透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する   作:食卓の英雄

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モモイ達って、ゲーム開発部だいぼうけん!を見る限り仕事自体は出来るし、余計に詰め込んだり、色々やったりしなければ売れる発想や技術力はあると思うんですよね。
TSC2も短期間で完成させてあの評価だし。
問題は色々自分たちで詰め込んだり、自主性が求められる場合にぐだったりすることなので、上から監修する人がちゃんと確認していい所を集めれば、普通に優れたクリエイターになれると思うんです


第40話 初めましては嘘の味

 

「…さて、早速で悪いが、それぞれへの作業の分配を決めよう。勿論、それ以外のことに関しても何か案があれば積極的に言ってくれ」

 

 規約を読み込み、メリットデメリット、そして報酬金や契約期間などを明確にしてから調印が成された契約書を確認して、リアンが音頭を取る。

 

「先ず、ユズ部長にはこちらのプログラムと指標を元にシステム面の補強と改善をしてもらいたい。単純な動作とポリゴンの判定はできているが、絶対的に試行回数と調整が足りない」

「わ、分かりました」 

「……俺もベクターも手掛けている部分が多いので、一番関わりが多くなりそうなのは君になるな。勿論それ以外にも疑問に思ったことがあれば聞いてほしい」

 

 グラフィック自体は精巧なものの、攻撃の判定や操作感、接地面などは特に拘りたい。コピーしたデータとUSBを渡し、ベクターを指すと軽く腕を上げて反応する。

 

「次にモモイ。君はその発想力から自由に話を広げて欲しい。……0からではなく、こちらが当初企画している世界観設定の素案だ。これが絶対ではないが、ここから追加なり絡めるなりしてくれると有り難い」

「わっ、って結構書いてあるんだけど…!?こんだけ決まってたら、これ私の書く場所ってないんじゃ……?」

「…先程も言ったが、あくまで仮案の骨子だ。自由な発想を期待している。……一応、こちらで監修するため採用されるかは分からないが、案はあるだけいい。……一応、イラストにも影響が出るため、やり過ぎは避けてほしいが……。まあ、軌道修正は任せて欲しい」

「お、おうぅ…。結構責任重大かも…」

 

 決まった作業ではないことと、その重要さにモモイは震えるものの、何も一人で無軌道にやれという訳では無い。

 発想と監修役が別にいることで、その設定の自由度と取捨選択が容易になり、互いに思わぬ効果を得ることが出来るかも知れないのだ。……まあ、流石にTSCのように無秩序になるのは避けたいが、それもまたどうにかなる。

 

「そしてミドリ。こちらにある通りグラフィックは複数パターン完成しているが、基本的にはこれらと、人形の金型がパターン別にある程度だ。…モモイに渡したものと同じ資料がこれだ。所謂雑魚敵やボス格の様なものも足りていない。……こちらも、設定次第で変わるかも知れないが、そこは要相談だな。むしろ互いの要素から新しい何かが見えてくるかもしれないので、こちらは同時進行してほしい」

「はい。わっ、ホントにパターンくらいしかない…。これって、どういうのがNGとかはありますか?」

「……一応、あまり過激なものは控えてほしいが、想像力のままに書いてくれればいい。今も言ったように、世界観から離れていてもその理由付けなどがされているなら採用するやもしれん」

 

 スケッチとイラスト一覧は中々寂しいもので、プレイヤー機体を除けば数少ないボス格、そして3種類程度のオートマタのデザインがある程度だ。

 ミドリは今までとは異なる作風故に尋ねたが、返ってきたのは自由裁量とのこと。それが試されているようで何だか緊張感を覚えるが、それと同時に無理に個性を抑えなくて済むという点にはほっとしている。それに、今までの作品が故に自然と西洋風のファンタジーRPGに寄っていたので、新しい方向へ手を伸ばすきっかけとしては十分だろう。

 

「はい!アリスは準備万端です!」

 

 そして、残るはアリスなのだが……。

 

「………済まないが、現時点でやれることは少ないな」

「そ、そんな…」

 

 アリスのゲーム開発部での役割はテストプレイ。基礎システムだけはあるとはいえ、それも十分にテストした上で提供したもの。

 今から取り掛かるにしても、構想を練る以上どうしても時間はかかる。

 

「……こう、シナリオとイラスト部門で、第三者からの意見も必要だろう。暇なうちはそちらの手伝いで、プログラムが出来次第取り掛かってもらいたい。……ああ、それと現時点での感想や意見も容赦なく頼む。……無難だが、そのくらいか?」

「…分かりました。どんなクエストでも、ちゃんとこなしてこその勇者ですから!」

「すまないな」

 

 意気揚々と構えていただけに、その落胆は大きいようだ。とはいっても、直ぐに気を持ち直したのか、モモイらと一緒に資料とにらめっこをしている。

 

 本当に触りの部分程度だが、方針は決まった。何も今日明日に締め切りが来るわけでもない。部室内では緩やかに自分たちの仕事とその設定での話し合いに発展していた。

 

「ここをこうして…。うーん……」

「はい!魔王を出すのはどうでしょうか!」

「ちょっとアリスちゃん。いきなりそれはちょっと…」

「あ、ここが出来てるなら結構簡単かも……」

 

 それぞれの作業に取り掛かる4人の熱意はというと、いつもより少しだけ高めだ。わざわざ企業が自分たちに仕事を持ってきたということに加えて、自由度も高いとなればモチベーションも上がったのだろう。

 

 急な話だと言うのに、意外にも乗り気な4人に驚きながらも、リアンも作業には混ざるべく腰を上げるのであった。

 

 その姿を、つまらなそうに眺めるのは、これまで全くの蚊帳の外であったネルだ。作業に混ざり始めたリアンを半目で睨み、ソファーの上で肘をつき足を組む。

 

 最早、自分にできることがほぼないのは察していたのだろう。それでいて、この決して広いとは言えない部室内から出るのは役割の放棄になる。

 仮にも外部の勢力だ。放置するのもセミナーからの小言が面倒だし、それこそ万が一があってはC&C、ひいてはミレニアムが舐められかねない。

 そのイラつきを見抜いたのか、ベクターは不機嫌そうなネルに声を掛ける。

 

「……美甘ネル」

「ああ?」

 

 ベクターの方を向いたネルの目の前に差し出されたのは、やや改造こそしてあるが、プライステーションコントローラーと、それに繋がれたパソコンだ。その画面には作りかけであろうゲームが表示されていた。

 

「暇ナラバ、プレイしテ見テクれ」

「あ?あいつのゲーム……じゃねえな。何だこりゃ」

 

 簡素なタイトル画面に映し出された『InsectOrder』の文字。触るだけ触ってみると、メニュー画面が表示され、あれよあれよという間にキャラクター選択画面に。

 そこには虫が人の形になったようなキャラクターが何種類か映されており、それぞれがパラメーターなどが定められている。

 

「なんだこりゃ、虫人間か?」

「アア」

 

 これは最初に虫人間の中から種族を選び、種族的特性と、それとは別にあるパレットセットにオプションや武装を積んで戦うアクションゲームである。

 

 パレットセットは基本八つセットでき、一部例外的に多かったり少なかったりする種族がある。セットには武器の他にも攻撃を防ぐシールドや行動の補助に使うものであったりと様々だ。

 

 そのセットに、種族特性――バッタ人間ならば任意の方向に素早く跳ぶことが出来たり、クワガタならば防御と近接に補正が乗る――などの要素を組み込み、自由度の高い戦闘を可能としたバトルロワイヤル系ゲームである。

 

 暇な時間の多いベクターは、部下を用いてコツコツとこちらのゲーム制作に励んでおり、その完成度は高く仕上がっている。リアンの提案したゲームの地形グラフィックなどが多く出来上がっているのも、こちらで作ったモデルを編集して作ったものだからであったりする。

 

……とは言っても、まだ完成はしておらず、問題も山積み。予定よりも種類も少なく、PVPは出来ないのだが、テストプレイは可能だ。

 

「おい、これ自由に決めていいのかよ?」

「アア、得意を伸バスも良シ、苦手をカバースルもヨシだ。……出来れバ、テストプレイトシて色々ナスタイルやパレットを試しテクレルと助カる」

 

 ベクターに操作方法を教わり、遊び始めたネルは、時間も忘れて熱中するのであった。

 

 

 

 

―――…

 

 

 

 

「ああっ、もうこんな時間!?」

 

 作業に没頭していた六人は、モモイの叫び声につられて顔を上げる。

 時刻は18時30分。室内からは見えなかったが、既に夕日は落ちかけている。

 ミレニアムサイエンススクール内においては、夜間に活動する部活動もあり、ゲーム開発部もやろうと思えば夜通し作業することは可能だが、リアンはあくまで外部の人間。

 

 このような時間にまで残すのも悪く、またミレニアム側としてもあまりよいものではないだろう。

 

「うぅ…、やっと形になりそうだったのにぃ…!」 

「仕方ないよ。私たちと違って向こうはお仕事なんだし…」

「すまないな」

 

 やはり作りかけの状態。それもアイデアが固まってきたタイミングで中断させられることに不満を漏らすモモイだが、無理に引き止めるわけにもいかない。

 

「……そ、その、こっちのデータコピーしてもいいですか?ここまでは、終わらせておきたいので……」

「…ああ、構わない。……どうだった?」

「あ、その…。確かに今までと違ってリアルタイムな状況に対応するのが難しかったですけど、ジャ、ジャンルの違うゲームを作れてちょっと楽しいかも…です」

「それなら良かった。最初にも言ったが、疑問に思うとコろがあれば容赦なく言ってほしい。…そうだ」

 

 そう言って、懐を漁って取り出したのは無骨で物々しい印象を受けるスマートフォンだ。

 

「……外部の仕事用スマホだ。連絡先とアドレスを教えるので、進捗と相談、それと連絡なんかはこっちに頼む」

「あ、はい」

「じゃあ私も……」

「お、お願いしますね」

「……って、モモトーク入ってないじゃん!?何で!?」

 

 連絡先を交換し、後の伝達も十分かと思われたその時、モモイが驚愕の声を上げる。

 

 モモトークはキヴォトスで最大のシェア数を誇る連絡コミュニケーションアプリだ。スマートフォンやパソコンでも扱え、1対1のトークやグループチャット、音声通話、ビデオ通話などの他にも、リアルタイムで音声を文面に直して送信することも出来る。

 

 その使いやすさから、企業などの団体においても使われることは多いのだが、どうやらリアンは入れていないようだ。

 

「……ああ、有名な分システムにハッキングしようとする馬鹿もいるのでな。だから創った」

 

 画面に映されたのは、これまた飾り気のなく、最低限の機能を備えたアプリケーション。こちらはどうやらリアン自作のものらしく、アプリストアなどにはなく、本人から渡されたリンクから入れられるようになっている。

 

 これにはやりすぎと思いかけた彼女たちだったが、よくよく考えればそれが可能な技術力を持っている集団と懇意にしていることを思い出し、また愉快犯的な側面もあると知っていたので、その警戒もあながち間違いではないのかも知れないと思い至ってしまった。

 

「有名だが堅牢、よりも無名の隠密性を取った。……無論、これは互いの身を守るためのものなので、自社内では使っている。俺を目の敵にして、君達を襲撃する愚か者がいない、とも限らん。不便だろうが、分カッてくれ」

 

 そう言われては納得も吝かでない。

 

「だあぁっ!??くそっ、今の動きは卑怯だろ!?」

「…オット、スマナイガ時間だ。続キハまた今度ダナ」

「あ?……ちっ」

 

 熱中していたネルも、時計を見ては不承不承ながらにコントローラーを引き渡す。それだけそのゲームに入れ込んでいたのが分かり、製作者のベクターとしては上々だ。

 

「今度ハ、戦闘のパターント兵装の種類ヲ増ヤシてオク。楽しミにシテくれ」

「言ったな?絶対だからな?」

 

 ……どうやら、次回の案内役もネルになりそうだ。

 

「さて、それでは失礼した。………行くぞ、ベクター」

「アア、マタ今度」

「んじゃ、あたしはこいつらを送らなきゃいけねえからな」

 

 荷物をしまったリアンとベクターが席を立つ。やはり立ち上がった巨躯は平均身長の低いこの空間ではより一層大きく見える。

 

 そしてドアをくぐって背中が見えなくなると、4人は一仕事終えたというふうに背伸びをした。

 

「いやぁ〜、それにしても最初は緊張したけど、案外いい人だったね」

「うん。あの背中のデバイス?で作業も並行してたし、全然違うことしながらデザインの改善案だされたのは凄かった…」

「わ、私からは最初の仕事が丁寧だったから、そこから発展させるのが楽だったかな…。すでにあるコードが他にも適用しやすかった」

「2回行動に加えて、いろいろな仕事が一人で出来る。……もしや、リアン社長の正体は裏ボス、なのではないでしょうか?」

「あー、アリス言えてる!見た目も威圧感あったし、ストーリーに出てくる正体不明のキャラが実は…!って奴に似てるかも!」

「立場も、裏社会の社長ならそういうゲームもあるしね…」

「そ、それよりもみんな。次の予定はいつにする?…リアンさんはいつでもいいって言ってたけど、私は早めにしたいかな」

「あ、それは私も。いつもとちょっと違うから、実際に見てもらいたいし…」

「えっ、でも私ちょっと後にマキと遊ぶ約束してて…」

「リアンさんもシナリオは考えてるんだし、むしろ一番進めなきゃいけないのがグラフィックとシステムなんだから、遊んできていいよ?」

「私だけ仲間外れじゃん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リアンとベクターは、帰路につきながら今先ほどの共同開発の成果について話していた。

 

「……う厶、やはり仕事は早いな。想定していた量の3倍は進んでいる。流石はミレニアム生」

「アイデアモ独創的ダッタ。修正こソ必要だガ、舵取リさえヤッテイレバ、問題はナイかと」

 

 各々思いのほか進んだと喜ぶも、ここでベクターが一言。

 

「ソウ言エバ…」

「どうした?」

 

 何気ない日常会話の様に放たれた言葉は、関係者が聞けば肝を冷やすであろうものだった。

 

「アノ天童アリスと言ウ少女。カナリ高性能ノアンドロイドの様デシタが、何故生徒に紛レテイルのダロウ?ミレニアムのデータベースに記載サレテイタが、微カニ手が加えラレタ痕跡ガアッタ」

 

 要はベクターは、天童アリスは何者かの協力があってミレニアムサイエンススクールに生徒として在籍している。或いは、気付かれずにハッキングして潜り込んでいるのではないのか、と疑っているらしい。

 

「……ああ、お前には言ッて無かッタな。あれは先生とゲーム開発部が例の廃墟で回収しタ機体だ。()で見たから知っている。……とは言ッテも、俺も一部始終を認識シテいる訳では無いガ、悪意を持った何者かによるものデハナイよ」

 

 ミレニアムは監視が多くてな。とぼやくリアン。

 

「……ドコマデ把握してイルノで?」

「…本当に回収後の撤収と、C&Cとノ戦闘シか見ていないからな。予想はシテイタガ、こうして直接見テ驚いた。アンドロイド型市民とも違い、完全な機械による人工物にも関わラズ、あまりに人間と酷似する外見のロボットなど見たことがない」

「……何ノたメに、何故ソノ様な場所にあれ程ノアンドロイドが?」

「……何処ぞの物好きかとも思ったが、それにしては使われテイる技術と性能が高すぎる。あまりに人間臭すぎる動きに、表情や感情の発露も人間そのもの。あれ(レールガン)を持って尚それほど堪えていないことから、あの外見に反してかなりのパワーがあるな」

「…別にアノ程度の重量、我々でも容易に振リ回せルガ…」

「…まあ、それはそれだ。パワーと人間に近しい外見に行動。介護用…ならば良かったンだろうが、まあ違うな。多分、普通に戦闘にも耐えられる造りにしてあるし。………一体、どんな技術力だか」

 

 浮かんできた平和的な利用方法に、少しだけ希望を見ながらも即座に否定する。

 

「オーパーツ、或イハロストテクノロジー、か」

「……少し、調べるか。あの本物にしか見えない人工皮膚も気ニなるしな。何か新しい技術の獲得に繋がルかもしれん。尤も、エデン条約や氷海地域の対策もしなくてはならないが……。その間、苦労をかけることになる」

「気ニシナイでいい。オーナーの補佐ガ私の仕事ダ」

「……そうだな。じゃあお前に任せる。無論人員は補填してからな。それくらいの時間はあるさ」

 




【イース・トン・エオーナ・グラディウス】
現在開発中のゲームである。
ジャンルとかを一言で言うなら基本がアーマード◯コアに若干地◯防衛軍的なフレーバーを加えたもの。
ストーリー的には侵略者である宇宙人により、機械化した生物やロボットと戦う。
最初は人間同士の勢力争いにしようとしたが、人の描写が大変なのと、モモイの「実は全部宇宙人が仕組んでて…」や「ここで恐竜が登場!」という案を真面目に採用した結果こうなった。
尚イラスト担当の仕事は増えた。

【インセクト・オーダー】
ベクターが暇を見つけては作っているゲーム。
メインとサブのパレットに様々な装備やサポートアイテムなどを設定し、種族的特性などもあり、編成と戦法の自由度が高いアクションゲーム。
早い話がワール◯トリガーをゲームに落とし込んだ感じのもの。

先生の台詞にゲーム本編のように「“”」はいる?

  • 先生と一目で分かるからあった方がいい
  • 別にゲームテキストでもないのでなくていい
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