ロシアが不法占拠する北方領土の周辺海域で日本を含む各国船舶の「無害通航権」を停止すると通告したことが15日、日本政府関係者への取材で分かった。また、ロシアが色丹島周辺での軍事演習を通告したことも判明。日本政府は外交ルートで厳重に抗議した。ロシアが管轄権の主張を重ね、不法占拠を既成事実化する恐れがあり、政府は警戒を強めている。
外務省によると、ロシアは13日から、不法占拠する色丹島、国後島、歯舞群島、択捉島の周辺や北海道東方の海域などを指定し、ロシア船籍以外の外国軍艦や外国公船の無害通航権を停止すると通告した。政府は、外交ルートで「ロシア側の主張に基づく無害通航権停止は、北方四島に関するわが国の立場に反する」などと抗議した。
ロシアは4月にも、同海域で各国船舶の無害通航権を停止すると通告。国連海洋法条約は、沿岸国の安全を侵害しない限り、他国の領海を自由航行できる無害通航権を認めている。沿岸国は自国の安全保障に不可欠なら無害通航権を一時停止できるが、外務省によるとロシア側から具体的理由の説明はない。
さらに、ロシアが10日から来月1日まで、色丹島北方の複数区域で射撃演習を行うと通告したことも分かった。政府は「北方四島における軍備強化の動きはわが国の立場と相いれず、受け入れられない」と抗議した。
ロシアは終戦の日を含む今年8月と、6~7月にも同様の区域で軍事演習を行うと通告。4月には北海道近海や北方領土を含む広大な区域を演習場所に指定して射撃訓練を行うと通告し、日本政府がそれぞれ抗議していた。