非常識人 第四十話 ウラギリ
我慢を覚えた。
掃除が好きになった。
人様を立場や年齢で判断しなくなった。
人間性以外何も見ない。
読書と食事のスピードが早くなった。
得たものは大きかった。
辛かった。だがある意味「この程度か」と言う感想も正直なところだ。
出所後。
例の先輩に家の合鍵を宅下げして渡していた。
信用して大切な物達を預けていた。
隠していた仕事道具セット。
これだけでも末端価格50万は超える。
現金。約サラリーマンの年収分。
車。
2週間もあれば余裕。
名義人を立てて会社設立する予定だった。
電話を掛ける。
繋がった。なぜか声色に余裕がない。
疑った。
「車は先輩から買ったので横領罪で刑事告訴しますよ。俺はちゃんと迷惑かけた分の手間賃は渡してますからね」
「今地元のやつに追われてます。そのせいで余裕がないので5日待ってもらえませんか?」
既読スルーの連続のあと、警察を出したらこれだ。
ほぼ確信した。
「こいつ裏切ったな」
情報共有。
佐賀、中洲、身内の身内にまで連絡をする。
手配書。
「頼む。出所祝い代わり。見つけたら殺せ」
先手は打つ。
相手の言い分が億が一本当なら何もしなければ良い。
ただこちらに非がない。
確かに差し入れはもらった。
服の上下、下着類セット、漫画三冊。雑誌三冊。二度の面会。あと車の回収。
そこまでしてもらっていれば信用もする。
ただ相手が捕まらないように根回ししたのは俺だ。
相手も警察に対する強盗致傷で過去に前科がある人間。
裏切ったらどうなるか想像はつくはずだ。
約束の日が来た。
連絡がつかない。
動いた。
先方の職場に電話する。
「オタクの社員さんにこれこれこう言う事情で託してたものがあります。雇用の際に本人確認などされていませんか?実家に行きたいので」
「いやーあいつ十一月で辞めてますよ!うちからも飛んでる状態なのと、協力はしたいけど本当にないです!」
やられた。
あとはどうするか。
先輩方2人に相談。名前は伏せる。
どうしても許せない。
「そう言うときは警察が1番!飛んだ人間は本当に見つからない!」
「親から奪う方がいいよ!」
そうですよね、と言って別れる。
警察に頼る
プライドが許せない。
理由はシンプル。大嫌いだからだ。
結果。
本人はまだ見つかっていない。
被害届も出していない。
今頃どこで何をしているのだろう。
思い出すだけで腹が立つ。


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