製造業の現場で、自動化や省人化などデジタルトランスフォーメーション(DX)により内部不正を減らそうとする動きが広がっている。

 従業員による資材の窃盗被害が深刻な中国。現地の製造工場と付き合いのある日系企業の社員は、工場近くの電信柱に電話番号のみが書かれた不審なメモが張り出されているのを見かけた。それは実は、従業員に持ち出させた資材などを引き取る“買い手”の連絡先。盗品を売りさばく流通路がごく身近な場所にあり、臨時雇いの期間工なども多いことで従業員が容易に窃盗へと手を染める背景にある。

 備品や資材を金網で囲い、管理者を常駐させるなどの対策をとる企業も多いが、手間やコストが負担となる上、管理する社員自身が不正を働く可能性も残る。そうしたなか、管理業務の自動化によって資材窃盗を防ぐ新サービスが好調だ。その一つが、機械部品の製造・販売を行うミスミグループが始めた工場間接材の自販機「MISUMI floow(ミスミフロー)」だ。

工場の間接材などを自動で受発注する自販機型のサービス「MISUMI floow(ミスミフロー)」は、日本でもサービスを開始した
工場の間接材などを自動で受発注する自販機型のサービス「MISUMI floow(ミスミフロー)」は、日本でもサービスを開始した

 ミスミフローはネジや計測器などの工場間接材を管理する自販機型のサービス。重量センサーによって在庫数を把握し、在庫が少なくなると自動的に発注情報が送られミスミが在庫を補充する。商品を引き出すには顔認証によって自販機のロックを解除する必要があり、誰がいつどれだけ商品を取り出したか、といった情報も記録される。

もともとは業務効率化向けサービスだったが…

 もともとミスミフローは受発注や在庫管理といった業務を自動化し、効率化を進めるためのサービスとして開発した。ただ「中国では導入目的のほとんどがガバナンス対策」(ミスミのFactory-MRO企業体執行役員・大内郁浩氏)といい、2020年の事業開始以降、既に約400工場に導入されている。25年4月から日本でも事業展開を始めたが、「ニーズの多くは生産性向上やコストダウンで、ガバナンス強化のために採用する企業はない」(大内氏)という。

 「性善説」に基づいて事業運営がなされる日本。従業員による窃盗被害や横領が、企業にとっての重大リスクだと考えている管理者は現状では多くないかもしれない。だが、企業の不正実態調査を行うKPMGが24年9月に発表したリポートによれば、調査した3年間で従業員による不正が発生した企業は32%にのぼる。そのうち7割を占めるのが「金銭・物品の着服または横流し、経費の不正使用」だ。被害額で見ると、1億円未満の不正のうち、69%が着服や横流し、経費不正によるものだという。

 不正の件数自体も長期的に見ると増加傾向にある。損害規模は小さくとも、不正を見逃してガバナンス不全の状態を続けていれば、そのほころびはいつしか重大な不祥事につながりかねない。

「性弱説」で管理、食品業界が先行

 そうしたなか、「性弱説」に基づいて不正防止に取り組むのが食品業界だ。かつては他の業界と同様に性善説ベースの管理がされることも多かった。ただ、13年にアクリフーズ(現マルハニチロ)の群馬工場で契約社員が冷凍食品に農薬を混入させる事件が起こったことで潮目が変わり、意図的な混入や食品テロを防ぐ「フードディフェンス」の考え方が拡大してきた。

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