ヒエロニムスと戦いながら更新です。
そう言えばなんですが、バンドイベントの曲にすごくハマりました。
あれは……良いものです。
それはそうと、本編をどうぞ
……やはり美味いな。
ズルズルと麺を啜りつつ、俺はそんな感想を呟いていた。
現在会議が終わり、また昼飯として柴関ラーメンを食べに来ていた。
……今回は前のような誘拐はなかったが、自室でドッグフードを摘もうとしたところを奥空と十六夜に掴まれ、連行されるような形で連れてこられた。
確かに美味くはあるし腹持ちもいいのだが……
いかんせん、未だあと五年はもつ量のドッグフードの在庫をPip-Boyに抱えているのだ。
あの世界の食べ物らしく賞味期限も消費期限も消失しているが、それにしてもこの量は早めに消費しておきたくはある。
捨てようにも捨てきれぬゆえ、食べて消費するしかないのだ。
それはそうと、こうして来た以上はこのラーメンを楽しむこととしている。
「"……ねぇ、セイジさん。"」
「ん……?なんだ?」
ラーメンを半ばほどまで食べた頃。
カウンター席で俺の隣に座っていた〇〇から声をかけられた。
「"貴方は何を考えてるの?"」
「……それはどういう意図で聞いている?」
「"文字通りの意味だよ。……もっと詳細に言うなら、「生徒たちに何をさせようとしている」んだい?"」
……なるほどな。
そんなことだったか。
「さすがに詳細は守秘義務もあるから言えんが……そうだな。」
俺は一口スープを飲み込み、〇〇の方へと視線を向けた。
「少なくとも、このキヴォトスが学園都市として正常に運用されるように体制の構築や状況の改善を行うのが俺の仕事……それが俺の目的だ。」
そこまで言いきると、また麺を掴んで啜りだす。
「"……そのためなら、貴方は生徒に……"」
「勘違いするな。」
一気に残りの麺を食べきり、スープまで飲み干して〇〇の目に視線を合わせる。
「あくまで、俺は自己防衛や他だと手が回しづらい問題の解決にしか武力は使わん。やたらめったらに振り回したところで後の始末が面倒になるだけだからな。」
「"そういうことじゃ……!!"」
「なら、あれか?お前は生徒の自主性だけに任せるつもりか?」
食べ終わった丼碗に箸を置き、水に口をつけながら未だに後ろのテーブル席で食べているアビドス生たちに視線を向ける。
「〇〇。確かに自主的に考えさせて成長を促すというのは悪くはない。むしろ、正常ではあるだろうな。」
「だが、それは最低限の倫理観や道徳……それに適切に間違いを正せる指導者が充分にいることで初めて可能な手法だ。」
「"貴方は……君は生徒達が間違っているとッ……!?"」
「現実を見ろ、この夢想者が。」
「"痛ぁッ!?"」
俺は〇〇の脳天にめがけて手刀を落とす。
もちろん、かなり加減した上でだが。
「むしろ、間違ってない場所のほうが少ないのがこのキヴォトスの有り様だ。」
俺はコップの水を飲み干して机に置く。
「……ここの政治も、学校の運営も……全ては学ぶ立場である生徒に……子供に押し付けられている。」
「学校の教師もロボットによる自動化に、BDのみによる知識だけの教育しか施さないカリキュラム。」
「そして……大人としてのプログラムを施されているロボットの市民たちは半数以上がろくでなしな上に、獣人種も比較的まともな奴が多いとは言え子供たちを正しく導ける人材がほとんどいない。」
「言ってしまえば、ここは生徒たちのための場所と言いながら、その子供たちに大きく負担をかけている歪な場所だ。」
「"それは……確かにそうだけど……。"」
「その上、政治だとかにかかわる生徒に対して適切な教育を施したりしていないばかりか、それ以外の生徒の倫理的な教育もほぼ無いような事実上の無法地帯……。」
「少なくとも、学園都市と言いながらもその内情は『不健全』の一言に尽きる。」
「生徒もこの場所の在り方も……多少殴り飛ばしてでも、、正道に向かって歩めるようにするのが俺たちの仕事……俺たちがやるべきことだろう?」
「"……そう、なんですかね……?"」
俺の言葉に対し、〇〇は多少思うことがあるかのように顔をうつむかせる。
「"私が……僕が学んできたものってなんなんでしょうね……?"」
ポツリ、ポツリと〇〇は語りだす。
「"僕は……優しくあれと親や恩師の人たちに教えられてきたんです。"」
「"暴力はいけない。特に、大人が子供にそれを振るうことはもっといけないことだとも教わった。"」
「"それに……どんな事があっても、大人は子供を信じてあげないといけないとも教わってました。"」
「"その子の人生を大人の都合で捻じ曲げる事は、その子の成長を……その子の幸福を否定してしまうこと。"」
「"それは、その子自身を否定して傷をつける過ちだ。それが、僕が今までに教わって……僕が恩師や両親から受け継いだ教えでした。"」
「"……セイジさん。どうして……どうしてその優しさが間違いになってしまうんでしょうか?"」
……やはり、というべきか。
こいつはあまりにも育ちが良すぎる。
人心の掌握や人を導く才こそあるが……
「……その考えが間違い、とはなりきらんな。」
「"それって……"」
「だが、甘やかすだけでは人は成長できん。」
一つ、俺はあの言葉を思い浮かべた。
「War,war never changes.」
「"……?それって……"」
「英語で「戦争は何も変わらない」という意味の言葉だが……もう一つ、この言葉には意味がある。」
「人は過ちを繰り返す」
「人は……人類は歴史上何度も過ちを繰り返し続けている。」
「この言葉は、そんな人類を表す言葉だ。」
「……この言葉にはもう一つ、そんな人類を表す意味が込められている」
「人は過ちを繰り返すが……それでも進むからこそ人なのだ」
「"過ちを、繰り返して……それでも進む。"」
「進むためには教訓が必要だ。……俺たちは、その教訓を与える為に生徒たちに指導を施す必要がある。」
「"……君とはやっぱり、考え方が合わないね。"」
「だろうな。指導の加減は俺とお前では大きく異なる。」
飴と鞭、というのがあるが……
この場合俺が鞭で、飴はコイツだろう。
「甘やかすな、とは言わんが……程々にしておくことだな。」
「"……肝に銘じるよ。"」
そう言い切り、〇〇はまだ少し残っているラーメンに手をつけ直した。
――ガラガラ
「あ、あのう……。」
「いらっしゃいませ!何名様でしょうか?」
「……こ、ここで一番安いメニューって……」
……ふむ?
どうやら、他の客が来たようだ……ん?
ふと、入り口の方に視線を送ってその客をみたところ、何か脳に引っかかりを覚えた。
おそらくゲヘナ学園の物と思われる制服を着たオドオドとした様子の少女………。
確か、あの生徒は……
――ガラガラ
「えへへ、やっと600円以下のメニューが見つかった!」
「ふふ、何事にも解決策はあるのよ。全て想定内だわ。」
「はぁ…。」
その後、入ってきた三人の生徒達。
彼女たちの姿を確認したその時、頭の中に叩き込んでいた指名手配者リストの名簿に該当者がいるのに気がついた。
特に、赤い髪に特徴的な角………そしてコートを肩にかけるように羽織ったその少女……。
そうだ、思い出した。
……ゲヘナ学園にて校則を違反して起業し、各地で様々な小規模の問題行動を引き起こしていることが目撃されている同業者……
『便利屋68』
準不良集団として指名手配されている生徒達。
事態は一層、なにやらきな臭い物が漂い始めていた。
いかがでしたか?
まぁ、彼がほぼ同業者みたいなものである便利屋を知らないわけもなく……。
一体これからどうなることやら。
それでは、また次の話をお楽しみに。