非常識人 第二十六話 ほりもの3
22時以降はこちらからの連絡をしない。
靴を半歩先に揃えて一礼して入る。
デザインの打ち合わせの電話は24時間1コール半以内で取る。
先方が何者か分からないので隙を作らない。
言われた値段よりも一万円多く渡す。
どんな話題も無難に流す。
三度通っても揚げ足を取られないように態度を崩さなかった。
ただ、ふと話題がお互いの前科のことになった。
「先生は何して捕まったんですか?」
「20の時!シャブの売人と死体遺棄!」
俺と同世代の女の子でそのレベルの事件を起こしてニュースにならないわけがない。
ふと思い当たる知人がいた。
もしかして知ってます?と聞いてみた。
タトゥーを彫る手が止まった。
冷や汗をかいている。
「もしかしてキャンディくんて八王子いた?」
「ラッパーをさせて頂いてましたよ。地元ではないですけど」
ビンゴ。やはり共通の友達が居た。
聞くと神奈川出身らしい。
次から次へと先輩、後輩、同級生と共通の知り合いだらけ。年も一個下だった。
「キャンディくん、よろしくねー!」
分かりやすい媚びた作り笑い。
向こうから歩み寄ってきた。
世間は狭い。
桜に色を入れ、狼の目を赤くした。
その日は日本刀は筋彫りの途中で辞めた。


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