非常識人 第四十七話 ドロボーサンタ
2度目の逮捕時の時の某留置場にて。
その際は三人部屋に入る運びとなった。
「こんにちは〜何したの〜?」
毎食後5錠以上。あらゆる睡眠薬や安定剤。
それらを常用している立派な白い髭を蓄えた、さながらサンタクロースの見た目をした懲役太郎が話しかけてきた。
「大麻です。売人じゃ無いのに譲渡ついて嫌ですね。」
「あ〜たいまいいよね〜すいたいなあ〜。」
ほぼ呂律が回っていない。
その癖にやたらと刑事事件の判例や量刑に詳しい。
無駄に綺麗な文字でわざわざノートに書いて説明しつつアドバイスをくれる。
今回は心神耗弱を主張し量刑を軽くする腹づもりなようだ。犯行時に向精神薬を服用していたことにするらしく、薬で1日中ボケている。
少年院から数えて10年ほどしか娑婆にいないそうだ。
罪状は殆どがウカンムリ。
つまり窃盗の常習犯だ。
見た目がサンタクロースなのに真逆である。
ホリエモンと同じ時に長野刑務所に居た、という自慢にもならない自慢をされた。
もう1人は無口でエロ話ばかり口にする裏DVD屋の雇われ店長。彼は空気なので割愛する。
「体中にね〜釣具の竿とかグッズを隠してたらバレちゃったんだよ〜。三件連続狙っちゃったのがダメだったねえ。」
「暇っすねー。歌います?」
俺は尾崎豊の15の夜を大合唱した。
普段の担当なら怒られるが、この時の留置官が良い意味で少し頭のおかしいやつだった。
俺の先輩や仲間も何人も知っている。
一緒にマリファナを吸ったらしい。
留置官の彼まで15の夜のサビに参加してきた。
「盗んだバイクで走り出す〜」
窃盗のサンタは爆笑。
なぜなら彼はバイクを使って窃盗に回っていたからだ。
「君みたいに留置場でおもしろいの、めずらしいよお。」
「そうです?楽しめば地獄も天国だから!」
彼とは部屋が解体されるまで一緒だった。
理由は毎度同じ。
俺らの部屋は騒ぐわ五月蠅いわろくでもないことをするからだ。
部屋が変わった彼が拘置所に移送される時。
担当官にバレないように俺の部屋の前を通る際、小さく手を振ってくれた。
無言で手を振りかえす。
皮肉にもその日は12月24日だった。
サンタの仕事か。
いや無いな。
彼はドロボーだ。


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