現職と夏に因縁、参政党はライバル候補と手をつないだ 宮城県知事選

大山稜

 9日に告示される宮城県知事選(26日投開票)が「荒れ模様」の様相を呈している。6選をめざす現職を取り囲むように、新顔5人が挑む。与野党対決、保守分裂の構図に加え、今夏に因縁が生まれた現職と参政党にとっての決着の舞台にもなりそうだ。

 出馬予定は過去最多の6氏。戦いの中心は無所属現職の村井嘉浩氏(65)、県議の遊佐美由紀氏(62)、前参院議員の和田政宗氏(50)の3氏とみられる。そのほかに立候補を予定しているのは元角田市職員の伊藤修人氏(33)、今年1月の山形県知事選で落選した金山屯氏(85)、元新潟大准教授の古市尚高氏(72)=現職以外は無所属新顔。

 村井氏が出馬の意向を固めたとの報道を受け、出馬を決めた遊佐氏は8期目の県議。自民党県議出身の村井知事とは、議場で度々論戦を交わしてきた県議同期だ。「県民党」を掲げて9月に離党したが、立憲会派の県議などによる有志組織や共産党県委員会の支援を受ける。

 自民出身の村井氏と立憲系の遊佐氏の与野党対決に、夏の参院選比例区で落選した自民党の和田氏が参戦し、保守分裂の要素が加わった。そこに加勢するのが、参院選で躍進した参政党だ。

当初は独自擁立を模索

 「参政党が全国の知事選に関わるモデルケースになる」。仙台市内の街頭で9月27日、応援演説に立った参政の神谷宗幣代表は「グローバリズムの推進から反グローバリズムへの転換。和田さんにターニングポイントを作ってほしい」と隣に並ぶ和田氏に期待を寄せた。

 当初は党員のローレンス綾子氏(55)を知事選に立候補させる方向で調整したが、そのさなかにあった石破茂首相の退陣表明でこの動きにブレーキがかかった。さらに、党内で政策の似通う和田氏とのつぶし合いは避けるべきだとの声もあったとして、方針を転換。神谷代表は和田、ローレンス両氏に公開討論をさせて主張の近さを確認し、和田氏とは政策覚書を締結。推薦はせず、党員に向けても自主投票としたが、「和田氏全面応援」の姿勢は明確だ。神谷氏は選挙期間中も2回は応援に駆けつける予定だ。

 ある自民県議は「かなり前から両者が互いに近づいているという話は聞こえていた。和田さんは保守分裂で現職と戦うのは不利と考え、第三極の力を借りたのだろう」と推し量る。和田氏の背後には自民の元国会議員の存在もちらつくが、県内の自民系議員の多くは村井氏を支援する見通し。

 別の県議も「参政にとっても独自擁立よりリスクが小さく、互いに良いパートナーと踏んだはずだ」とみる。立候補表明の前には、和田氏の元へ出馬要請に訪れる参政党員の姿もあった。

 無所属出馬が共闘の条件で、和田氏は応じる意向。ただ、自民を離党せずに臨むとみられ、冷ややかな視線を送る県連関係者は少なくない。

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水道事業、外国人政策 対現職の旗色鮮明

 過去に参政が知事選で候補者を擁立したのは2023年の大阪府知事選のみ。今回、宮城に照準を合わせたのは、7月の参院選から続く村井氏との因縁が理由だ。

 神谷氏は7月に街頭で、水道事業の運営権を民間に売却した県を「なぜ外資に売った」と批判。村井氏は、売却先の大株主は国内企業なうえ、最終責任を県が持っていることから「誤情報」と抗議した。

 神谷氏は、維持管理を担う下請け会社の議決権を外資系の日本法人が握っていると指摘。「『売った』は正確ではなかったが誤情報とは言えない」と再公営化の主張を続けている。

 両者には、外国人政策をめぐっても隔たりがある。

 外国人材受け入れを推薦してきた村井氏は、宗教上の理由で火葬を望まない外国人を念頭に土葬墓地整備を検討してきたが、「日本人ファースト」を掲げる神谷氏は「移民受け入れを進めようとしたら、首長は続けられないという事例をつくる」と反意を強調していた。

 反対意見はSNS上や県議会でも相次ぎ、担当課には県内外から反対派を中心に2千件以上の意見が届いた。村井氏は9月中旬に「実現は極めて厳しい」と整備検討を白紙撤回した。墓地新設の許可権を持つ市町村長が難色を示したことが理由と説明したが、告示3週間を切ったタイミングで自ら収束に動いた格好となり、選挙対策とみる向きが強い。

 神谷氏と主張を重ねる和田氏は「移民につながる政策。現職が当選したら再び検討を再開する可能性がある」と強調。土葬墓地整備の是非も論戦のテーマにしたい狙いだ。

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この記事を書いた人
大山稜
仙台総局|行政担当
専門・関心分野
気象、防災行政、労働