死刑求刑「長野4人殺害事件」 市議会議長だった父と母は、なぜ「息子の異変」を見過ごしたのか 専門家が指摘していた「特殊な親子関係」
殺人の疑いで逮捕・送検された青木政憲容疑者(31)は動機について、「(警察官から)撃たれると思った」や「“ぼっち(独りぼっち)”とバカにされてると思った」などと供述しているが、そういった事実はいずれも確認されておらず、「容疑者の一方的な思い込みだった」(取材を続ける民放キー局記者)とみられている。 供述だけでは理解に苦しむ凶行の背景を知るうえで、地元の信濃毎日新聞が両親へのインタビューをもとに、容疑者の「31年の足跡」をたどった記事(5月29日付)が注目を集めている。 「両親によると、容疑者はすでに約10年前の時点で、周囲から“ぼっち”とバカにされることに不満を募らせていたといいます。さらに思い込みの強さや、周囲の視線に過敏に反応する性格がどう形作られたかを窺い知ることのできるエピソードも豊富です」(同) 3人兄弟の長男として生まれた青木容疑者は幼少時は活発な子供だったとされる。母親によると〈幼稚園の園長から「多動児の傾向があるかもしれない」と言われたが、(父親の)正道さんは「子どもはそんなものだろう」と気にもとめなかった〉という。(※以下、〈〉内は信濃毎日新聞・同号より) 専門家は、この時の対応に悔やまれるものがあると話す。
東海大学に進学
「東京家族ラボ」を主宰する家族問題評論家の池内ひろ美氏の指摘だ。 「自分の子供がADHD(注意欠如・多動性障害)の可能性を指摘されたことを意味するため、一般論としてはこの時点で両親は専門医などに相談して、子供との適切な接し方を学ぶ機会を得たはずでした。しかし親の側で“子供はそんなもの”と勝手に結論を出して、問題と真正面から向き合うことを避けるケースは現実に多く、それが子供の成長やコミュニケーション能力の形成にマイナスとなるケースは少なくない。最新の研究では“人格が形成されるのは8歳頃”とされ、幼少期の子供に対しては本来、親は特に注意深く観察する必要があります」 青木容疑者は小学校に進むと、父親の勧めで少年野球を始めるが〈あまり熱心に打ち込むことはなかった〉という。中学では成績が学年上位を誇ったが、高校に入ると〈3年間友達はいなかった〉とされ、笑顔も消えていったという。 長野市内の予備校で1浪した後、青木容疑者は東海大学に進学。実家を出て神奈川県内の寮で新生活をスタートさせるが、周囲に馴染めず、ほどなく都内のアパートでひとり暮らしを始めた。そして、この頃から〈電話しても連絡がつかなくなり、心配した両親が上京して様子を見に行くと、青木容疑者は「大学の仲間からぼっちとばかにされている」と話した〉という。 しかし“異変”はこれだけにとどまらなかった。