高市新首相「働け」発言にトラックドライバーが共鳴? かつては「年収1000万円」も珍しくなかったが…「長時間労働」求めざるを得ない“切実な”事情
働き方“改悪”
とはいえ、トラックドライバーの労働時間を制限する現行の「働き方改革」は、現場のためになっているとはとても思えない。本来ドライバーの労働環境の改善のためのものだったにもかかわらず、現状は荷物が届かなくなることばかり心配されているからだ。 その最たる例が、高速道路の制限速度の引き上げだ。 これまで大型車における高速道路の制限速度は、時速80キロだった。それを「輸送の効率化」を理由に90キロに引き上げたため、ドライバーにはより高い集中力が求められるようになった。 早く届けたとて、ドライバーの賃金に反映されるわけでもなく、むしろ労働時間の制限により、少しでも運行が時間規制にひっかかれば長距離の仕事がまるまる吹っ飛び賃金は下がる。実際、筆者が2024年5月に著者がX上でアンケート調査を行ったところ、働き方改革によって収入が下がったというドライバーは30・1%にも及んでいる。 その結果、収入を増やすため、業務後に運転代行や倉庫の仕分けなどの副業を始めたドライバーや、あえてルール度外視で時間外労働の制限以上の労働を“させてくれる”劣悪企業に転職したドライバーまでいる。 繰り返しになるが、現在物流を支えているのは、本来稼ぎたくてこの業界に入ってきた人たちだ。 そんな彼らの思いと逆行し、ドライバーの賃金問題をないがしろにしたまま施行されれば、反発があって当然だ。「働き方改革」は現状、「働き方“改悪”」の状態なのである。
今後のドライバーに必要なこと
トラックドライバーという仕事の楽しさ、社会的価値を知る身として、この職には再び「ブルーカラーの花形」となってほしい。 誰もができる仕事ではないものの、トラックドライバーは成り手の門戸が広いゆえ、なかには過去に大きな失敗をしてしまった人たちなども少なくない。 そんな彼らにとって、トラックドライバーという職業が老若男女問わず、一発逆転、失敗から挽回できる職として、ホワイトカラーに負けないほど稼げる「希望の仕事」であってほしいと強く願っている。 現状にかんがみると、その道のりは決して平坦なものではないだろうが、そのためには国によるより柔軟な法整備やバックアップが不可欠なのは間違いない。 そして、運送事業者やドライバー本人たちも「もっと働く」や「ワークライフバランスを捨てる」といったマインドから、「本来得られるはずの賃金まで水準を上げること」に視点を変える必要があると思う。 昭和の「労働観」から脱却し、働いた“長さ”や“汗の量”を美徳とせず、ドライバーひとりひとりが自分の能力を磨き、少ない労働時間でも生活が十分できる賃金を得られる環境を構築していく努力をする必要があるのではないだろうか。 ■橋本愛喜(はしもと・あいき) 現ライター。元工場経営者・トラックドライバー。大型自動車免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。現在はブルーカラーの人権・労働に関する問題や、文化差異・差別・ジェンダーなどの社会問題などを軸に各媒体へ執筆・出演中。
橋本 愛喜