高市早苗氏が自民党新総裁に選ばれたのが、今月4日。前日の日経平均株価終値は4万5769円50銭。その後、うなぎのぼりに株式市場は上がり、21日には取引時間中に4万9945円95銭と、5万円まで一歩手前の値を付けた。さすが、これだけ高くなると、利益確定売りが出て値を下げるが、強い相場はそれをこなしていく。

 株式市場全体では、10月末に予定されていた利上げ観測が遠のき、株価の押し上げになっている。

 特に上げているのが核融合や防衛、宇宙などの「高市銘柄」である。その取引は「高市トレード」といわれている。市場からの成長期待が高かったが、ようやく理解のある本格政権に出くわした。

 岸田文雄政権で、高市氏は科学技術政策や宇宙政策を担当し、23年には日本初となる核融合の国家戦略と、宇宙安全保障構想をまとめあげた。さらに、「宇宙戦略基金」が同年に立ち上がり、基金は10年間で1兆円の規模となる見通しである。

 高市銘柄は安全保障・防衛と密接に関係している。事業継続には巨額な資金や政府支援金が必要である。

 そもそも防衛技術は、官民が使うデュアルユースだ。高い株高を背景として民間がより資金調達が可能となるとともに、政府からの支援があり、両者が相まって安定成長していくのが防衛関連である。

 先日のコラムで指摘した通り、日本はこの分野でこれまで世界の先進国とは異なり、抑制的に対応してきた。日本学術会議は軍民デュアルユースの研究を原則として認めてこなかったからだ。その意味で、日本にはまた伸び代が大きい分野といえる。そうした日本の底力に市場が期待しているのではないか。

 世界の流れは、防衛費対国内総生産(GDP)比は5%だ。5%の内訳は、3・5%は武器・装備であるが、1・5%は研究開発やインフラ整備となる。この1・5%の財政支出をすれば、高市トレードは本物になるのではないか。もちろん、防衛費を賄うのは、防衛増税でなく、防衛国債が主となろう。1・5%といえば9兆円であり、それが毎年支出されるので、宇宙戦略基金の10年間で1兆円、1年換算では、0・1兆円の比でない巨額投資になる。

 こう書くと、軍事大国だという批判が出てくるが、先進国の常識はデュアルユースである。防衛費の名目で国費を注ぎ込み、民間投資も誘発するのだ。

 そうした先進国で当たり前の話が、高市政権になってやっと可能になり、それを好感しているのが、高市トレードの実相である。

(たかはし・よういち=嘉悦大教授)

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