トランプ「高市氏は素晴らしい」はただの外交辞令ではない…米各紙が「トランプ―高市」の相性に下した評価
■保守系メディアは高市氏の総裁就任を歓迎 保守系メディアはこれとは対照的に、高市氏の登場を「世界的右派回帰の一環」として歓迎している。 ウォール・ストリート・ジャーナルは、「自民党がさらなる右傾化を選んだ」「世界的な保守ポピュリズムのうねりを反映している」と論じたうえで、「移民や観光客の増加による文化的なストレスや、日本という国家のアイデンティティが失われるのではないかという不安」が支持の背景にあると分析した。 記事では、「外国人観光客が奈良で鹿を蹴った」という高市氏の発言を引用し、「受け入れ難い外国文化への反発」がナショナリズム再燃の一因になったと指摘。 さらに、「移民の受け入れ制限は、世界的に知られる極右政治家であるフランスのマリーヌ・ルペン、英国のナイジェル・ファラージ、そしてアメリカのトランプ大統領らと共通する政策」と、明言している。 「高市氏もまた誇り高きナショナリストであり、変化の激しい世界で、日本の文化と経済安全保障の保全を強調している」と述べている。 ■日本が高市氏を選んだのは「トランプ効果」 FOXビジネスは「日本が初の女性首相を選んだのは、“トランプ効果の世界展開”である」とし、アメリカでのポピュリズム台頭と高市現象を重ねて紹介。「サッチャーを敬愛する“鉄の女”」として、高市氏を経済的安定と強い国家の象徴と位置づけた。 高市勝利に市場も敏感に反応し、株高・円安が進行したが、保守メディアはこれを「予測可能なリーダーの誕生」と歓迎している。その背景には、高市氏が安倍元首相の金融・財政政策「アベノミクス」を継承し、景気刺激と円安政策を続けると見られていることがある。 一方でロイター通信は、「サッチャー型の緊縮路線ではなく、財政緩和の継続は財政の持続性を損なう危険な賭けになりかねない」と懸念を示した。
■トランプ大統領の祝意に込められた意味 トランプ前大統領は自身のSNS「Truth Social」で、こう投稿した。 「日本が初の女性首相を選出した。彼女は、知恵と強さを兼ね備えた非常に尊敬される人物である。これは素晴らしいニュース、日本の素晴らしい人々にとって大きな出来事だ」 一見すれば外交辞令的な祝意だが、前出のFoxビジネスはこれを「イデオロギー的な共鳴」と捉えている。 しかし、こうした保守連帯が今後の順風満帆を示すものではないことは、誰もが理解している。 NYタイムズはこう予測する。 「1980年代に2年間アメリカで働いた経験を持つ高市氏は、短期的には安倍元首相と親しかったトランプ大統領との関係を軸に、友好的な協力関係を築こうとするだろう」 ウォール・ストリート・ジャーナルも総裁選時点で「自民党はトランプにアピールする候補を探している」と報道。「政治思想的にトランプに近い可能性がある」として、安倍元首相との関係をその“外交資産”とする見方を示していた。 ただし、多くのメディアは「最大の外交リスクはトランプその人だ」とも指摘する。 関税交渉や通貨政策、防衛費負担など、日米関係の主要課題の多くがトランプ大統領の個人的判断に左右される可能性がある。高市氏にとって、トランプ大統領との最初の会談が早くも試金石となるのは間違いないだろう。 ■「高市早苗」が映し出す、日本の「現在地」 全般的に見て、アメリカメディアの論調には二つの感情が共存している。 ひとつは、ガラスの天井を破ったリーダーへの称賛。 もうひとつは、ナショナリズムと分断の拡大への警戒だ。 サッチャーのように改革を断行できるのか。それともトランプのように、社会の対立を深めてしまうのか。アメリカのメディアは今、高市早苗という存在を通じて日本を観察している。 そしてその視線の奥には、「右傾化か否か」という、自国アメリカへの問いが重なっているようにも見える。 高市早苗という新しいリーダー像は日本の政治を超えて、“トランプ以後”の世界が直面する選択そのものを、映し出しているのかもしれない。 ---------- シェリー めぐみ(しぇりー・めぐみ) ジャーナリスト、ミレニアル・Z世代評論家 NY在住33年。のべ2,000人以上のアメリカの若者を取材。彼らとの対話から得たフレッシュな情報と、長年のアメリカ生活で培った深いインサイトをもとに、変貌する米国社会を伝える。専門分野はダイバーシティ&人種問題、米国政治、若者文化。ラジオのレギュラー番組やテレビ出演、紙・ネット媒体への寄稿多数。アメリカのダイバーシティ事情を伝える講演を通じ、日本における課題についても発信している。 ----------
ジャーナリスト、ミレニアル・Z世代評論家 シェリー めぐみ