非常識人 第九話 階段
生きることは天国への階段を登る人達を横目に、地獄への階段を駆け降りていく事だ。
当時の俺の人生観だ。
泡銭とイリーガル。建前を通すための筋道。身内すらしない信用。愛のない愛の言葉。金は追えば手に入るが追い過ぎると札にもサツにも追われる。
金は本質的には嫌いなのかもしれない。
信用を形にした存在であるにも関わらずそれ自体が権力を持ち過ぎたことで、金自体が目的となってしまう人が多い。
ただの紙切れに人は簡単に使われる。
だからこそ俺は信用を大事にした。嘘はつかない。ネタを頼まれてもプッシャーではないので1円も載せない。約束は守る。頼まれたら大体の問題は無理を押し通してでも解決させる。ただそうやって積み上げた信用は上限が来ればジェンガの如く換金する。
本当の仲間内に名前を付けたのもそんな日々に嫌気が差した頃だった。
反省も後悔も無い。
登ることは苦痛を伴うが、下る事は容易い。
ただし多くのケースで報いは受ける。
受けなくとも受け入れる覚悟は必要になる。
トラブル、暴力、懲役。最悪の場合は死。
3度目の逮捕から刑務所に入るまでの約4年。俺は階段を駆け降りていた。


コメント