非常識人 第三十一話 ムショ1
人生は時間の限られたゲームだ。
ゲームオーバーは死だ。
だが日本は法治国家。
病や事故、余程の不義理を働いたケースを除くと犯罪の日々の最後は決まって檻の中と塀の中だ。
その日は友人とそのツレと遊ぶ予定だった。
サウナ付き銭湯に集合。
友人のプレジデント。俺の420のゼロクラ。
集まったメンバーは皆刺青だらけ。
半グレだ。
見るからに治安が悪い。
駐車場でジョイントを燃やす。1人1本。
パトカーが入ってきた。
まずい。
おそらく近隣住民の通報だろう。
パンツには5グラム。
ハサミとパケがダッシュボード。
言い逃れは効かない。
ネタを食おうとした。
「辞めろ!死ぬぞ!」
5人に押さえつけられる。
顔に当たるコンクリートが冷たい。
飲み込めないように鼻と喉を塞がれた。
吐き出す。
周囲には大勢の野次馬。
集まったパトカーは約8台。
「タバコ吸わせろ。まだ札出てねえだろ」
最後の悪あがき。
ハイライトメンソール。
過去吸ったタバコの中で1番美味しかった。
薬物検査キットで検査中。束の間の自由だ。
「あいつら関係ねえから。今日初対面やし」
ネタを持ってたのは俺だけだ。
何より友人はまだ仮釈中。
捕まれば一年二年じゃ効かない。
札が出る。軽い黒手錠が回る。
叫んだ。
「おい、あと任せろ!お前ら関係ないし大丈夫だから」
作り笑い。足は震えていた。
累犯かつ過去の数々の逮捕歴から実刑だ。
精一杯の強がり。
刑事が両脇。
シルバーのロイヤルサルーンに乗せられる。
博多署に到着。
何度目かの留置場での取り調べ。
薬物検査キットを使われた。
2人の刑事に挟まれ目の前で尿検査を受ける。
当たり前だがケミカル反応は無い。
若手刑事が舌打ちをする。嫌なやつだ。
その後壁に手をついての身体検査。
「今日はもう夜遅いから明日の朝6:30起床ね」
担当官、通称オヤジは人によるが優しい。
「やべえな。置きっぱなしの車と家、服。どうするか」
眠れない。
無駄に広い1人部屋。夜中の逮捕で他の犯罪者たちは眠っている。
その日は一睡もできなかった。
どう調書を巻こうか。
考えている間に朝を迎えた。


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