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ルーブル美術館、二重スキャンダルの余波——大胆な窃盗と物議を醸す資金運用

2025.10.22
フランス美術館

世界一有名な美術館で、フランスでもっとも高価な宝石が盗まれた。
犯行はわずか7分。
ルーブルで起きた大胆な盗難劇は、まるでルパンの再来だと話題になった。

実は、盗まれたとされる9点の宝石のうち、私は2点を偶然2022年に撮影していた。あのサロンの煌びやかで厳かな雰囲気を思い出すと、ただ信じられないという思いしかない。
ガラス一枚で遮られたとてつもない資産価値のある宝石たちを間近で見たとき、現実と非現実のはざまにいるような感覚だったのを覚えている。

 

2022年に撮影した展示中の宝石。今回盗まれた盗品の一部と報道。

 

けれど事件は、思わぬ方向へと波紋を広げた。
盗難の直後、一部メディアが「館長の執務エリアに約50万ユーロをかけて食堂とキッチンが整備されていた」と報じたのだ。
「セキュリティーには予算が足りなかったのに、キッチンには?」
そんな皮肉まじりの声がSNSで飛び交った。
一般公開されない空間への投資であったことも、批判の的となった。

今回の事件が起きたガレリア・ダポロン(アポロンのギャラリー)

 

しかもこの出来事は、エマニュエル・マクロン大統領が
ルーブルの大規模改修計画(2026年開始予定)を発表した直後に起きた。
老朽化や混雑に悩まされてきた美術館にとって、ようやくの再出発の矢先。それだけに、タイミングの皮肉さが際立っている。

確かに、フランスでは今、財政赤字や政治の混乱が続き、国民の不満が高まっている。そこに国の誇りである美術館が盗難被害に遭ったのだから、「世界に恥をさらした」と嘆く人も少なくない。

 

館内憩いの広場

 

フランスらしいのは、事件が単なる窃盗にとどまらず、文化と現実、理想と矛盾、そして“美をどう守るか”という問いを映し出してしまったことだ。美術館は美の殿堂であると同時に、人間の弱さや迷いが交差する場所でもあるように感じる。

早く事件が解決し、あの宝石たちが再び人々の前に戻る日を願っている。けれどそのとき、私はきっと思い出すだろう。
美とは、ただ鑑賞するものではなく、問いかけてくる存在なのだということを。

 

志賀良子
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フランス在住18年。 南仏プロヴァンスでの生活を経て、現在はスイス国境に近い東フランス・フランシュ=コンテ地方で、フランス人の夫と一児の息子と暮らしています。 「起業してみたい」という思いから2017年に現地で法人を設立し、フランス大手通販会社La Redoute(ラルドゥート)の日本正規代理店として7年間運営。 その後、日本の商社でリモート勤務し、フランスにいながらカナダやアフリカ圏の営業を担当しました。 内向的な自分を少し変えたくて、人と向き合う仕事を選んだりと試行錯誤の連続ですが、基本的にはあまり考えすぎず行動するタイプです。 現在は、翻訳と営業支援のフリーランスとして活動中。 フランス国内で3度の引っ越しを経験し、どこにいても自立して働ける環境づくりの大切さを実感。 オンラインショップ運営やリモートワークを通じて、柔軟な働き方を模索しています。 趣味は旅と自然の中を歩くこと。 Instagramでは、フランスの日常と文化を発信しています。
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