非常識人 第二十五話 ほりもの2
アウトローは行いも悪いが頭はもっと悪い。
一握り賢い人も居る。
彼らは悪党かつビジネスマンだ。
ただ一瞬の感情で暴力を振るい、眉ひとつ動かさず人を殺す。
人生に大赤字を作る点で賢いとは言い難い。
本職と彫り師はシャブ中が多い。
我慢を強いられる職種かつ不安定なアウトローな職種だからだと思う。
シャブは集中力が増す。
メモリ20も静脈に打ち込めば8時間は作業に没頭する。
3日は眠れない。
ただ、その分視野が狭くなる。
物事の捉え方が主観的になり過ぎる為だ。
最終的には自分のことが客観視できなくなる。
「思い込み」を極めたようなドラッグ。
バカはハマる。
依存者の99%は非常識な方向にのめり込む。
最後は消える。
俺の知り合いでもガンコロと上手く付き合えている人間は2人しかいない。
俺も経験がないとは言えない。
しかし根っから不真面目かつM気質ではない為、全くハマらなかった。
余談だが、シャブ中の言うサンキストはブランド名ではない。
黄金の三角地帯から密輸される際に溶かされる液体のことだ。
話を元に戻す。
例の仕事をこなした俺は、移転した先のタトゥースタジオのインターフォンを押す。
「お疲れ様です。この度はお世話になります」
封筒にピン札を3枚。
約束通りの金額で任せると貸しを作る。
関係性を築けていないかつ相手の手の内が分からない。
その状態で相手の風下に立つ訳にはいかない。
利用するのは相手を理解してからで良い。
「ねえ!文字だけって言われたけどさ!これかっこいいから彫らない?多めにもらってるから6時間付き合うよ!」
頼んだのは漢字のみ。
目の下をくまだらけにして背中一面の狼のデザインを見せてきた。
どの道背中は埋めるつもりだった。
任せることにした。
「いいですよ。よろしくお願いします。」
途中タバコ休憩を挟みつつ彫り始める。
その日は当たり障りのない世間話をしつつ、背中の半分ほどが埋まった。
大きな範囲を彫ると熱が出る。
背中が熱い。その日は冷たいシャワーを浴び、横向きになり眠った。


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