今回の話では彼の過去……
アパラチアに来る前の事にも少し触れます。
これは私の持論なのですが……普通の日本人がウェイストランドに来たところでまともに生きられるのでしょうか?
肉体はまだしも、その精神については適応が難しいような気がします。
まぁ、ウェイストランドのことをよく知る我々なら何とかなるのかもしれませんがね(慢心)
そんなわけで本編をどうぞ
ズルズル、ズズッ……
「"美味い!!美味いよォォォッ!!"」
「泣くほど喜びながら食べる人は初めて見たねぇ〜。」
「ん、すごく美味しそうに食べてる。」
現在、出されたラーメンを泣きながら歓喜し啜っているのは〇〇。
ほんとに目尻に涙を溜めながら一心不乱にラーメンを食べ、呼吸を入れる都度美味い美味いと叫び続けている。
そんな様子を温かく見守る生徒たちも各々ラーメンを啜り、〇〇ほどではないとはいえ美味しく食べている様子を見せている。
厨房の方からは店主……確か柴大将と呼ばれていた獣人が、腕を組みながらその光景を見守っていた。
「……セイジ先生?」
周囲の様子を観察していると、奥空が少しドスの効いた声で呼びかけてくる。
未だ自分に出されたラーメンに手を付けていないのを咎めているのだろう。
……あまり気は乗らないが、こうなった以上はやむをえまい。
久方ぶりに「……頂きます。」と食前の挨拶を唱え、箸で掴んだ麺を口へと運ぶ。
……それは遠い過去の思い出。
あの人に拾われた数日後の話だ。
「よぉし、お前たち!今日は俺の奢りだ!遠慮なく喰いやがれ!!」
「「「押忍!!ごっつぁんです!!」」」
「ほら、てめぇも喰いな!」
「…………。」
厳つい顔の男たちによって店の半分を占拠された地元に根付いたラーメン屋。
一際豪快に笑う男の横には、小学校低学年程の幼い少年の姿があった。
だがその少年の目は昏く、ただ無機質に目の前にある料理へと視線を落としていた。
「親父、そんな怖えぇ顔で言ってもガキはビビるだけですぜ。」
「うるせぇ!顔が怖えぇのはてめぇもだろうが!」
ガハハとその場に笑いが起きる。
それには男たちだけではなく、厨房にいた店主や店員の物も混じっていた。
「安心しな。それはてめぇの分の飯だ。」
「毒もなけりゃぁ遠慮するような物もねぇ。とりあえず腹に入れときな。」
そう優しく声をかけてくる男たちの声が聞こえているのか否なのか。
少年は全く反応を返さない。
そんな少年の頭へと、隣で豪快に笑っていた男の手が乗る。
「そいつの言う通りだ。ガキが遠慮してんじゃねぇよ。」
ポン、ポンと軽く頭を叩いてみせる男の声に反応してか……
少年は置かれていた箸を手に取り、使い慣れない様子ながらも麺を一掴み取り上げた。
そして、そのまま口へと……
「……熱い。」
入れようとしたが、冷ましていなかった故に舌に触れた途端にその熱を感じて口から一旦離した。
「ハハッ、坊主。こいつはこうやって食うんだ。」
軽く笑いながらも男は少年に手本を見せるかのように麺を掴み、ふぅふぅと息を吹きかけて冷ましてからズルズルと豪快に啜り上げた。
美味そうに食べる男を見習い、少年も掴んだ麺を息を吹きかけて口へと運んだ。
瞬間……
「……ッ!?」
少年は驚愕に満ちた顔を浮かべた。
それは、今まで口にしたことがない物。
ただ生きるのに必要なエネルギーを取るためであった食事という行為において、今まで知ることがなかった物だった。
「……ッ。」
気づけば、少年の目は涙で滲んでいた。
目を潤すこの水がなんなのか、今の少年には理解が出来ない。
「……安心しな。もうあんなところにいなくていいんだ。」
「お前はもう、俺たちの家族だからな」
「……せい……セイ…せん…い!!!」
「セイジ先生!!」
ふと、意識が引き戻された。
気づけば、肩を誰かが掴んでいる。
そちらを見ると、奥空が俺の肩を掴みながら揺らしていた。
「先生、大丈夫ですか?食べた途端に固まっていらっしゃいましたけど……」
「……あぁ、すまない。少し思い出すことがあってな。」
十六夜からの問いかけにそう答えつつ、手元のラーメンへと意識を戻した。
再び箸で麺を掴むと……あの時のように息を吹きかけて口へと運ぶ。
「……………美味いな。」
思い出の味とは全く違う。
だが、それでもこの暖かさや味わい深さはよく似ている。
涙なんてものははもうとっくに枯れてしまったが……
「本当に……美味い。」
かつての恩人達の顔が浮かび、泣きたくなる気持ちが溢れるようであった。
「まいど!!また来てくれよ!」
「「「"ごちそうさまでした~!!"」」」
「……ごちそうさん。」
ラーメンを食べ終わり、支払いまで済ませた俺たちは店を出ようとしている。
十六夜が支払おうとしていたが、小鳥遊の一声もあって俺たち先生が……
まぁ、〇〇はそこまで金をもっていなかったこともあって俺が全額奢る形になったが。
対策委員会と〇〇が先にドライブボットに乗り込み、俺も乗ろうとしたところで……
ふと妙な違和感を感じる。
視線、だろうか?
狙いは俺たちではないようだが……
俺の嗅覚のようなものが、それが何らかの悪意によるものだと感じ取る。
「先生?どうしましたか?」
先に乗り込んでいた奥空が、ドライブボットのドアの前で動き止めた俺へと声をかけてくる。
「……すまないが先に帰っておけ。」
そう車内の奴らに伝え、ドライブボットのドアを閉めた。
「"え…?セイジさん?"」
「少々、急用ができた。〇〇、生徒達の方は頼んだ。」
〇〇へとそれだけを伝え、ドライブボットに発進を指示した。
ドライブボットは俺のオーダーを聞き取り、対策委員と〇〇を乗せて帰って行った。
「ん、どうしたの?」
……あぁ、そうだった。
こいつは自転車に乗ってきた故にあれに乗ってなかった。
「砂狼、お前も先に……」
そう言って帰そうとしたが、ふとそこで思いとどめる。
俺一人でもどうにかはなるだろうが、ここは……
「……砂狼、すまないが俺の急用に付き合ってくれ。」
「……急用?何かあるの?」
「まぁ、そうだな……」
「とりあえず、「狩り」とだけ言っておこうか。」
いかがでしたか?
さて、何を狩るつもりなのでしょうか?
まぁブルアカやってる方々ならもうおわかりでしょう。
悲しいけど、彼先生になる以前はプロの傭兵なのよね()
そんなわけで、また次の話をお楽しみに。