高市新首相「働け」発言にトラックドライバーが共鳴? かつては「年収1000万円」も珍しくなかったが…「長時間労働」求めざるを得ない“切実な”事情
ドライバーをこれ以上働かせてはいけない理由
彼らの「もっと働きたい」という要望を通すべきではないと言えるのは、彼らの労働はすでにこれ以上ないほど長時間であり、そして過酷だからだ。 運送の運転者は、業務災害に係る脳・心疾患の労災支給認定件数が23年連続ワーストだ。しかも2位との差は年々開き、最新(2024年度)においては、4倍近くにもなるほどぶっちぎりのワーストである。 トラックドライバーの働き方改革施行が一般則より5年遅れた理由も、彼らが他業と比べてもずば抜けて労働時間が長く、その是正に時間を要すると判断されたからだ。 さらに、一般則の時間外労働制限が720時間なのに対し、ドライバーは240時間も長い960時間以内となっている。 また、皮肉にも「もっと働きたい」と主張する人たちのなかには、賃金が安いだけでなく、過酷な労働を強いられている人が多い。 筆者がトラックドライバー向けに実施したアンケート調査(n=271)では、47・6%が「睡眠時間が5時間以下」と回答。 さらに既往病として、前出の脳・心疾患に直結するようなコレステロールや高血圧を挙げるドライバーが非常に多く、健康状態もいいとは言えない。 先述通り、ドライバーの平均年齢は50歳を超えている。体力的にも「過酷」に耐えられなくなりつつある年代だ。 彼らがもっと働きたいとする大半の理由は、先述通り「稼げないから」だ。いわば「酸欠」状態といっていい。 ブルーカラーがまだ花形だった当時、年収1000万円まで稼げていたのも、時給そのものが高かったわけではない。「安い時給でも長時間働いていたから必然的に給料が高かった」という側面のほうが大きい。 もし同等の収入を稼いでいるホワイトカラーが同じ時間働いていたら、恐らくドライバーの数倍は多く稼いでいたに違いない。 安全を担保することも仕事であるドライバー。これ以上どう働くというのだろうか。 大きなトラックを操る一般貨物自動車運送事業のトラックドライバーは、法令上、建設業のような「ひとり親方」、いわゆるフリーランスのような形態では働けない。これは、上述したドライバーの「働きたい」という欲望を見越し、その暴走を止めるためのものだといっていい。 稼ぎたいからと誰にも管理されず、ワークライフバランス度外視で働き続ければ、必ず今以上に体を壊す。 それだけではない。居眠りや突然死などによる交通事故すら起こしかねないのだ。 ブルーカラーの現場で起きる事故は、どの業種でも命に関わるが、運送の場合は、他職と違い、事故現場は「構内」ではなく、一般市民が行き交う「道路」になる。 自分の「ワークライフバランス」を捨てるということは、彼らにとって周囲にも大きな危険をもたらす可能性があるのだ。