7板志祉生第2984号の5保護廃止決定に対する審査請求理由書

 

   本件の生活保護の廃止理由は、拘置拘留により、と記載あることが認められる。しかし、拘置、拘留は刑の種類であり、あながち、勾留の間違いではないものの、用いた用語に不適切なところがある。

 それはさておくとしても、生活保護を受ける権利は、憲法25条に基づく社会権であり、社会権は、実刑判決を受けて刑の執行中でもなければ、社会的制裁として停止または廃止になることはない。

 生活保護法は、保護の必要がなくなったときは廃止することができると定め、事務的な類型として、起訴された場合を挙げる。

 しかし、起訴されただけではいまだに正式な制裁を受けているわけではないから、社会権を受ける権利を消滅させるものではない。

 現に、国民年金の受給権やそれに付随する受給権は、刑の執行などにより消滅または、受給権が停止となる(東京拘置所、生活の手引き参照)。

 確かに、刑の執行から社会復帰までは、社会から一時的に隔離されて制裁を受けている状態にあるため、社会権は消滅することになる。しかし、起訴されたというだけでは、社会権が消滅しないことは明らかである。

 この点、福祉事務所は、起訴されたから保護の廃止決定をしたというのであるが、単に起訴されただけでは、生活保護を受ける社会権が消滅することに伴って廃止することになるとは考え難い。

 よって本件生活保護廃止決定は外観上一見明白な瑕疵が存在するから取り消されるべきである。

                           以上