11月のコミティアで水の定規を初売りして、その後年末に水の定規がちば賞に入選

しかもコミティアで買ってくれた人たちがpush&reviewを書いてくれたおかげでティアズマガジン(コミティアの公式ガイドブックみたいなやつです)にて紹介されるという嬉しいこと続きだったので、調子に乗って新刊「HOW TO GO」をバカスカ自力で刷って持って行ったのに4分の1しか売れず、調子に乗った自分を恥じ反省モードに入っていた夕方ごろ、Aさんはやってきた。

(ちなみにまだ山のように在庫があるHOW TO GOはこちらです↓)

Aさんは最初名乗らずに「HOW TO GO」を購入された後(出張編集部で来ている出版社の方やその他の法人出展者の方は首からカードをぶら下げているので、その時も「もしかしたらら出版社の方なのかな〜」とは思っていた)、30分ぐらいして戻ってきてくださりお声がけくださった。すでに水の定規も読んでくださっていたらしい。
「最初に名乗ったら変に期待させてしまうかもしれないと思ったので…」と仰るところに誠実さを感じた。
弟が売り子を手伝ってくれていて、名刺を見て「ジャンプだジャンプだ」とふたりでひとしきりざわついた。

その数日後集英社に伺い(自分の人生で集英社に伺う事案が発生するとは思ってなかったです)対面で打ち合わせをした。
最初は雑談で~というお言葉に甘えて映画の話とかをした。14歳の栞の話で盛り上がった。

3~5月 進捗無

「ジャンプ」=「何を読んでも面白い」という方程式が小学生の頃からあるため必要以上にビビッてしまい、描けそうなものが思いつかず、merimeriyeahのCDアートワーク(想像以上に大変だった)やモーニングの読み切り(46号掲載)を描いていたこともありほぼ連絡せず。

6月 進撃 スピ

いい加減連絡しないとAさんに存在を忘れられてしまう…と震えながら「なんか落ちてないかな~」と思考をブラブラさせていた。
そんなある日の散歩中、温暖化後の未来のことに思考が向かい、携帯のメモに思いつくまま長文を羅列した。
ちょうどアニメ進撃の巨人を観終わったところでごりごりに影響を受けており、世界観をしっかり考えるだけでかなり面白くなると信じてとことん書いた。(が、実際完成すると辻褄が合わないところがいくつか出てきて、たった60pの読み切りでこれなのに連載であれだけの世界を生み出すだけでなく意義も説得力もある物語に仕上げた諌山先生は改めて化け物だと思った。)
ヘタしたらすでに諦められているかもしれないけど明日このメモをネーム化する旨をAさんに連絡しようと思いながら床についたのだが、なんと朝起きたらその後どうですかとAさんから連絡が!鹿島さんこれって…

7月 齋藤なずな先生 担当Aさんのこと GEZAN

まず、とにかく頭の中にあるものを書き殴っただけのネームの卵をう~んと思いつつそのまま提出して、Aさんもう~んと思っているのが手に取るようにわかった。私もう~んと思っていったのでそう思われるのはよく理解できたが、これを描きたい動機などを力説したところこやつなんだか高尚なものを描こうとしているなと思わせることに成功(主観)。そこから怒涛のネーム直しが幕を開ける。(といっても計4回ほど)

齋藤なずな先生のお宅へ
そんな中、結果的に落ちてしまった他社の読み切り企画のネームの相談をしに、師匠の齋藤なずな先生のお宅へ向かった。
先生に見せるとなると俄然気合いが入るので(まだ出会ってすぐの頃「これはマンガじゃない」とピシャリ言われた印象が強すぎて、その後は毎回褒めてくださっているにもかかわらず、毎回「今度こそはダメ出しされる。。」と緊張する)集中して数日かけてutopiaのネームも描いたが、その時はまだ卵のままだった。

当日、先生は結果的に落ちてしまった他社のネームを褒めてくれた後、utopiaの卵ネームを読んで「テーマが凄くいい、私が描きたいくらい」と仰ってくださった。描いてほしい。
しかし、と続く。反出生主義に気候変動に多様性とくると詰め込み過ぎていて連載じゃなきゃ難しいのでは?と突っ込まれる。確かに…。

しかし8月に公開された先生の新作は、いくつもの要素を詰め込んだ挙句、すべてが連鎖して荘厳な結末を迎えるというもので、「自分もやってるじゃないですか!!!!」と盛大にずっこけた。そして長文の感想手紙を送り、lineでお返事をいただきました。先生に出会えたことは宝です。↓その新作

その日、沢山ほめてくれたあと、「きっと漫画でやろうとしていることが私と近いから、あなたの漫画を良いと思うのね」と仰ってくださり胸が震えながら帰宅。
そう、そもそも私が漫画を描く動機のひとつは、自分が考えている穴だらけの思想を専門家でもないのに主観で如何様にも語れるからなのだ。
しかもただの発言だったら相手にされないものも、絵が付くと結構読んでもらえる。
そこには責任が生じるが、表現としては自由だ。

そして、生きていると自分の言動に目を伏せたくなるようなことが多々ある。ここに書くのが憚られるような非難殺到案件もいくつかある。
この国で経済活動をしていると、不本意な何かに意図せず加担してしまうこともしばしば発生する。
しかし、創作をしていると、少なくとも自分の中の、創作をしている部分だけは濁らずにいられる。

ここにすべては書かないがそういった初心を思い出し、その日はその初心を抱きしめながら帰宅した。

その後数日間、図書館でうんうん唸っていたら、物語の形が出来ていった。
面白さに関しては全く自信がなかったが、手応えがあった。
描きながらブワーっと何かが押し寄せてくるような感覚。
これまでの経験上、ネームの時にこういう謎の手応えがある時は、たとえ話題にならなかったとしても誰かしらには必ず届く。
この感覚になれる時は稀で、描きながら体温が上がっていくのがわかった。

それを担当さんに提出すると、初めて「良かったです」がもらえた。
その後、そのネームを修正しながらブラッシュアップしていった。

担当Aさん
Aさんは基本的に淡々としていて、あまり褒めたりはしないが、良いときは端的に良いとおっしゃってくださるので信頼できる。
色んな提案もしてくれて、Aさんと話したおかげで考えがまとまり次に進めた場面も多い。
また貰った提案に対しこちらが「これはこういう意図があってあえてそうしているため変えたくない」などと伝えると大概理解してくださり、すんなり引いてくれるのもありがたかった。
一体何時まで働いているのだろうかと心配になる時間に連絡が来たりもするが、それにも関わらず最新の映画情報などを送ってくれて凄い。その努力を見習いたい。私は毎日21時頃、遅くとも23時にはスヤスヤ眠っているので、年下のAさんから遅くに連絡が来る度にだいぶ申し訳なく居た堪れない気持ちになった。
今作はAさんが居てくださったおかげで描けました。いろんな面で助けてくださりありがとうございました。

窮地
7月の2週め、他社に既に提出してあった読み切りのネームが会議で落ちた。
さらにまた別の会社には初めて連載企画を送ってみたが、自分でもこの内容では正直難しいかもしれないとは思っていたものの、先方からもこれは難しいと即答されてしまいズガーンと落ち込んだ。
その後その会社の担当さんには電話で1時間も打ち合わせに付き合ってもらったのに何も出ず、結果的にスランプ脱出法指南会のようになってしまい、忙しい中担当さんをそんなものに付き合わせてしまったことが情けなかった。
落ちてしまった会社の担当さんも8月に打ち合わせを組んでくださったのに、私に目ぼしい企画がないせいで結果ただのお茶会になってしまい本当に申し訳なかった。
報いたい・・・・・。

それでいよいよこの先の仕事がない!!と焦り出し、すでにAさんに提出していたネームを一旦差し戻してもらいできる限り会議で落ちそうな要因を排すべく手書きの文字を打ち直すなど、クオリティを上げることに努めた。
しかしその時点で既にだいぶ自信を失い、あ〜終わった終わった。そもそも私みたいななんちゃって創作マンが天下のジャンプ(+)様の会議なんて通るわけないんだと落胆したまま、元々予定していたGEZANのライブを観に、友達と前橋へ一泊の旅行に出た。

GEZAN 集炎ツアーin前橋
友達とは住んでいる地域が違うので、各々車で行くことになった。
ひとりで音楽をかけながら長距離の運転をすると頭の靄が晴れ、ぐじゃぐじゃの悩みの輪郭がはっきりする。

その夜のGEZANは、凄まじかった。
大学生の頃(約10年前)GEZANを観ると、その時の自分がどんな状態だとしても必ず赤ん坊のように泣いてしまっていたのだが、最近はライブのノイズが増えてしまい、以前よりは心が動くことが少なくなってしまった。(これはあくまでライブでの話で、自宅や運転中や散歩中に音源を聴いて心が震えるのは昔と変わらない。)
ノイズとは、単純に会場が大きくなってお客さんが増えたことや、明らかに酔って騒ぎたいだけの人とかが以前より目につくようになったとかいうことだ。
だけどその人が悪いわけではない。
ライブとは基本自由であるべきだと思う。かくいう私も以前酔って暴れたい日があった。
ライブという非日常の開放的な場所において、暴力と痴漢以外は好きにしていいと思う。
統制のとれた振り付けのあるライブとか暗黙の了解の前提があるライブが好きな人もいると思うが個人的には嫌いだ。
自分の身体と心の状態を出来るだけまっさらな状態にして、踊りたくなったら踊ればいいし、頭や心が鈍重で何も届いて来ないような日は、諦めて傍観していればいい。自分はそうしている。
だから彼には酔って暴れまわる自由がある。
そして私にはその人を嫌う自由がある。
だからそういう人間に遭遇すると自分の精神世界にノイズとして立ち現われ、それがヘイトとなり、好きなバンドのライブでヘイトの感情を抱いてしまったというその毒が体内を廻り、疲弊して自滅する。
それが嫌なので最近は記念碑的なライブ以外では、大きい会場やフェスでGEZANを観ることは極力避けている。彼等のライブ会場に、隣人に対するヘイトを抱く人間は必要ないからだ。

そういう理由もあって、地方の小さい会場で観るGEZANに特別な期待があった。
地方の会場はお客さんがもつ特有の、頻繁に観られない好きなバンドが地元に来てくれたという喜びと熱気が相まってグッとくる良い空気が流れていることが多いと思っているからだ。(そういう空気のおかげで体内の毒素も浄化されがち)

この日、もはや記憶にないほど久しぶりにこの曲をやってくれた。

特別な曲だ。
きっとGEZANが好きな大半の人にとって特別な曲だと思う。

イントロが鳴った瞬間、魂と再会した。
久しぶりだった。

この世界が何もわからなくても
歌ってもいいんだよ

大学4年の秋、2018年の大阪の全感覚祭に行ったとき、GEZANのライブを観て数年ぶりに絵を描きたいと思った。
人にはそれぞれの魂の軌道がある。
当時私はいろんな要因を重ねて、その軌道から離れて久しかった。
その日をきっかけに、本来の軌道に戻りたいと魂が求め出すようになった。
初めは、はっきりとした口調ではなかった。ほとんど聞き取れなかった。
その後も魂は自分の胸の内を喋ってくれたり、喋ってくれたのにこちらに余裕がなくて聞き取れなかったり、そんな私のことを諦めて黙ってしまったり、また話してくれたりを繰り返して、魂と会話しながら今、また軌道から落っこちるのを恐れながらもなんとかその軌道にしがみついている。
その時だったかその前後数年の間にマヒトさんが言っていた。
「何か反論すると代替案を出せと言うやつがいるが、俺たちは動物なんだから代替案なんかなくたって嫌なことに感覚的に嫌だと言っていい」
その言葉を宝物のように今も大事にしている。
それはもう、この言葉がなかったら何も描けないほどに。

その日その会場で瘡蓋と爆撃機を聴きながら、この漫画はもし会議で落ちたとしても描き上げようと決めた。

前橋から帰る途中、行きたかった神社が通行止めで行けなかったので、私の希望で川越に付き合ってもらった。
東京上空のロケ地を見たかったのだが、軽い熱中症みたいになってたった数百メートルしか離れていないその場所に行くことを諦め早々に喫茶店に逃げ込んだ。英断だった。
別々の車で来ていたため、そのまま川越でお別れになるのが名残惜しく、コメダでコーヒーとカツサンドを飲み食べながら昨夜のことを話した。
私もこの国の人間を半分に分ければ相当スピっている部類だが友人はかなり先を行っており、私が「昨日龍いたよね?」と言うと、それを理解してくれただけでなく、その龍が去った後の金色の鱗が空気中にまだ浮遊しているというイメージまで同じで膝から崩れ落ちてしまった。
ありがたい。
そんな話をしていたら、ふたりに共通の友達からさっき子供が生まれたと電話が入って泣いた。(年中泣いてるので私の涙に価値は無いです。)
そんな感じで忘れられない旅になった。

通りました!
最終ネームを出して一週間ほどたった7月の終わり、その時もう既に会議に落ちた時の心の立て直し方と集英社以外での漫画の発表方法を検討していたのだが、「通りました!」と連絡をもらう。
ものすごく嬉しかったが、その反面現実感が出てきて一気に気が重くなった。
しかしこの時は意欲に燃えていた。そう、この時は…。

8、9月 作画 テーマ曲

作画作画作画~♪(魚の歌)
とにかく作画と向き合う二か月だった。
しかも集中力もない。
「絵描くの好きじゃなかったら商業厳しいっすよ」
1月に他の担当さんに言われた一言がこだまする。
どんどん自信を失っていく。
最後、筆が慣れてきてやっと少し楽しかったがそういう問題じゃない気がしていろんなことを考えた。
完成。

勝手に主題歌
ネーム制作中は(勝手に)今作のテーマ曲(ということにしている)2曲を聴いていた。

この2曲は聴いてもらえばわかるように今作の核になっている。
ぴったりしっくりくる曲が決まるとそれだけでもうネームは半分完成したといっても過言ではない。(さすがに過言!)
しかしそれくらい、テーマ曲を見つけるのは難しい。
「まあ、雰囲気的にこの曲かな~」くらいの気持ちで決めることが多い。
そんな中、今回はぴったりどころじゃなくびっっったりとはまってもうとんでもなくありがたかった。勝った!と思った。
邪魔にならない人は流しながら読んでほしい。

それから、作画中はこのプレイリストを聴いていた。

集中力が切れてきたら魔法の箱で朝井リョウと加藤千恵のオールナイトニッポンの過去回を聴いた。5周くらいした。
このラジオを教えてくれた友達に思いを馳せたりした。

作画はしんどかったけど、この曲たちには本当に助けられた。
星野源は普段全然聴かないのだが、今作制作にあたりすごいしっくり来て助かった。
話がそれるが、初めて作ったエッセイ冊子「ひとり暮らし」収録の「9月のこと」という漫画は、星野源の「ばらばら」と「くせのうた」を聴きながら描いた。描きながら胸がいっぱいになり、沢山泣いたのを今も覚えている。
あの感覚を取り戻したくて今も漫画を描いている。なかなかうまくそこに至れないけど、生きてるうちは諦めたくない。

寺尾さんは人間に対する濁りのない眼差しで過去現在未来を繋ぐ祈りを歌ってくれている人なので、腐らないよう、折れないよう、力を分けてもらった。

なんだかんだ締め切り10日前くらいに提出。
カラー絵は初めてで戦々恐々としていたがサムネイルの絵は楽しかった。
このために長年憧れていた水彩色鉛筆を買ったりもした。
表紙の絵はひたすらしんどかったけど自分の実力にしては良いものが出来た。
何よりデザイナーさんのセンスが素晴らしく、初校を見て震えてしまった。
担当さんの考えてくれた煽りも素晴らしい。
AIに相談しながら考えたらしく、私も次のネームとかでは思考の整理に活用してみたい。

10月 ひゃくえむ。

ひゃくえむを現時点で3回観て頭の中がそれ関連一色になっている。
何より、先ほど書いた作画関連のいろいろに対する回答のような映画で震えた。震えてばっかだな。
このタイミングじゃなかったらここまで響くことはなかったかもしれないと思うと、人生って面白い.…(うわっ)
そこをきっかけに内山昂輝が気になりだし、ラジオの過去回をまたもや魔法の箱で発掘し聴いている。
よくわからないパーソナリティのラジオに遭遇すると大概「うわおもんな..…」と思ってしまう傾向にあり、今回のも内山昂輝を知らなかった頃の自分が遭遇していたらその部類に入るはずなのに「ウフフ、かわいくて面白くてすごい🥰めちゃくちゃすごい🥰」と毎日思っていて自分のこういうところが滅法キショい。


モーニング46号掲載読み切り「焚き火」
10/16(木)には生まれて初めての読み切り商業掲載があった
今年読んだ中で最も衝撃を受けた漫画家さんから何故かフォローを返してもらえたのが滅茶苦茶嬉しかった・・・・。リアルに悲鳴を出してしまい母をビビらせた。(思わずDMしそうになったが怖がらせてしまうかと思いぐっと堪えた。大好きです)
深夜に読み、過呼吸手前くらいの号泣をしたあともう一回読み返し、翌早朝から名古屋にあしたのジョー2の上映会+あおい輝彦さんのトークという記念すべき大事な日だったにもかかわらずこの漫画でいっぱいになっているため上の空で何も入ってこなかったという悲劇も起きました。

「焚き火」はweb掲載がなく、一週間経ったらこの世から新たな出会いのチャンスが減ってしまう(バックナンバーとして通販などで注文出来ます)ことがとても残念だったが、自分が子供の頃は読み切り漫画はみんなそんな感じだったよな、と思うとなんだか懐かしかった。
私は当時から読み切り漫画が好きで(この長さなら自分も描けそうと思っていたのもある)、連載漫画と同じくらい思い入れのある読み切り漫画とかも結構ある。
自分と同じように、なんとなく目に留まって、作者も作品名も忘れてしまったあと、読んだときの感触だけ覚えていてくれる人がいたらと想像するとじんわり嬉しい。
あとweb掲載がないことにより、「全然話題になってないな・・・」とか「コメント少ないな・・・・」とかでソワソワ落ち着かないということがweb掲載時より少なかった。
自分自身、紙で買った漫画はたとえ好きな作品でも平気で半年くらい放置してしまうので「まあ紙媒体だしすぐに反応来なくて当たり前だわな」と、いい意味で諦めの気持ちで過ごせて助かった。ある意味、放流したような感覚になれたし、むしろ買ってすぐ読んでくれる人が多くて驚いた。ありがたい。

utopiaに寄せて

星野道夫

創作物は基本的にすべからく、意識的に得た情報だけでなく、これまで触れてきたものたちが複合的に重なった結果としての産物ではあるが、今回は星野道夫のことを考えながら描いた。
社会人1、2年目の時に星野道夫の遺したものに縋るように生きていた。
いつかこの感覚を漫画にしたいと思っていたが、そのいつかの第一号がこれになった。主人公の悠(はるか)という名前は数年前に開催された彼の写真展、「悠久の時を旅する」から取った。
彼が今生きていたら、どんなことを思うだろうと未だに年に数回は考えている。

反出生主義

私の中には反出生主義がある。
それも、その思想を知ってから縋りだしたのではなく、自然な過程でその思想を獲得し、大人になってからこの気持ちに名前があることを知る、という順番だった。
自然発生的な思想は、発生が自然であるゆえに盤石で、打ち崩せないと思ってしまいがちだ。
他所様の子供に対して生まれてきてかわいそうとは一ミリも思わないのだが、自分や人類全般に置き換えるとどうしてもそう思ってしまう。
クソだ。
自分の中の反出生主義に抗いたいと思った。

この日の日記にも書いたが、「リベラル、左翼の弱いところは出生を肯定する物語が提示できないところ。保守、右翼の強いところは、たとえ根拠がなくてもとにかく出生を肯定しているところ」というところに改めて膝を打った。
自分のことを言い当てられたように思えて情けなかった。

今回、有効な出生肯定物語を提示できたとは全く思っていない。
それどころか「何も解決しなかった」というコメントがトップにきている夢なんかも見てしまった。震えた。これを見ての模倣犯は絶対にやめてください。

これに関してはたとえ有効な物語を提示できたとしても、それで解決してさあ次にいこうというものではない。
今生きている全員で向き合わなければいけない。
実際に未来に恐怖している子供達がいる。
大人がそれに向き合わず、ただ子供が欲しい、出生おめでたいと言い続けているだけでいいと私には思えない。
ただ先ほど述べたように、深く暗く考えすぎてしまうのが左翼的思考の失敗なので、素直な気持ちで出生を肯定思できる人は何も間違っていないどころかどちらかというとおかしいのは私のような思想を持っている側だ。これを読んでいる人が素直にそう思えるのだとしたら、あなたの存在自体が希望なのだ。心からありがたいと思う。
私は今後も暗い部分担当として自分の持ち場で頑張るので、そういう悠の母のような人たちに、力づよく明るい方へ導いて欲しい。あやかりたい。
これを書いてて気付いたけどutopiaはそういう逡巡を描いた漫画なのだ。暗いことばかり考えているくせになんの方策も立てない門外漢の自分にできることは、悠くんのようにウジウジみんなが見ないようにしている暗い部分をねえあそこ暗くない?と言うことをたとえ多数から嫌われようが辞めずにいることくらいだと思うからサ...…。今後もめげずにいきたいと思うヨ...….。

冒頭カップル(悠の父母)

漫画におけるルッキズムについてしょっちゅう考える。
私は花ゆめっ子なので基本的に顔の良い男女しか出てこない漫画を読んで育った。
しかし大人になり、この状態に違和感を感じ始めるも時すでに遅し。
手癖で絵を描くとみんな整った顔立ちになってしまう。
崩れていても個性的で愛らしい顔が描ける人は最高だが、私にはそれが出来ず、頑張って崩そうとしたんだね感のある痕跡がくっきり残ってしまう。
しかし私の母が絶望的に顔の見分けが出来ないタイプで、私の漫画を読ませるたびに「顔全部一緒」と言われ続け、ムキになって顔の描き分けを意識するようにしたら以前よりは個性的に描けるようになってきた。

その結果、古巣であるはずの顔の良い男女が出てくる漫画すべてに対し、お前らは顔が良いから話にならない、失格!とやっかむ怪物が出来上がってしまった。
しかし他者の視点を内面化して自己批判をしてきたフラストレーションが溜まり、だんだんと抑え込んできた「とにかく自分の思うイケメンとかわいい子をイチャイチャさせたい」という神の視点が自らに発生し、クソ―――イイ男とイイ女を思う存分イチャイチャさせたるーーーとやや暴走ぎみに爆イケカップルを誕生させてしまった。
せっかく社会が1歩進んだのに、私ひとりだけ10歩くらい下がってしまった。
描きながらえ〜この顔かっこいい〜可愛い〜とか、おいこのコマの悠母ブスになってるぞ直せ!とか自分に命令し続けた(まあこれくらいなら許容範囲かなとそのまま載せたコマも半分くらいあります)
ふたりとも最高にイケてたよッッお疲れッッ✨✨

師走ゆきさん

ルッキズムの話関連で、私が小学生か中学生の時に師走ゆきさんのアテナ新人賞受賞作を読んで、主役の女の子の髪の短さに驚いた。
黒髪ロングでもくるくるヘアーでもなく、お相手の男の子よりも短い癖っ毛のベリーショート。(と書いたが今画像を漁ったら記憶よりも長かった、すみません。)
飴玉が出てくる可愛い話で心に残り、ファンレターを書いて、お返事を貰って、を何度かさせていただいた。
去年くらいにそのお手紙が出てきて当時の気持ちを思い出した。
今もたまに先生が表紙の花とゆめが本屋さんで平積みしてあるのを見かけたり、アニメ化決定!とかを見かけるたびに嬉しく思うと同時に、当時フルタイムで働きながら睡眠時間を削って夜中に起きて漫画を描いていると手紙に描いてあったことを思い出し、その努力とガッツがあったからここまで来れるんだよなあと、尊敬の念が湧く。
怠惰に過ごしている自分に、それでいいの?と言われているような気持ちになる。こうしちゃいられない、、と思う。

先生には伝えなかったけど、当時の自分は「こんなに髪が短くてもこんなにカッコいい男の子と恋愛できるんだ!」と変な風に勇気づけられ、実生活でも髪を短くしたい時はまああそこまでいっても大丈夫だもんな、と謎の自信がつき、実際学生時代は殆んど少年のような髪型で過ごした。
大人になってからも基本的にずっとショートヘアーで過ごしている。
髪が短い女の子を描くのもその時から好きになった。ロングよりも描くのラクだしね( ◠‿◠ ) 💦
今回、その時の主人公の見た目を思い出しながらあのクラスメイトのベリーショートの女の子を描いた。
本当は名前があるのだけど、以前アルバイトをさせてもらった保育園の子の名前をつけたので伏せておく。


夏二部作

去年の夏に描いた水の定規

これは2003~5年ぐらいを想定して描いており、まだ夏が良いものとしてあった時代の話だった。

だが今はそうではなくなっている。
それなのに正常性バイアスなのか、まだそれについて創作で触れようとする潮流が出来ていないように思ったので、「いたただきっ♡」と参入を図った。

今年の夏も酷い暑さだったので、誰かが先にそういう話を発表して大バズリするのではないか、ネタ被りするのではないかと実にヒヤヒヤしていたが、これまでのところ少なくとも私の視界には入ってこなかったのでセーフ。
ぶっちゃけ今作において、暑すぎることによるディストピア感が出せたようには到底思えないので、他の人が描いたものと比べられたら見劣りする自信しかない。
よってもし温暖化系近未来SF漫画が既に存在していたとしても、こういうのがありますよなどという情報は絶対にいらないです。
教えてこないように。

などと言いつつ、すでに水の定規と描いている内容が若干被っている。
一体私は夏の匂いをあと何回擦るつもりなんだろうかと呆れそうになったがそんな自分に「過去の夏と未来の夏に同じ風が吹いているとしたらそれってすごく…イイじゃない…」と言い聞かせ催眠状態にもっていき、都合のいい解釈を信じ込ませることに成功したので、読者の皆様にも寛大な心で受け止めてほしい。あわよくば愛(め)でてほしい。

秋ですね

夏の漫画を2回も描いて、そうとう夏が好きなんだねえと思われそうですが四季全部好きです。
特に秋は好きです。今年の秋はなんだか長そうでありがたい。
Aさんから、「なるべく世間が夏の暑さを忘れないうちに公開しましょう!」と言われていたのに一昨日くらいから関東は涼しいを通り越して上着を着ないと寒いほどになってしまい、みんな夏の暑さなどとうに忘れてしまっているのではないかと思います。きっとAさんも残念に思っていることでしょう。なんなら私も忘れてしまいました。
この2週間くらい自律神経乱れておりしんどい日もありますが、それでも秋は最高ですね。
風邪ひかずに過ごしましょう。
それでは。

今後の予定

書き忘れていたので追記

11/24(月祝)に東京ビッグサイトで開催されるCOMITIA154に、合同誌「だめこりゃペンギン群島」で参加します!

といっても当落が出るのは来週です。
今回応募総数がエライことになっているみたいで、なんと1000サークル以上落選予定らしいです。万が一落ちた場合も、年内に合同誌だけでも出します。よろしくお願いします🔥

→当選しました!
11月24日(月祝)11:00-16:00
COMITIA154
東京ビッグサイト え15ab
サークル名 だめこりゃ

メンバー
松林富士ビーチ
カウ・リバー
sonofins https://www.instagram.com/sonofins?igsh=MTdlbjlmaGNpeDhuaQ==
夕暮宇宙船

画像
私はこんな感じの12pの漫画を鋭意制作中です

久々のコミティア楽しみだな〜
その前に無事完成するといいな〜

この合同誌は漫画だけじゃなくて企画ページにもかなり力を入れていて、私たちにとっても永久保存版になると思います。
我々の出会いやら来歴やらからまだ内緒の企画もありますので楽しみにしていてください。

是非ともだめこりゃメンバーに会いに来てください
風邪とか引かない限り全員来る予定です

それでは!

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コメント

3
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奥野とみーのプロフィールへのリンク
奥野とみー

utopiaとても良かったです!世界もテーマもキャラも夏と共にキラキラ輝いて、希望のあるお話で素敵でした。才能が凄まじいです! 記事も拝読させて頂き、自分も頑張ろうって励まされました。ありがとうございます。

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夕暮宇宙船 いいね
utopiaに寄せて「この世界が何もわからなくても」|夕暮宇宙船
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