非常識人 第十五話 カケアイ〜前編
朝の6時。
ネクタイを締め、俺はジャケットを羽織る。
今日は掛け合いだ。
相手は某光通信会社代理店の社長。
2年ほど前に後輩を詐欺被害に遭わせた外道相手である。
言葉一つ間違えれば恐喝で逮捕される。
だが被害金プラスアルファが回収出来れば決してバカにはできない儲けになる。
全ては自分の手腕一つ、という訳だ。
待ち合わせ場所は赤坂のカフェ。
どちらの土俵でも無いフェアな場所。
待ち合わせ時間は午後の3時だ。
午前10時半には俺は待ち合わせ場所で被害者である後輩と待機していた。
先方と副社長の分のコーヒーも注文。
もちろんホット。
奢ってあげた、という貸しを作るプラス待たせた負い目を着せられる。
冷めた分=俺達を待たせてしまった時間。
1,000円弱など安い経費だ。
後出しジャンケン。
掛け合いの基本だと思う。
敵対する相手がどう出るのかによって対応を変える。
どちらが先に喧嘩を仕掛けたのか、正しい間違いは敵対関係にある限り関係が無い。
とにかく相手の非を作る事のみに集中する。
逆に万が一こちらが何かしらミスを犯せば相手に指摘されるよりも先に謝る。
「謝ってるのに責めたということは喧嘩を売っていると捉えるよ?」と責めることが可能になるからだ。
一言に要約する。第三者目線で相手が悪いことにすれば良い。それだけだ。
午後2時半。俺は社長に電話を掛ける。
「おい!約束の30分前集合が基本だろうが!社長はそんなに偉いのか?おうこら。早く来いや!」
実際に待機している訳だから演技にも熱が入る。イライラしてるのは事実だ。
10分後。
ベンチャー企業特有のオフィスカジュアルファッションで2人がカフェに入って来た。


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