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ありふれた職業で世界最強  作者: 厨二好き/白米良
ありふれたアフターストーリーⅡ
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ありふれたアフターⅡ 光輝編 クーネたん


「びぃええええええええっ」


 という、少女の盛大な泣き声が木霊していた。砂漠の乾きが潤うのではと思うほど、いっそ見事な泣きっぷり。艶やかな金髪のツインテールが少女の心情を表しているかのように、へにょりと萎びている。


「殿下! 泣いても無駄ですよ! よりによってこのような危急のときに、荷物の中に忍び込むなど何を考えているのですか! 悪戯で済む問題ではありません!」


 そう言って殿下――モアナの妹だというクーネ・ディ・シェルト・シンクレア王女を叱っているのは、シンクレア王国の戦士団の長――ドーナル・ソルドだ。


 如何にも真面目で厳格そうな面差しに、灰色の短髪。歳は四十代前半といったところか。二メートル近い長身とクマの如き巨体を前にすると、身長が百三十あるかないかくらいのクーネは、まるで豆粒である。


 ドーナルの顔や腕に見える無数の深い傷跡が、彼の纏う覇気や威圧感を更に凶悪にしているので、その前で泣きじゃくるクーネとの構図を客観的に見ると、人食熊と今にも喰われそうな哀れな少女といった様子だ。


 だが、流石は王女というべきか。滝のような涙を流しながらも、クーネは人食熊――もといドーナル戦士長に己の言い分を放つ。


「だってっ、だってお姉ちゃんがっ」

「だってではありません! 毎度毎度、我等の目をどうやってかいくぐっているのか存じませんが、時と場合というものを考えていただきたい! そもそも殿下は――」

「びぃええええええええっ。ごめんなさいぃいいいいっ」

「ぬぅっ、お説教を遮らないでください! いつもいつもそうやって泣いて誤魔化すのですから! 本当に反省されているのですか!」

「うわぁああああああんっ、してますぅううううっ」

「まったく! もう、このようなことはなさらないとお約束ください!」

「うぇええええええんっ。前向きに検討しますぅうううううっ」

「殿下!? なんですか、その微妙な返答は!?」


 ドーナル戦士長が更にヒートアップ。泣き声も更にパワーアップ。


 周囲は戦士達で包囲陣を作るように固められ、誰も彼も厳しい視線を周囲に放って警戒をしているのだが、時折、自分達の長と幼い王女のやり取り「またかぁ」とか「警戒心が削がれるんですけど……」と言いたげな眼差しをチラリと向けている。


「ド、ドーナル? もう、それくらいでいいのではないか? ほら、クーネたんもすごく反省しているようだし。な?」


 オロオロ。そんな様子で説教を続けるドーナル戦士長に声をかけたのは、戦士団が持ってきた新しい瘴石によりどうにか復調したモアナだった。


 恐る恐るといった女王の威厳も感じない有様のモアナに、ギンッと音が鳴りそうな勢いでドーナル戦士長の眼光が飛ぶ。


 思わず、「ひぃ!?」と悲鳴を上げて震え上がったモアナ。


「陛下っ。なにが〝な?〟ですか! 貴女は事の重大さというものを理解されているのですか! そもそも、陛下がいつまで経っても殿下を甘やかすから、このような事態が起きるのではありませんか!」

「べ、別に甘やかしているなんてことは……」

「でしたら、せめて〝クーネたん〟はお止めください! 一体、何度言えば分かって頂けるのですか!」

「うぅ……で、でもなぁ。ドーナル。クーネた――クーネがついてきていることに気が付かなかったというのは、お前達の落ち度でもあるわけだし……」


 そっぽを向いて、女王口調ではあるが拗ねたように唇を尖らせて反論するモアナに、ドーナルの額に浮き上がっている青筋がピクピクと反応する。


「……確かに。どのような理由があろうと、殿下の行動を見逃したのは私の落ち度です。どのような処罰であっても、謹んでお受け致しましょう」

「え? あ、いや、別に処罰なんて大げさ――」

「ですがっ! それはそれ、これはこれです! 事は殿下の身の安全に関わる話なのです! 殿下が悪戯好きのお転婆娘であることは周知の事実! 私の昼食をこっそり激辛にしたり、妻にないことないこと吹き込んだり、そのせいで妻に口をきいて貰えなくなったり、私の剣に可愛らしいデコレーションを勝手にしたり、その程度のことなら笑って済ませられます! ですが、戦場にこっそりついてくるなど! 危機意識の欠如は見逃せません! 我々の言葉だけでなく、陛下も姉として諭さなくてどうしますか!」

「あ、はい。ごめんなさい……」


 いつの間にか泣きじゃくるクーネの隣で、正座しながら説教されている女王様。


 なんだこのカオス……。光輝は呆然と目の前の光景を眺めるしかなかった。


「いつものことなのでお気になさらず。戦士長は陛下や殿下にとって父親も同然の存在なのですよ」

「え?」


 呆けている光輝に、穏やかな声がかけられた。光輝が視線を移せば、そこには三十代前半くらいの焦茶の髪をオールバックにした戦士がいた。


「戦士団副長のオータルと申します。光輝殿、とお呼びしても?」


 筋骨隆々な戦士が多い中で、比較的小柄なオータルが実はナンバー2だったことに少し驚きつつ、光輝は頷いた。


 全身から〝穏やか〟な雰囲気をほわほわと放っているように感じるオータルは、光輝の了承を受けて更にほんわり穏やかに微笑む。


「スペンサー様と共に、幼少の頃から我が子さながらに見守ってきたのです。先代国王夫妻……モアナ様とクーネ様のお父上とお母上が自然に還られてからこの五年は殊更に。モアナ様にとっては剣の師匠でもありますから、遠慮というものも余りありません」


 オータル曰く、モアナとクーネの両親は、五年前に起きた大規模な≪暗き者≫との戦いで亡くなったらしい。


 そのとき、≪暗き者≫を率いていた者が現在の≪黒王≫で、その強さは凄まじく、クーネ以外の王族が総出で戦わなければならなかった。身命を賭しても撤退させることで精一杯だったのだとか。


 モアナとドーナル、そしてスペンサーも重傷を負ったものの辛うじて生き残り、それ以降、モアナとクーネを支えるべく、二人は父親代りとして寄り添ってきた。もともと、二人は先代の信頼も厚く、王女の護衛・指南役として身近であったことからも、モアナとクーネにとっては身内同然ということらしい。


「……そうだったんですか。それなら、モアナ様が妹に甘くなってしまうのも仕方ないですね」


 唯一残った肉親。モアナが妹であるクーネに甘くなるのも当然だろうと、光輝は納得の表情になる。〝たん〟づけも、うん、きっと、しょうがないことなんだ、と。


 そして、物心がつくかどうかという時に家族を亡くしたクーネが、どうやら悪戯好きであることや、こうして姉を心配して戦場についてきてしまったことも、寂しさや姉を失うかもしれない恐怖からくるものとすれば当然のことだろうと。


「いえ、モアナ様の〝妹馬鹿〟は、クーネ様が生まれたときからです」

「え?」

「クーネ様のお転婆ぶりも、先代方が自然に還られる前からです」

「え?」

「宮殿でも王都でも、お二人が幼少の頃から、『シスコン王女様』『神出鬼没のお転婆王女』『二重人格女王様』『いつもニコニコ這い寄る王女クーネたん』『いい加減、ハウムがキレますよ女王様』『お願いですから仕事の邪魔しないでください、王女様』『っていうか、王女様を止めてください女王様』『いい加減、私の武具をデコレーションするのは止めてくださいクーネ様』『ギャァアアアアッツ、王女様!?』など、数々の称号・二つ名を口にされるほどなのです」

「いや、それ称号でも二つ名でもなく、ただの苦情ですよね!? っていうか、最後のはただの悲鳴ですよね!?」


 オブラートに包んで言うなら、家臣や国民にとっても身近でとっても親しまれている王族姉妹のようだ。断じて、問題児とは言うまい。


 光輝のツッコミに、オータルはほんわり笑う。なんとなく、「笑うしかないんだよ?」と言われているような気がしないでもない。このオータルの菩薩様の如き穏やかさは、対女王&王女のために磨かれたのかもしれない。


「さて、そろそろ救援部隊もスペンサー様達と合流できる頃合いでしょう」


 天を仰いで太陽の傾きから時間の経過を確認したオータル。モアナ達と合流したあと、戦士団の一部隊はそのままスペンサー達の救援に向かったのだ。


 あまりのんびりとしてスペンサー達に追いつかれたら、「何をちんたらしている! さっさと陛下を王都にお連れせんか!」とドヤされる、とオータルは苦笑いを見せた。


 モアナの様子を見れば瘴気の影響はほぼなくなったようであるし、十分に回復したようであるから、戦士団の護衛のもと、モアナだけでも早く安全圏である王都に帰還させるべきなのである。


 というわけで、と言いたげな雰囲気で、オータルは、


「光輝殿、ご迷惑でなければ戦士長に声をかけていただいてよろしいですか?」


 光輝に対応をお願いした。ほんわりと微笑みながら。


 光輝は悟った。この人、最初からこのカオスな状況の仲裁を自分に委ねるために近づいてきたな、と。穏やか系の人だけど、他人任せにできることは結構強引に他人任せにしちゃう系の人だ、と。


 ちらりとモアナ達の方を見てみれば説教は未だ続いている。クーネの泣き声に釣られたのか、モアナまで涙目になっている。父親代りに戦士長の説教は中々堪えるらしい。


 溜息を吐きつつ「行ってきます」と返答した光輝は、恐る恐ると声をかけた。


「あの、モアナ様も回復したようですし、そろそろ出発しませんか?」

「んんっ?」


 ギンッと眼光が飛んできた。光輝は思わずビクッとした。何となく、八重樫道場で稽古しているときの鷲三(雫の祖父)を思い出す。


 もしや、自分にも説教が飛んでくるのか……と身構えた光輝だったが、


「おおっ、これは勇者殿。碌な挨拶もせずに失礼しました。改めてまして、戦士長のドーナル・ソルドと申します。モアナ陛下と戦友達を救って頂いたこと、幾重にも感謝致します」


 心臓の位置に右の拳をドンッと充てて、嘘偽りのない感謝を宿した眼差しを向けるドーナル。王族姉妹のあれこれにヒートアップしなければ、元は穏やかな人なのかもしれない。


「天之河光輝と言います。光輝と呼んでください。感謝の言葉なら既に十分頂いたので、どうかそれくらいで。それより、そろそろ出発しませんか? 回復したとはいえ、モアナ様も早めに休まれた方がいいでしょうし、妹君も早く王都へ帰還していただいた方がいいでしょうし」

「確かに。お見苦しいところを見せてしまいましたな。陛下と殿下のことになると熱くなってしまうのは私の悪癖なのです」


 そう言ってバツが悪そうに頭を掻くドーナル。チラリとモアナ達を振り返った彼の眼差しには深い愛情が宿っているようで、確かにそれは、家臣が主に向けるものというより、父親が娘に向けるもののように感じる。


「お姉ちゃん、あの人が勇者さまですか? すごいですね! 初対面でお説教中のドーナルを止めに来るなんて、すごく勇者ですね! クーネは、すごく勇者だと思います!」


 一瞬で涙が引っ込み、満面の笑顔で勇者を定義づけたクーネたん。勇者とは、戦士長のお説教を止められる者を言うらしい。というか、先程までの大泣きはどこにいったのか……


 隣のモアナが、「流石クーネたん。目の付け所が違うわね。お姉ちゃん感心しちゃったわ!」と、お遊戯会の発表で一喜一憂する親馬鹿みたいなテンションで称賛している。


 ギンッと眼光を飛ばすドーナルだったが、お説教は終わったものと判断したのか、どこ吹く風とツインテールを揺らしながら、クーネが光輝の前にトトトンッと軽い足取りでやってくる。


 そして、姉と同じ翡翠の瞳でジッと光輝を見上げると――にへっと笑って、


「はじめまして! 王女のような何かをやってます、クーネ・ディ・シェルト・シンクレアです! お姉ちゃん達を助けてくれてありがとうございました!」


 そう言って右手で右胸の辺りをトンッと叩いた。


 どうやらそれが、頭を下げる・敬礼するといった仕草のようだ。


 光輝は、後でその辺の仕草などについても聞いておかなきゃなぁと思いつつも、取り敢えず、


「王女のような何かってなに!?」


 姉妹揃って王族であることに抵抗でもあるのだろうか? そんなことを思いつつ思わずツッコミを入れてしまうのだった。





 途中、「陛下ぁあああっ」と絶叫を上げながら救援部隊を置き去りにする勢いで追いついてきたスペンサー達と合流に成功した光輝達。。


 スペンサーの「何故ここに殿下がいらっしゃる!?」という怒声と「びぇえええええんっ、お姉ちゃん愛が迸ったんですぅうううう!」というクーネの泣き声、妹の前だと口調を保てない女王様への光輝の生温かい眼差し、それを受けて視線を泳がせまくる女王様、「緊張感を削がないでくれよ~」という戦士達の無言の訴えが錯綜し、より混沌とした空気の中駆けること数時間。


 遂にそれは見えてきた。


 大きなオアシスのど真ん中にそびえ立つ白亜の宮殿。尖塔が左右対称にいくつも並び、その中央に一際大きな四角錐形の建物がある。


 陽の光を反射して煌めく白亜の宮殿からは四方に石造りの橋が延びており、オアシスの外縁部には宮殿と同じ白亜の建物が無数に並んでいる。


 そして、その外縁部にある都の更に外縁を幅十メートルくらいの川がドーナツ状に囲んでいて、どこかに流れ出していくでもなく、まるで流れるプールのように循環しているようだった。


 都の中にも編み目のように水路があるようで、砂漠のど真ん中にもかかわらずいくつもの小舟が行き来しているのが見える。


――砂漠の中の水の都


 それが最前線の都――シンクレア王国の王都だった。


「すごい……綺麗だ……」


 小高い砂丘の上から王都を眺める光輝の口から、無意識に称賛の言葉が漏れ出した。自然が失われた最前線の都という話だったことから、光輝は、もっと無骨で荒廃した雰囲気の要塞のような都をイメージしていたのである。


「ふふ、そうでしょう?――ごほんっ、そうだろう?」

「あの、モアナ様。素の口調でも構いませんよ?」

「光輝が何を言っているのかちょっと分からないな」


 光輝の優しい眼差しに、モアナはスッと視線を逸らした。男口調が板に付いてしまって~という言葉は、実は自分の心がけに対する甘い評価だったらしい。


 王都に入るために歩みを再開しつつ、モアナは誤魔化すように少し早口で話し出した。


「光輝。あのオアシスだがな、ただ美しいだけでなく、実は≪暗き者≫を寄せ付けない結界でもあるんだ」

「結界、ですか?」


 どうだ、凄いだろう? と再びドヤ顔するモアナ。


「うむ。実はな、光輝。シンクレア王国の王族には特別な力があるんだ。正しい祈願や誓願があれば、誰でも行使できる普通の恩恵術とは異なり、王家の血筋に連なる者だけが行使できる恩恵術――天恵術。王族一人につき一つ。それぞれ固有の特殊で強力な術だ」

「はいはいはいっ! クーネはにょきにょきの術が使えます!」


 姉そっくりのドヤ顔をしながらクーネが体をうねうねとくねらせる。恩恵術の上位互換たる天恵術――にょきにょきの術。果たして、それは……


「クーネたん! 可愛いわ、クーネたん! 一応、正式名称は≪再生≫だけど、今度から≪にょきにょきの術≫に変えて――」

「陛下?」

「なんでもないわ――ごほんっ、なんでもない」


 ドーナルのギン眼光を食らって正気に戻ったモアナによると、クーネの天恵術≪再生≫は、恩恵力の失われた場所に再び恩恵力を宿すことができる術らしい。砂漠化した土地に自然を取り戻すことができるのだ。確かに凄まじい力である。


 また、モアナの天恵術は≪加護≫といい、人々や自然、物に対して瘴気に侵されない恩恵力の光を纏わせることができるらしい。この≪加護≫を受けた対象は潜在的な力を一時的に活性化され、強化される。


「シンクレア王国のオアシスは、遙かご先祖様が自らの命と引き替えに行使した天恵術が宿っているんだ」

「≪暗き者≫はこの水に触れられない、とか?」

「ああ。正確には、触れることはできるんだが、触れると体内の瘴気まで吸い出されて霧散させられてしまう。ここは恩恵力のない砂漠のど真ん中だ。保有する瘴気まで奪われたら奴等は戦えない。故に、このオアシスは最高の結界なんだ」


 そんな凄まじい効果を持つ術を後世まで残すために命を捨てた当時の王族に、光輝は畏敬の念を抱いた。いったい、どれほどの覚悟と願いを込めたのだろう、と。


 僅かに身震いしつつ、光輝はふと気が付いて尋ねた。


「命と引き替えって、そうすることで効果が上がるってことですか?」

「……そうだ。恩恵術と異なり、天恵術は使いどころが難しい。一度使う度に凄まじい消耗を強いられる。使い過ぎれば命を失う。何事も〝タダで〟というわけにはいかないんだよ」


 おどけるようにそう言ったモアナだったが、光輝は曖昧な笑みを返すことしかできなかった。


 モアナの足下でジッと姉を見上げているクーネが視界に入る。姉妹揃って綺麗な翡翠の瞳とチョコレート色の肌。なのに、髪の色だけが違う。モアナの髪は真っ白だ。それは、白い色の髪というより、まるで元々あった色が抜け落ちてしまったかのような……


 周囲にいる戦士達の中にも白髪はいない。この国の人間の特色というわけではない、ということは明らかだ。


 クーネと異なり、モアナは五年前の戦いに参戦していたという。王族を姉妹以外全員失うという激戦。モアナが身命を賭したのだろうということは想像に難くない。


 年齢的に、五年前なら十代半ばだ。そんな年頃で家族を失い、自らも命を振り絞って戦い、国と妹を守り抜いた――


 光輝の中に言いしれぬ思いが募る。


「勇者さま」


 自分に呼びかける幼い声に、光輝はハッとする。俯いていた顔が声の主の方へ自然と向く。


 いつの間にか、ジッと光輝を見つめていたらしいクーネがニッと笑顔を浮かべた。


「お姉ちゃんはすごいでしょう? クーネはすごいと思います!」


 一片の曇りもない称賛。そして、姉への敬愛。我が事のように胸を張り、これ以上ないほどのドヤ顔を見せるクーネに、光輝は微笑む。


「ええ、モアナ様はすごいです」

「そうでしょう、そうでしょう。おまけに美人でしょう? クーネは美人だと思います!」

「え、えっと、うん。その、凄く綺麗な人だと思いますよ?」


 そうでしょう、そうでしょうと胸を逸らすクーネの隣の、モアナが頬を染めている。光輝に褒められたからというより、自分を称賛してくれる妹が可愛くてしかたない! といった様子だ。鼻息を荒くしつつ、クーネを凝視している。


「勇者さま!」

「あの、クーネ様? 勇者ではなく、光輝と呼んで欲しいのですが……」

「ごめんなさい。勇者さまをお義兄様とは呼べません!」

「誰もそんなこと言ってないですけど!?」

「クーネに認めて欲しくば誠意を見せてもらわんとなぁ、です、勇者さま!」

「だから、俺がモアナ様を狙っているみたいな前提で話すのやめてください!」

「お姉ちゃんを弄んだら、〝ピー〟に激辛香辛料をぶっかけてやるつもりなので! クーネはお姉ちゃんの敵に容赦はしません!」

「女の子が〝ピー〟とか言わない! っていうか、なんて恐ろしいこと!」


 光輝のツッコミが絶好調。ついでに、モアナと周囲の戦士達がギョッと目を剥いた。ドーナルとスペンサーが「殿下に〝ピー〟なんて教えたのはどこのどいつだぁ!?」と怒りの眼差しを巡らせる。


 クーネたん――ちまたで『混沌もたらす者』『出現三秒でカオス』『見かけたら手を出さず戦士団に連絡を!』という共通認識を持たれている王女様。


 もう王都が目の前なのに、混沌と化した空気の中で、揺るぎない(?)眼差しを光輝に向けるクーネたんは、


「ふわふわしてる勇者さま。お姉ちゃんを傷つけたら許しません。クーネは絶対に許しませんからね!」


 笑顔振りまく瞳の奥に、少しの期待と大きな不安を宿して、そんなことを宣言するのだった。


いつも読んでくださりありがとうございます。

感想・意見・誤字脱字報告もありがとうございます。


ありふれた第6巻、買ったよ~とご報告くださった皆さん、ありがとうございました。

手にとってくださった方々に最大の感謝を。

ちなみに、光輝編冒頭に出てきたあの人と、番外編の語り部さんは同一人物ですw

オーバーラップ様のHPの新刊案内から、アンケートに答えると「あとがきのアトガキ」というページにいけることはご存じでしょうか?

毎回、ありふれたの裏話などを載せていたりするのですが、今回は……

「お前、生きてのかよ!?」というツッコミが入りそうな書き下ろしが掲載されています。

よかったらお暇潰しに見に行ってみてください。

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― 新着の感想 ―
濃いなぁ……
別れの間際になって、激辛香辛料をパンツに塗りたくられる光輝を想像した。
[一言] ニャルラトホテプ・・・w
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