透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する   作:食卓の英雄

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えー、その。お待たせして申し訳ありませんでした。
続きです


第42話 合同演習ケセド〜思考の闇からの脱出〜

 

 突撃の号令と共に、RE:flecterの武力として働く第1、第3分隊が真っ先に行ったのはクリアリングと状況把握だ。

 

 ブラックマーケットの治安ははっきり言ってかなり悪い。とはいえ、通常の自治区においてもスケバン達やヘルメット団などのような騒動自体は起こり得る。

 ブラックマーケットにおいて何が危険なのかと言えば、自治区の域にないが故の違法な手段と背後の組織関係だ。

 自治区内では禁止されているような兵器でも、当然のように持ち出されたり、繋がっている組織の大元が出張る可能性もある。

 

 会社に属しているとはいえ、己等の力量を把握している彼女たち。今まで後が無い暮らしをしていたための判断力と、研修により培われてきた分析力。

 

 双方を備え、より的確に己達だけで対処できるのか、どの程度の勢力で、どのような関係があり、どういった手法を取ってくるのか。

 

 それぞれの自治区内において名の知れる人物のように強くなく、いざとなれば自治区による庇護のない彼女たちは、それを徹底的に叩き込まれていた。

 

「正面人型約20!戦闘用ドローンが8!」

「武装は廃墟のロボと同じアサルトライフル系列!盾で充分軽減できるやつ!」

「了解!盾持ちを出しつつ制圧力に優れた武器で地上を押し留めろ!それ以外の自信がある者はドローンを撃ち落とせ!」

「はっ!」

「側面扉から物音!多分増援来るぞ!」

「C4を置いて一時退避!その後漏らしを仕留めろ!」

「第1分隊は援護と穴の補充を優先しろ!増援の規模が不明なうちは出すぎるなよ!」

「あたしらの方でタレットはやるんで、それまで支援よろしく!」

「っス!」

 

 だからこそ、現状把握と報連相、味方との連携や後続への影響なども個々人で意識しあいながら戦うことを選んだのだ。

 

 第3分隊は、流石元SRT生が率いるだけあって、敵の装備の把握と現状での展開が最も早い。それに比べると第1分隊は展開と状況の把握こそ劣るものの、即座に動く第3分隊に流れを任せてその支援と統率下に則った動きに合わせ始めた。

 

 これが、U.B.C.S.の戦い方だ。先に状況理解を深めてペースを握り、戦力の分散と、集結が部隊単位で構成されている。

 

 複数で囲むことはあれど、それも命令待ちの一斉攻撃か、それぞれのワンマンプレイが多いキヴォトスでは珍しく、かなり細分化した役割の分担と、一人一人がそれを行えるだけの理解が出来ている。

 

 また分隊間のやり取りもスムーズで、どの隊であってもすぐさま合わせられ、互いに指揮系統を共有することが可能だ。

 

 そこまで統率力とチーム戦術を意識しているのはなぜか。

 

 それは簡単だ。彼女たちはRE:flectorきっての戦闘組織でこそあるものの、その戦闘能力自体は突出して優れているわけでもない。

 

 何せ、いくら纏め上げられていようと、所詮は学校生活に馴染めず、或いは弱者として淘汰されてきた不良の集まり。ブラックマーケットにて過酷な生活を続けているだけに、そこらの生徒に劣るつもりもないが、けれど治安維持組織などに比べるとやはり見劣りするのが現状だ。

 

 個々人や規模が同等であればいい勝負をすることは出来るが、それでもやはり学園の元に集っている治安維持組織というのは数が多い。

 

 よって、そちらほどの大所帯でないことから、物量で劣るならばと、組み合わせの数やそれぞれの組み分けとしての能力を強化してきたのである。

 

 特に、分隊単位で分け、そこから更に細分化することができ、それぞれの得意分野を伸ばしつつも、個々人の判断力を上げることにも繋がったのは僥倖だろう。

 

 つまり、その強みは異なる部隊であっても軋轢なく即座に合わせることが可能で、一つの群れのように動くことができるのがU.B.C.S.きっての長所なのだ。

 

 というかリアンにそうさせられた。

 

 序盤の戦闘はU.B.C.S.らが優位に立っていた。

 最初期に邪魔な敵を排除でき、隊列と陣を組むことが出来たおかげで、それ以降の増援や攻撃に備えることが出来ている。

 

 無尽蔵に湧き続けるオートマタ達とはいえ、その通路や生産のための時間までは無限に出来ない。前列の足止めと範囲攻撃。そしてそれらを支援するドローンやタレットの排除を順番に行えば、それは堅実で堅牢な守りとなる。

 

「こっち弾幕薄いよー!あと一人MG持ちこれなーい!?」

「よし、君はあちらに移れ、こちらは足りる」

「は!」

「そこの残骸かき集めてくれないか?このまま籠もるんなら遮蔽位は必要だろう?」

「あ、回収ついでに奴らの弾も盗りましょうよ。こっちの経費削減できるっすよ」

「ひいぃ…私が一番酷使されてる気がします…!」

「しょうがないでしょ、こんな平地で一番守り硬いのがアンタの後ろなんだから…」

「お姉ちゃんは泣き言わないの。というか隠れてチョコバー齧る暇があるなら余裕でしょ?」

 

 各々、自らの役割に徹し、未だに誰一人として落ちないままに交戦を続けることができていた。

 

 それも、偏に司令塔と個人個人での行動にラグがあまりなく、適切な対処と、戦闘態勢の維持が出来ているからだ。

 

 これもまた、ただ陣取って撃ちまくるだけならば早期に沈んでいただろうが、そちらは盾持ちに構えさせたり、斃れたオートマタやタレットの残骸から即席の盾やトーチカを作り出して被害を最小限に抑えているからに他ならない。

 

 双盾の少女は常に最も攻撃の激しい区画を防衛しているが、流石というべきか、背後にいる攻撃手たちも守られながら安心して攻撃に集中できるので危険なラインを越えはしない。

 

 一部の社員以外のメンバーとの戦力差はそう離れていないが、数を頼りに押し寄せるだけの機械と、滑らかな連携を可能としている彼女たちでは、その差は歴然だろう。

 

 そうして、ケセドが生み出す機械兵たちの群れと奮闘する彼女たちをリアンは眺めていた。

 

 この戦い、リアン並びにその親衛隊たちは参加しないことを伝えられている。

 

 目的としては、そもそものU.B.C.S.自体の戦力把握と練兵。そして今後作戦行動を共にするかもしれない親衛隊へその活動を覚えさせることにある。

 

 故に、基本的に手を出すことはなく、仮に不利に陥ろうが、拙い連携により崩れ去ろうとも、それもまた一つの結果として受け入れる。

 

 今回の練兵は、最近のきな臭いキヴォトス情勢に対しての備えでもあり、偶々未知の技術を調べることとケセドの性質がちょうどよく噛み合ったので、これ幸いにと急遽設けられたもの。

 

 だから既に他の仕事で埋まっていた第2分隊は参加していなかったりする。もっとも、12人全員が狙撃手なので閉鎖空間で敵を迎え撃つ今の戦闘には致命的に向いていないだろうが。

 

「……思っタよりやるな。正直、それなりで撤退しようかと思ってたけど、最後までやらせてみるカ」

 

 隊の動きと状況を見ながら、リアンは呟く。

 

 はっきり言えば、リアンにとっては予想外。一度下した時の強さと連携を鑑みての発言だったが、それもまた当然。

 

 数が多いだけで、あくまで個人頼りの繰り返しである不良の戦法と、元SRT生が持参した教本、そして部隊自体の理念とリアンの教え(物理)。

 

 リアンという強者がついているが故の安心感と、必ずしも自分たちの存在が勝敗に直結しないが故の気負いのなさと、生存し場に残り続ける戦法の噛み合い。

 

 そしてブラックマーケット暮らしから拾い、居場所を与え、けれど他の大人たちのように蔑むことも塵芥のように扱うこともない。

 個人の顔と名前、趣味などを覚え、尽力してくれる恩人。

 

 そんな要素の重なりが、彼女たちの意欲の高さに繋がっていたのである。

 

 そんなこととは露知らず、その成長度合いに驚くリアンは腕を組み唸る。戦闘参加の意思など関係ないとばかりに迫る機械の群れを親衛隊に任せて。

 

「ん……?」

 

 このまま安定した戦い方で主導権を握り続けるのかと思ったその矢先、戦場に変化が訪れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(不味いな…。今は余裕はあるが、それも続けていくうちに物資も気力も尽きていく。もう少し戦局を拡大出来るなら持ちようはあるが、この様な閉鎖空間ではそれも難しい……)

 

 迫りくるオートマタを少しでも削るために正確に機関部に弾幕を張り、逐一状況報告と指示を出しながら、元EAGLE小隊小隊長、『高原スミカ』は冷静に状況を俯瞰し、そう判断した。

 

 前日には伝えられていたが、いざ実際に赴くと無尽蔵に現れる機械群というのは厄介だ。

 一体一体のスペックは高いものではないが、さりとて低いわけでもない。そこらの市民たちに比べれば十分に戦闘に長けていると言えるだろう。

 

 加えて、この小隊のメンバーも多くは元は根無し草の不良やホームレスといった、まあ言っては悪いが社会的に弱者とされる者。

 

 ブラックマーケットで生き抜くために自衛手段、あるいは特別な技能がないために雇われ傭兵かカツアゲで生計を立ててきた者たち。

 当然、その他に割けるリソースなどなく、仮に余裕があったとしてもちょっとした贅沢に使い尽くすような連中の群れ。

 

 故に、自らの戦闘技術や戦術を正しく学ぶことは殆どなかった筈だ。

 今は『Re:flecter』という後ろ盾のおかげで、生活を保障されながら、本格的に鍛え始めているが、それもまだ発展途上。

 

 まあ、その分結束力は高く、連携と目的遂行の連帯感は、SRTでもそうは無かった程のものなのだが。

 

(…やはり、第1分隊はこちらを見て動くせいで一歩遅れがちか。陣形を組み直すか……?初動で私達に合わせる形になったのが後々になって響くとは…。まだ余裕はあるが、後がなくなっては遅い。今のうちに、いやしかし…)

 

 最初こそ良かったものの、今は安定して戦えているが故に、そんな考えが沸々と沸いてくる。SRTでは四人態勢での小規模な指揮しか必要なかったが、今は違う。

 それにこれは大元を叩けば良い短期決戦でも、生理的な動揺などを見せるタイプの敵でもない。無尽蔵に現れる機械群にどうやって対抗するか、だ。はっきり言って、SRT時代の経験はあまり役に立たない。

 

(オーナーの方は……)

 

 ちらりと、無意識に反応を伺おうとしてそちらに視線を向ける。

 当然、そこには親衛隊と名乗る人物たちに守られながらこちらを見守る主人の姿。曲がりなりにも戦場だというのに、欠片も気負った様子はなく、それどころか完全に見に徹している。

 

(銃すら抜いていない…。それだけ、あいつら(親衛隊)を信用しているのか…?)

 

 チクリと、不思議と心が痛むが、それに気づかないフリをしても、ただでさえ後ろ向きだった気持ちが低下する。

 そして見た。親衛隊の防衛線を数で潜り抜け、背後から近づくオートマタの存在を。

 手には既に銃は握られておらず、幾度も銃撃に晒されたからか、ボディや頭部に凹みやヒビが出来ているが、それでも立ち向かっていく。その体にはバチバチと赤い火花が走り、ショートする寸前の工業製品の様。

 

 無手にも関わらず接近。そしてその外見から、何をするかは一目瞭然だった。

 

 にも関わらず、リアンは気づいた様子はない。

 

「ッオー「―――シィッ!!」ナー……」

 

 思わず声を荒らげ注意を促すも、次の瞬間には脚を高く上げたリアンの姿と、逆袈裟に切断されたオートマタの機体。

 余りの衝撃に宙空に投げ出された上半身はくるくると高く飛び、やがて思い出したかのように爆散した。

 

 仮にも金属で出来ているオートマタが、吹き飛ばされるでもなく、立ったまま切断されるという異常な脚力と、それを為した主人の存在に呆気に取られていると、リアンの視線が向けられる。

 

「……今ので分かッタな。これらは自爆をする。時間のかけすぎには注意し、仮にその状態で接近されたら即座に突き飛ばせ。いいな?」

「「「「…っ、は、はいっ!」」」」

 

 他のメンバーも爆発音に気づいたのか次々と顔を向けて、その残骸を見ては何が起きたのかを悟り、同時にその情報に気を引き締める。

 

(…はっ!…私は何をしている。もともとオーナーが強いのは分かりきっていた。ならば今は、新たに得た情報を加味して人を動かすのが最善。私が思考を止めるのは、隊列全ての停滞に他ならない…)

 

 そこで、更に戦況に変化が起こる。

 

 この合同部隊が構えている陣形の直線上に、大型の機械兵。ゴリアテが固定砲台と同時に現れる。

 

 ゴリアテはその両手のガトリングと頭部の大砲。固定砲台は遠方から榴弾を放ち続けるため、放置すれば甚大な被害を受けることは明らか。

 

 新たな増援とその規模に、一瞬焦るが、スミカは逆に好機だと判断した。

 

「…すまない!一定時間足止めと範囲攻撃を頼む!第1分隊は使用武器ごとに整列、面制圧が可能な者を前に出し、私の分隊は中列まで退却!手榴弾と対応弾薬は託していい!だがリロードのタイミングは被らせるな!何もしない時間だけは無くしたい。特技班の両スナイパーは自爆の兆候が見られたオートマタを!!それ以外は撃ち漏らしの処理とサポートに!」

「っはい!」

「了解!」

「分かった!!」

 

 そしてスミカは中列で第1分隊の統制を取っていた分隊長に近づくと、こう言い放った。

 

「悪い、この場の指揮権は任せてもいいか?」

「ん?あ、お、おう。一応覚えはしたから、さっき程とは行かなくても、維持くらいは出来る」

「恩に着る。…元EAGLE小隊と特技班のトラッパーは私に続け!目的はゴリアテと固定砲台の破壊!」

「はっ!?私だけ!?」

 

 即座に動き出したスミカに続いて、近寄るオートマタを牽制しながら飛び出す影が3つ。

 遅れてトーチカの裏から服装の異なる少女が飛び出し、ゴリアテへと迫る。

 

 道中はゴリアテの射線を遮らないためかオートマタはバラけており、辿り着くのは容易だった。合間に襲いかかる個体は背後からの支援により蹴散らされ、道中に倒されたオートマタの残骸を使ったトラップが作動し、群れの中には穴が空いていく。

 

「先ずはこれを抑え、後衛の憂いを無くす。正面装甲は堅固だが、機関部と砲身自体の強度は劣る!集中砲火で落とすぞ!!」

「「「了解!」」」

 

 その金色の瞳には迷いはなく、いつかの様にギラギラと燃えるような情熱を秘めていた。

 

 

「おーい…。私が得意なのって引っ込んだ後、トラップを仕掛けて誘導するのであって、こういう乱戦に何もせず突っ込むのは避けたいんだけどぉ……」

 

 

 なお、それについていけずに静かに抗議を送る少女の姿があったとかなかったとか。

 




『高原スミカ』
元SRT特殊学園の3年生。
黒髪でショート気味のポニーテールを高い位置で結んでいる。ポニテ部分には色素の薄い金髪が混ざっている。
目の色は金。
セリナなどと同じ様に、髪の側面から羽根が生えている。

武器にこだわりはないが、動揺や混乱を招けない様な機械や、対多数の撹乱が意味をなさないような物量だけの相手は苦手。つまり今。

名前と髪の由来は仮面ライダー剣よりイーグルアンデッド(高原)から。後は鷲に関連するものとして鷲見があるから。

先生の台詞にゲーム本編のように「“”」はいる?

  • 先生と一目で分かるからあった方がいい
  • 別にゲームテキストでもないのでなくていい
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