日銀が今月の地域経済報告(さくらリポート)を公表した。全国9地域のうち、北海道で景気判断を引き下げた。その他8地域の判断は据え置いた。

 日銀が四半期ごとに発表する地域経済報告は、日銀の各支店が地域企業へのヒアリングなどで収集した情報を基に、地域ごとの経済や金融情勢をまとめたものだ。報告書の表紙の色が淡いピンクであることから、「さくらリポート」とも呼ばれている。

 なお、米国の連邦準備制度理事会が発行する地区連邦準備銀行景況報告は、ベージュ色の表紙からベージュブックと呼ばれる。その主な特徴として、統計データだけでなく、企業経営者への直接のヒアリングによるミクロ調査も重要視されている。

 今回の地域景気判断で、北海道を除く地域の判断を据え置き、「緩やかに回復」または「持ち直し」の基調が続いているとしているが、関税交渉の進展による不確実性の低下を指摘する声が上がり、先行きへの懸念も根強い。

 各地の企業の声を取り上げると、「米国における自動車需要の減少を懸念しているが、現時点では、現地の消費者の新車購入意欲は強く、当社輸出への悪影響は生じていない(輸送用機械)」というものがある。

 一方、「米国の関税引き上げを見越して8月までに建機を駆け込みで輸出し、販売在庫を積み増した。在庫が尽きる年明け以降に値上げを検討(生産用機械)」「販売数量への悪影響が懸念されるものの、日米間で合意された関税率を前提に、先行き米国向け製品の値上げを行う方針(輸送用機械)」との指摘がある。今後輸出で値上げしていくので、その影響がどうなるのだろうか。

 また、「追加関税によるコスト増加分は当社製品の納入先に負担を求めているが、需要への影響は限定的で、輸出は基調として増加している(同)」と追加関税は輸出への影響が軽微との声もあれば、「追加関税によるコスト増加分を販売価格へ転嫁したところ、北米販売が減少しており、輸出にもその影響が生じている(同)」との懸念も出てきている。

 日銀は、地域の声をどのように聞いていくのだろうか。本コラムでも再三指摘しているが、インフレ目標という枠組みの金融政策において、食品とエネルギーを除く、いわゆる国際版コア指数では、インフレ率は2%にも達していないので、利上げの環境ではない。

(たかはし・よういち=嘉悦大教授)

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