学校内での性犯罪事件が、たびたび報道されています。わが子を被害者にも加害者にもさせないために、保護者はどのような対策をすべきでしょうか? 弁護士であり、二児の母であり、性教育にも詳しい太田啓子さんは、「家庭でも“支配ではない関係性”や、性の多面性を伝える包括的性教育が欠かせない」と言います。そのわけを詳しく聞きました。※前編<教員による性加害、生徒の持ちものに“体液”付着でなぜ「器物損壊罪」になるのか? 弁護士に聞く>から続く
【マンガ】教師による性暴力の実態を描いたマンガ、第1話の試し読みはこちら(全33枚)「生殖」だけではない、包括的な性教育を
──中学生が同じ学校の生徒を盗撮してSNSに投稿するなど、学校内で、被害者も加害者も生徒という性加害事件が相次いでいます。
おそらく、学校内部での処理だけで終わり、警察に届け出もされず報道もされない事件の方が圧倒的に多いと思います。私も、生徒間での性暴力事件に代理人として関わったことがありますが、そのケースも表には出ていません。
──こうした事件を防ぐために、何が必要だとお考えでしょうか。
やはり、まずは包括的な性教育だと思います。
私が過去に被害者代理人として関わった性暴力事件でも、加害者は性についてのきちんとした知識を持っていませんでした。「女の人は嫌と言っても本当は嫌じゃない、喜んでいるんだ」といった、非常に歪んだ認識だったことが記憶に残っています。
また、盗撮などが典型的ですが、「相手の意に反して性的な行為をする」ことで快楽を得るというケースも非常に多いように思います。性加害の多くは性欲だけによるものではなく、相手を支配して優越感のようなものを得ようとする行為だとも言われています。
──どうしてそうなってしまうのでしょう。
何か一つだけの原因とは言えなさそうですよね。人の価値観形成に影響するのは、家庭や学校での教育のほか、日常的に触れるメディアの情報、例えば広告やネットコンテンツ、テレビ、漫画など色々だと思います。本人も「これだ」と特定できないくらいさまざまなものから少しずつ影響を受けている人が多いと思います。そうしたなか、性に関する情報が女性差別に根差していたり偏っていたりしたら、価値観形成も歪んでいきますよね。
だから、これから大人になっていく子どもたちをそうしないために、きちんとした性教育で、正しい知識を身に付けてもらう必要があると強く思います。
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