透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する   作:食卓の英雄

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色々展開が迫ってきているからこそ取捨選択とかやりたいこととかで悩みがち。

尚、前話の嘘の味、というのはリアンにとっては一方的なゲーム開発部のことを知っていたからですね。何ならセミナー襲撃&C&Cとの交戦もバッチリ監視されてました。先生が数日以上携わっている案件なので……。


あとベクターの声は置鮎◯太郎さんイメージです。
運命ゲーのランスロットをもうちょっと砕いて、イントネーションの最後の方を冥黒王みたいに下げる感じで。
決して黒崎(コユキじゃない方)や小松ぅ〜!みたいな上上がりの声ではない。


第41話 ケセドは機械の軍隊を無断で生み出し、リアンは異形の生命を違法に産み出す。そこになんの違いもありゃしねぇだろうが!

 

 

 明朝、光の届かぬ地下にも関わらず、明かりの一つも点けず*1に遊星リアンは座っていた。

 

「さて、上手くいくかな…」

 

 ここは研究室。社員であっても立ち入ることを許されぬ階層の中でも、殊更厳重な警備と対策が敷かれている部屋の一つだ。

 

 しかし、その部屋に突如として光が差し込む。

 

 それは外から持ち込まれたものではなく、研究室の中から繋がる扉が開かれたもの。そこは気温や湿度などの保存環境を整えるための一室であり、基本的には内部に長時間いる者などない*2

 

 そして内部から漏れる光に影が差す。

 

「……………」

「お早う。さて、言葉は伝わるかな?」

「……………(コクリ)」

 

 現れたのは、ベクターやエスカドラに近い虫型の人類。だがしかし、そのシルエットは大きく異なる。

 

 頭部には二本の突起のようなものが生え、襟下辺りから胸元まで何かが垂れている。肩甲骨の辺りからは昆虫由来の外殻の上から黒く細長い翼が地面に向かって生え揃い、口元は嘴の様に尖り、目はコウイカらに見られる閉眼目の様だ。

 

 

 加えて、よく注視しなければ分からないが、外骨格の内側は軟体生物の様な肉が蠢き、柔らかい肉に鎧を纏っているかの様に見える。

 

「…………(スッ)」

「……跪くか。上下関係は理解していルのね。……さて、ああして温室から出られた時点でそれなり以上の知能と知性を備えテいるとは思うが、役割は達成できそうカな?」

「……………」

 

 問われたそれは、その場にある資料を指差して意思を示した。

 

「『学』『ベ』『ば』『必』『ズ』か。もう文字も理解しているな。期待以上だ」

 

 さて、これまでの流れで大凡理解できたであろうが、この生物はリアンが新たに創り出した子らの一種だ。

 

 これまでの成功例がベクター率いる親衛隊(エスカドラ)のみ。しかしてその性能は一般キヴォトス人に比べてかなり秀でていると自負しているが、ベクター以外の頭脳面については然程優れているわけではない。

 

 無論、バカという程でもないのだが、虫ならではの無機質な性質が邪魔して単純な作業はともかく、複雑な工程を有する作業や事務仕事をはじめとした頭脳労働は直々に命令を下さないと行うことが出来ない。

 

 故に、リアンは新たに頭脳労働、ひいては研究助手としての仕事が出来る個体を作るのであった。

 

 前回は己の卵細胞と3種の昆虫の遺伝子を用いたものだった。これは社会制と群れの統率性、そして己の肉体との親和性を意識して選んだのだが、今回は違う。

 

 ベースを自身に、ベクターなどの既に成功した生物から接種した遺伝子を組み込み、さらにそこへ高い知性を持つカラスと、例のクラーケンの遺伝子を混ぜる。

 

 その状態で調整することで、身体能力の高く、生来の肉体の活かし方や連携に長けたエスカドラらと違って性能を下げ、発声能力を無くす代わりに、頭脳労働が可能で複雑な作業を行うことが出来るほどの知性を手に入れたのであった。

 

 要は、エスカドラを戦闘員とするならば、この種は研究員の様なものである。

 

「……成功だな。…よし、冷凍保存している他のも全て孵化させてしまうか。……そうだな、とりあえず30程はいるか」

「…………」

「ああ、お前の仕事は追って話す。それと、お前たち用の制服もその時に作るから、暫くは待機していてくれ」

「………!」

「…それは、喜んでいるのか。意外と、意思疎通に弊害はないな。……やはり、発声よりも知性の方がコミュニケーションにおいては重要だッたな」

 

 

 

――――…

 

 

 

 

 それから暫く、凍結処理をしていた卵子に同じ処置を施し、その結果がムラなく平均値を維持していることを確認した。

 そして揃ったのはちょうど30体の調整個体。

 

「…今しがた生まれたばかりで悪いが、お前たちの仕事の説明だ。まず―――」

 

 彼ら用に作られたそれは、異形の肉体を覆い隠す様な実験衣。手が加えられており、本来の用途である防護服の要素を更に強化してある。

 具体的には薬品や熱などへの耐性に加えて、キヴォトスならではの防弾・防刃・防爆仕様だ。流石に戦闘用チョッキに比べれば性能は劣るが、それでも各学区の制服よりはマシだ。

 

 実際にブラックマーケットで転売されていた各校の制服との耐久試験で試したから間違いない。……というより、銃撃戦をする治安維持を司る部活ですら防具の一つもつけないのはどうなんだ?いくらここでは殺傷性が限りなく低いとしても、部活として考えれば剣道の防具みたいなものだと思っているんだが。

 

 いや、むしろだからこそか?普通に受けても無事な攻撃で一々破壊されては出費が嵩むからか?

 

 と、話が脱線した。

 

 専用実験衣はその分厚手になっており、白衣というよりはもう少しだけ物々しいコートのようになっているが致し方ない。

 

 また、いくら戦闘用ではないとはいえキヴォトスで非武装はあまりに無防備。

 何せ銃を持っていない生徒より裸で歩いている生徒のほうが統計的に多いというデータすらあるくらいだ。

 

 ………誰だこんなの調べたのは。

 

 装備は護身用に軽量で携行性に優れたPP-2000を配備。近距離専用に回数制限有りでAED並みの電撃ショックを与える籠手。ナイフ部分を筋弛緩剤入のアンプルに替えたスペツナズナイフなどを持たせている。

 どちらもやり過ぎるのは危険だが、キヴォトスの生徒ならばこれで命の危険に陥る可能性は薄い。精々が数日程度影響が出るくらいだろう。

 

 頭部はサイバーパンク気味のフルフェイスヘルメットで覆い隠す。デザインは烏を思わせる嘴型の突起が緩やかにつき、メカメカしい造形。

 マスクに散りばめられた発光器はキヴォトスのロボ市民の様に、表情代わりとなり、素顔を見せずとも簡単なコミュニケーションも可能。

 色は配属部署によって変える予定だ。

 

「…さて、理解したな?これから数日ほど研修を行い、こちらの制度や仕事の理解を終えたら、各々指定された仕事に移ることだ」

 

 全員が頷いたのを見て、リアンも踵を返して自身の私室に籠もる。そして暫く体を委ねると、少し停止。

 

 まるで眠っているかのように瞳を閉じると、独り言が溢れる。

 

「……エデン条約機構、即ちETO。邪魔者の排除。ティーパーティー。桐藤ナギサの懸念による補習授業部。百合園セイアの死と蒼森ミネの目撃情報。情報統制と失踪時期が近い。そして当人の姿勢。なるほど、となると百合園セイアは生きている可能性が高いか。それデモ姿を現さないのは命を狙われているからカ……。はたまた死に至っていなくとも危険な状態デアル。又はその両方、か」

 

 大々的な入院でないのは弱みを見せないためかとも疑ったが、このタイミングで桐藤ナギサの警戒している裏切者の存在が浮上する。恐らく、百合園セイアは何者かによる襲撃を受け瀕死かそれに近い状態にある。

 故に今生きていると知られれば始末をつけに来るだろう。故に、今は死んだことにして身を隠しているということか。それならば、戦闘と医療どちらにも長けている蒼森ミネが身を隠している理由にもなるか。

 

 ………念の為、居場所を探っておくか。少なくとも中枢に近い範囲はあり得ず、既に他の個体が見て回った位置を除いて捜査網を張っておく。3億もバラけさせれば数日と経たずして発見することは可能だろう。

 

「…既に先生に話が持ちかけられてから10日余り。肝心のエデン条約もそう遠いものではない。…………考えたくはないが、万が一ということもある」

 

 それは裏切り者という不安要素……。ではない。裏切者の正体というのは既に分かっている。補習授業部の候補にあった白洲アズサ。を、トリニティへ編入させた聖園ミカで十中八九当たっている筈だ。

 

 当の現場や本人の真意こそ分からないが、こちらはさして問題ではない。いや、勝手な推察で問題がないというのもあれだけども。

 それよりも問題は白洲アズサがどこから来たか、だ。大小いくつかのデータにもなく、それでいて秘密裏に編入させたということは、何か目論見があるはずだ。

 

 それこそ、スパイであったり連絡役であったり。

 

 背後にいる者の正体がわからない時が一番恐ろしい。鬼が出るか蛇が出るか。はたまたその先に何が見通せるのかも分からないのだ。

 

 下手を踏んで取り返しのつかないタイミングで後悔しても遅いのだ。やるにしても、せめて情報も目的もない無謀な特攻だけは避けたい所。

 

「…尻尾を出すまでは、情報収集とこちらの地盤の盤石化が優先だな。態々首を突っ込まずとも良さそうならば、それで良い。……あれらの研修と配属が終わり次第、取り掛からナイとな」

 

 リアンはやらなければいけない仕事の急増に心底辟易したと言った様子で腰を上げると、各部署へのメールをしながら姿を消すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、リアンは新しい子達の指南をベクター達に任せ、他の部署に関しても概ね落ち着かせると、親衛隊(エスカドラ)とU.B.C.S.ハンター小隊内から第1、第3分隊を率いて郊外の廃墟へと訪れていた。

 

 立て込んでいるとぼやいていた割にはその行動理由が謎であるが、それにはある理由があった。

 

 まず、エデン条約に備えるには単純に多くの人が関わる出来事で、それぞれの思惑と思想が入り交じるものであり、先日決めたとおりに今の優先順位は低い。

 

 次に、ゲーム開発であるが、こちらはそもそも休日だ。自主的に創作したり、聞きに来る分には構わないが、流石に花の女子高生相手に休日まで仕事を迫るのは酷であろう。それに、製作自体は順調で、いざとなれば眠らない体と効率的に動かせる手足で何とでも短縮は出来る。

 

 同じ理由で期限の迫っていないデスクワークも後回し。

 

 極海の方は今は準備が整っていないので不可能。

 

 よって(建前上は)唯一のRE:flectorきっての暴力装置である分隊達に経験と、親衛隊達との顔合わせを行おうとしているのが始まりだ。

 

 では何故廃墟を目指すのかと言うと、それは管理者が誰もおらず、暴走したオートマタが彷徨っているから………と普段ならば言っていただろうが、今回は少しだけ事情が違う。 

 

 それというのも、例のアリス絡みで驚異的なテクノロジーやロストテクノロジーに関して調べていると、まず身近に類似例があったことを思い出す。

 

 そう、今はRE:flectorきっての頼もしき漁師の味方。ゲブラの存在である。

 天童アリスとは別種の技術の様だが、一機械がヘイローを持ち、知性と感情を獲得しているのは同じこと。

 

 デカグラマトンの預言者。その一機であったゲブラから齎された情報から、その信号の解析に成功。

 より番号の若く、早くに感化されたAIの一つがここ、ミレニアム郊外の廃墟にて活動している事が観測された。

 

 その名はケセド。

 

 球体型の4番目の預言者だ。

 

 調べて見た所、「ディビジョン」と呼ばれる廃棄された兵器生産工場の生産システムAIがデカグラマトンに感化・掌握されたものであるらしく、視察に送ったバッタによると、複数のオートマタやドローンを製造して操っているとのこと。

 

 本体の機動力は高くなく、それでいて見た限りでは戦闘用の装備の一つもない。まああくまで生産工場なので仕方がないのだが、このケセドの主戦力は己の機能を用いて生産され続けるオートマタ達にある。

 

 堅いセキュリティに閉ざされた施設に根ざしているようで、その圧倒的な物量と、辿り着きにくさ、そして本体の防御性能も相まって、これまでのデカグラマトン級戦力とは異なるベクトルで脅威となりうる存在だ。

 

 本体は守りを固め、その隙に尽きない戦力で取り囲む。シンプルながらに有効な戦術であり、一度処理が追いつかなくなれば瞬く間に削り取られてしまう。

 とはいえ、その特性は厄介ながらに、その実戦闘に参加するハードル自体は他のデカグラマトン級戦力に比べれば遥かに低い。

 

 突出した性能を持つ個ではなく、無数の兵力。つまりはこちらに求められる最低限の実力…つまりはオートマタ相手に優位に立てる程度の戦力さえあれば、埒外の性能や攻撃を行う他の預言者に比べれば、十分に対抗することが可能なのだ。

 

 故に、超常現象とハイテクノロジーを求めるついでに、そこそこの強さ、ドローンや大型兵装などバリエーション様々な敵が無料で無尽蔵というのは、実戦を想定した訓練にはぴったりだったのだ。

 

「…それでは、10数えてから突入するぞ」

「「「「はい!」」」」

「「「了解っす!」」」

「9……。8……。7……。6……。5……」

 

 彼女たちが万全の準備を整え、待機するのはケセドの待ち構える兵器工場の隔壁前だ。

 勿論ケセドによって強固なロックがなされており、生半可なハッキングは疎か、特殊な金属によって遮断され、電子、物理共にとてつもない強度を誇る、当に鉄壁。

 

「4……。3……」

 

 これが扉ならばまだ壊しようもあったのだろうが、これはシャッター状の完全電子式の隔壁。爆薬を入れる隙間もなく、仮に内部を破壊したとしても、上下開閉の為に一生上がらない鉄の壁が出来上がるだけ。

 

「2……」

 

 ()()()()()

 

 腰だめに構えたリアンが、後ろへ跳ぶ。

 背後は壁。退がった勢いを上手く殺して壁に足を突くと、渾身の力を込めて引き絞る。

 

「1……!」

 

 ミシリ。壁が勢いに負けて歪み、リアンが射出される。

 勢いは消えず、ほぼ直線に突き出されたリアンの足が隔壁に穴を開け、同時にロック機能が破壊された。

 

「0……!」

 

 その風穴に、いい取っ掛かりが出来たとばかりに足を引っ掛けて上へと蹴り飛ばす。機械からあまり聞こえてはいけない類の音がバキバキとなり、一瞬持ち上がって、再び落とされようとするそれをリアンが己の頭の高さ程度で支える。

 

「「「「「突撃ぃー!!!」」」」」

 

 こうして、ケセドの堅牢なセキュリティはあんまりにもあんまりな力技に突破され、攻略は開始されたのだった。

 

 

////////CHESED////////

DECAGRAMMATON

*1
例の如く節約である

*2
偶に湿度の高い部屋にエスカドラが寝ていたりする





実は総力戦や大決戦にてケセドに挑むと、開始時にアロナがハッキングして遮蔽扉を開けているのが分かる。
もうちょっと…!
とかの台詞があるので、オートマタを倒したから先に進んでいるのではなく、どちらかというとアロナがロック解除するまで耐えてる感じらしい。

【研究員】
既存の成功例から、更に頭のよく仕事が可能な個体を作るべく、イカ(クラーケン)やカラスの遺伝子も混ぜて作られた。
言葉は構造上発せないが、ちゃんと頭はいいし他者ともコミュニケーションも取れる。
イカの目、カラスの翼、イカとカラスの混ざった口。そしてイカの筋肉の上から昆虫の外骨格を纏ったような姿をしている。
専用の実験衣に、顔を隠しつつ光でコミュニケーションの取れるフルフェイスヘルメットを装備し、その上から更にフードを被っている。
武装は最低限。だが相手を一時的に拘束したり動きを阻害、止めるものが多い。

マスクのイメージはアスリスタ装備(モンスターハンター)、エージェント(仮面ライダーガヴ)、サイバーパンク系のマスク(元ネタなし)を混ぜた感じ。
アスリスタのフォルムに、エージェントの前面構造、他部分がサイバーパンクマスクみたいな感じで。

先生の台詞にゲーム本編のように「“”」はいる?

  • 先生と一目で分かるからあった方がいい
  • 別にゲームテキストでもないのでなくていい
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