高市新首相「働け」発言にトラックドライバーが共鳴? かつては「年収1000万円」も珍しくなかったが…「長時間労働」求めざるを得ない“切実な”事情
ドライバーが稼げなくなったきっかけ
そんなドライバーの労働環境が一変した出来事がある。1990年の「規制緩和」だ。 これにより業界への参入が容易になり、それまで4万社だった運送事業者が6万3000社に急増。その直後にバブルが崩壊すると、同業者同士で壮絶な「荷物(仕事)の奪い合い」が起きる。 労働集約型産業である運送業において、同業他社との競争手段は「運賃を下げる」か、仕分けや検品、ラベル貼り、陳列、さらには数千個の荷物をひとつひとつ手で積み降ろす手荷役といった「付帯作業」くらいしかない。 こうして荷主至上主義が構築され、「過酷なのに稼げなくなる」という構図が出来上がってしまった。 現在、トラックドライバー(大型)の平均年齢は他業平均より5歳も高い50・3歳。つまり、元々稼ぎたくてこの業界に入り、当時「24時間戦える」「きつくてもいいから稼ぎたい」とした人たちが現在の物流を支えているのである。 そんな彼らに追い打ちをかけたのが、2024年4月1日に施行された「働き方改革」だった。 一般則から遅れること5年後、トラックドライバーにも同法が施行され、「もっと働きたい」としてきたドライバーに、さらなる労働時間の制限が課されたのだ。
ベテランドライバーの特徴
50代以上で「もっと働かせてほしい」と主張するベテランドライバーには、ある傾向が見られる。 汗水たらして長時間労働することに“ブルーカラーの矜持(きょうじ)”を抱く人たちが多いのだ。 彼らは、機械を使うことを「楽して仕事をするズルい行為」と感じ、逆に汗水たらして働くことを「美徳」と捉えがちだ。なかにはひとつひとつ手で積み下ろしする「手荷役」を「ドライバーの武器だ」と主張する人もいる。 こうした昭和では称賛されてきた彼らの労働観にかんがみると、今回、高市氏の発言に多くのベテラントラックドライバーが共感した意味がよく分かる。 一方、できるだけ効率的に、無駄な体力を使わず稼ぎたいとする昨今の若手には案の定受け入れられず、ゆえに現場に若者が入らない大きな原因になっており、皮肉にも、ベテランが体を張れば張るほど、現場の「少子高齢化」に拍車がかかるという状況に陥っているのだ。 無論、元気に体を動かして仕事をすること自体は決して悪いことではない。 しかし、古い働き方にしがみつき、機械化を拒み続けるベテランの彼らが10〜20年後、同じような体力仕事を同じパフォーマンスで続けられるだろうか。