秋篠宮さまはなぜ「皇太弟」ではなく「皇嗣」になったのか…還暦を控え「皇位継承」へ抱く思いをひも解くと
天皇陛下のご即位と同時に、事実上の皇太子に当たる皇位継承順位第1位の皇嗣になられた秋篠宮さまは来月、60歳の還暦を迎える。ただ高御座(天皇の玉座)に最も近い地位にいる秋篠宮さま本人は、皇位継承の意思をお持ちではないと言われている。
「十二支」と、陰陽五行説に基づく10種類の漢字を意味する「十干《じっかん》」を組み合わせて60年で人生が一周すると考える「干支」。それが一回りして生まれ変わり、人生を再出発するタイミングと言われるこの還暦を迎えるに当たり、秋篠宮さまはその決意が変わることは、果たして絶対にないのだろうか。
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上皇陛下の代弁者
還暦祝いは、中国で敬老思想から生まれた長寿を祝う慣習で、祝賀の催しは10歳刻みで行われていたもの。日本では奈良時代に実施された聖武天皇の40歳の祝賀祭が原型となっている。秋篠宮さまは1965年11月30日に生まれ、月末で齢(よわい)が60となる。
朝日新聞は2019年4月21日の朝刊に、以下のような記事を掲載した。
〈「兄が80歳のとき、私は70代半ば。それからはできないです」
一昨年6月、天皇陛下の退位を実現する特例法が成立した後、秋篠宮さまが皇位継承についてこう語るのを聞いた。当事者として、高齢で即位する難しさを指摘した形だ。〉
宮内庁関係者はこう打ち明ける。
「周囲の職員から、こんな発言を実際に耳にしたという話は聞きませんでしたが、この記事を読んで『やっぱりそうか』という感想を持った者は多かった」
超高齢での即位は、どんなに長寿を全うしても在位期間は限られることから、その度に改元や代替わりを行うのに、多大なコストがかかることは避けられない。
秋篠宮さまは上皇陛下の天皇ご在位中、憲法の第4条で「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ(い)、国政(国の政治)に関する権能(資格や権限)を有しない」と定められているため、政治的な発言が一切できなかった父のご意向を積極的に代弁。国家財政の節約を訴えられてきた。
特に、上皇陛下が自身の陵(墓)の縮小を希望されるなど、国民に過度な経済的負担をかけることを、極度に嫌っておられたことから、生前退位に伴う一大イベントとなった大嘗祭を皇室の私費ではなく、公的な国費を投じて盛大に実施するという政府・宮内庁の方針を批判。この苦言に対して当時宮内庁次長だった西村泰彦長官が記者会見の席で反省の弁を述べている。
その代弁者たる秋篠宮さまはハイコストとなるリスクが高い自身の即位を「よしとはしないだろう」との見方が宮内庁内では根強かったからこそ、「やっぱり」との受け止めが大勢を占めたのだ。宮内庁元幹部も、こう指摘する。
「秋篠宮さまは国費反対の際に『宗教色が強い』と理由を語られましたが、それは政教分離の建前を述べたに過ぎません」
皇嗣と皇太子の差
前出の元幹部が続ける。
「通常は天皇と皇太子、それに内閣総理大臣だけが使用している政府専用機を秋篠宮さまは事実上の皇太子である皇嗣となってからもしばらく使わず、運用コストが安い民間機を外遊に使用していました。これも国民負担の回避が理由です。本音はやはり国民負担を気にされる上皇陛下を慮(おもんぱか)ってのことでしょう」
だからこそ、次の天皇にはなる気がないのだとみられているという。
秋篠宮さまは皇嗣となるに当たり、皇太子の称号を拒否したと伝えられる。皇室典範は「皇嗣たる皇子を皇太子という。皇太子のないときは、皇嗣たる皇孫を皇太孫という」と規定し、「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」と定める。
つまり現在の法律や規則には、皇太子と皇太孫という称号は存在するものの、皇太弟という称号はない。その一方で皇嗣という用語も称号ではなく、法律上の呼称に過ぎない。だが秋篠宮さまは「弟であって子供ではない」として皇太子の称号を忌避。皇嗣が臨時の称号となった経緯がある。
順徳天皇や嵯峨天皇、淳和天皇は兄の皇太弟だった。また、近衛天皇も皇位継承の手続き上は皇太弟だったとされており、安倍政権は皇太弟の称号の採用についても検討したが、現行法上では存在しないため、秋篠宮さまはこれにも難色を示したとされる。一方で皇太子の称号については、やはり断固として拒否。理由は「『あくまでも弟であって兄の子供ではないから』との思いからだったと拝察しています」(前出の宮内庁関係者)。
だが皇室史上、息子ではないのに皇太子となった例はいくつもある。一条天皇や伏見天皇、後桃園天皇らはいとこや甥っ子。また、高倉天皇は六条天皇のいわゆる「オジサン」であった。ましてや後亀山天皇に至っては長慶天皇の、まさに弟だったという事実もある。
「実際、辞書を引いてみても漢字の『子』の文字には子供のほかに男性といった意味もあります。弟が皇太子でも何もおかしくはないのです」(同)
さらに、前出の宮内庁元幹部もこう力説する。
「秋篠宮さまは、男性皇族と言ってもただの『王』ではなく、より天皇に近い『親王』です。歴代天皇の事蹟(事績)や経歴は熟知されています。本来ならば皇太子の称号に異論はないはずなのです」
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