透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する 作:食卓の英雄
UA113万突破ありがとうございます!
ゲームを共同制作してほしい。リアンにそう言われたゲーム開発部の反応は、当に寝耳に水と言った様子だ。
そも、ミレニアムサイエンススクールにとっては外部からの依頼というのはそう珍しいことではない。
キヴォトス最先端の技術力を有するミレニアムの力を借りたい会社など山程あり、ゲーム開発部の彼女たちが懇意にしているヴェリタスやエンジニア部などはその最たる例だろう。
勿論そのことは留意していた彼女たちだったが、だからといって自分たちにまでそのお鉢が回るとは夢にも思っていなかったのだ。
だからか、軽くパニックになりかけながらも4人で顔を見合わせて相談している。
「どどっ、ど、どうしよう!?まさか本当に外からゲーム開発の依頼が来るなんて思ってなかったのに!?」
「落ち着いてお姉ちゃん。……ミレニアムプライスで受賞した直後だから、そこから知ったのかも。……でも、何でブラックマーケットの社長さんがわざわざ実績のなかったゲーム開発部に……?怪しい…」
「ど、どうしよう…。でも、ユウカが通してネル先輩もいるから、すっごく悪い会社って感じじゃなさそうだし………。アリスちゃんはどう思う?」
「アリスですか?アリスは協力プレイをしてみたいと思います!何より、今得られた名声値は、みんなで創り上げたTSC2のお陰です。アリスは学びました。ゲームを開発する、好きだという気持ちがあれば、私たちはどんな人とでも仲間になれる筈なのです!」
驚きながら、けれど相手の立場が立場なだけに及び腰だった3人は、アリスの迷いのない言葉に再び思慮を巡らせる。
「うーん、アリスがそう言うなら、いいかもしれないけど……」
「っていうかアリスちゃん。もしかしてさっきのって一昨日やってたゲームの?」
ミドリが尋ねた通り、アリスのその言葉はゲーム内で対立した勢力との共闘時に放たれたものである。
たかがゲームのセリフに何を、と思うかもしれないが、ゲーム開発部にとってはそうは片付けるわけにもいかない。
最も経験の浅く、けれど旺盛なアリスの言葉に、ユズは勇気を振り絞って未だ無言で佇む二人へと顔を上げた。
「あっ、あの…!」
「……何かな」
「一つだけ聞かせてください。なんで、ゲーム開発部を選んだんですか?」
「……ふむ、何故と?」
他の部員の前に立ち、おずおずと、けれどしっかりと目を合わせてユズは問いを投げた。顔色は青褪めているが、その瞳の決意は揺るがない。
「……
「……成程、話題性作りのため
「そ、そこまでではないですけど……」
単刀直入なリアンの言葉に、ユズは遠慮がちに放つが、その方向性自体は否定しない。
これがただの一般人で企業に目通りの叶わない立場であったり、同じく学生の頼み事であるならば納得も理解も示せた。
だが、事実こうして拝見した3Dモデルとゲーム性、そして相手の立場を考えると、どうしてもそのくらいしか選ぶ理由が存在しないのだ。
ただでさえ慎重に決めなければいけない企業案件とも呼べるもの。それもゲーム開発部としては初のもので、相手は(恐らく信用はあるとはいえ)ブラックマーケットで幅を利かせている企業。
故にその真意と、相手の思惑をしっかりと見極めてからでないと、引き受けることは出来ない。それは自分のためでもあり、大好きなゲームのためであり、こんな自分なんかについてきてくれる部員たちのためでもあった。
その覚悟は固い。とはいえ、流石に無言で見つめられては、居心地も悪いというもの。次第に放った言葉に顔を白くしていった瞬間に、リアンが動いた。
「……そうだな。そちらの言う通り、この提案は特にメリットがないように思えるだろうな。……ああ、普通に考えてみればそうなるか。……ネームバリュー、という意味ではまあ概ね正しいが、俺が君たちにこれを持ちかけた最大の理由は別だ」
「最大の……」
「理由?」
モモイとミドリが後に続き、誰もがその言葉に耳を傾けていた。
「……そうだな。まず前提として。この話を持ちかけるにあたって、君たちの作品をプレイさせてもらった。『ゲーム開発部』として世に出しているのは、今回ミレニアムプライス特別賞を受賞した『テイルズ・サガ・クロニクル2』に加えてその一作目である『テイルズ・サガ・クロニクル』。どちらも遊ばせてもらった」
つらつらと述べられる言葉に、ネルとベクター以外の4人が硬直する。
それも当然。何せ『テイルズ・サガ・クロニクル』とは、かつて世に送り出した作品であり、その感想は大荒れ。評価はほぼすべてが低評価、その年の『今年のクソゲーランキング1位』に輝いてしまった作品でもあるのだから。
本人たちはそうは思っていないが、やはり実際のプレイヤー層からの批判や評価、それと共に送られる心ない言葉には心にくるものがあった。
緊張して、備えるモモイ、ミドリ、ユズの三人は腰が引け、アリスは絶妙に何とも言えない顔のまま息を呑む。
「…世間でも評価されている『テイルズ・サガ・クロニクル2』からだな。古き良きゲームを懐古させる要素に加えて、奇抜とも取れる予想外の展開と舞台設定に、ゲームとしては原点に回帰する魔王を倒す冒険RPG。創作の進歩によりマンネリとパターンの量産化が増えてきた現代にこそクリティカルヒットするものだった。……決して最高のゲームとは言えないが、今の世代にも、かつてゲームを遊んでいた世代にも是非ともプレイして欲しい一作だった」
「あ、ありがとうございます…」
「私達4人で初めて作ったゲームですから!」
「おおっ……!これは、意外と好感触なんじゃ…?」
「待ってお姉ちゃん。先に2の方を言ったってことは……」
一先ずは好評な『テイルズ・サガ・クロニクル2』の生の声に、湧き上がる一同だったが、ミドリの言葉に身が引き締まる。
「初代『テイルズ・サガ・クロニクル』に関してだが―――」
「ご、ごくり」
「うぅ……」
「―――はっキり言うと、評価に違わぬクソゲーだった」
「うっ…!」
「や、やっぱり……」
あまりに率直な物言いに意気消沈するゲーム開発部だったが、リアンの言葉は止まらない。
「……指示に反する行動が適解であったり、それに何か伏線があるわけでもない。序盤の敵の難易度が異様で、かといって死にゲーの様にそれそのものがゲームの平均値でもない。滅茶苦茶な舞台設定に、奇をてらい過ぎて意味不明な設定の濁流。テキスト自体も誤字誤用が多々見られる。他システム面やストーリーそのものも優れているとは言い難い。……とてもプレイヤーのことを考えている様には思えなかった」
「「「…………」」」
これまでにも何度となく言われてきた理由。コメントの中にはもっと酷いことを言う輩もいたが、身構えていたとしても慣れるものではない。
まして、無表情で淡々と何が駄目だったかを指摘されると、余計に責められている様にも感じられる。
「……じゃ、じゃあ余計にどうして」
「……簡単なコトだ。先ず俺はこのゲームによる利益を求めている訳では無いこと。そして、君たちが楽しんでゲームを作っているカらだ」
「……?えっと…」
「……シナリオを書いているのは君だったな」
「え?わっ、う…はいそうです!」
モモイに話をふると、慌てた様子で背筋をピンと立てる。
「…正直、伝えたいことの意味は分からなかったが、何故あのようなシナリオを書いた?」
「えっ、えーっと、それは、その……」
「…予想はつく。その方が面白く見えたからだろう?普遍的な設定にハマらないように、そこから逸脱した見事な設定を考えついた。そして自分が思いついた良い設定を、思いつく度に追加していった。だってその方がスパイスがあって、唯一無二の面白いシナリオが完成するから。……そうだろう?」
「な、なんで分かるの…?」
当時の心境を言い当てられて、モモイは肩を跳ねる。けれどその姿にリアンは表情こそ変わらないものの確かに温和な気配になる。
「俺もそうだからな。何か一つを作っている時に、考えついてしまった要素。よせばいいのに、一刻も早く形にしたくて今の作品にそのまま反映させてしまう。……まあ、そのせいで雑味が混ざってしまうため、普通は避けるべきだが。だが、それは意欲的に取り組んだ証拠だ」
「リアン…さんもって、何か作ったことがあるんですか……?」
「…あるとも。まあ、名が知られているため匿名で市に流しているが、基本的に雑味が混ざったものは評価されにくいな。……稀に、その中から奇跡的にマッチしたものが高額で売れるが、作品なんてそんなものだ。……無論、金が目当てなら違うんだろうが、別に稼ぐために世に流しているわけでもない。………それは君たちもそうだろう?」
ミドリの問いかけに返ってきたのは、どちらかというと同じく生み出す側の、それも手ずからの作品を届ける側の苦悩と思想。
そして、金のためにやっているわけではないという問いには勿論イェスだ。
「だろう?それに、最初は意味のわからない内容だったが、2をプレイして、何故この様な内容になったのかが分かった気がする。……あれはプレイヤーの目線に寄り添ったゲーム、なのではなく、真実プレイヤーが考える面白いゲームとして作ったのだろう。なら当然だ。商売のため、定まった規格の中から1プレイヤーとして判断するのと、数多のゲームを遊んだ一般人がとにかくやりたいことを詰め込んだ作品では、違いが出るのも当然だ」
「あっ…」
「それは…そうかも」
言われてみれば、確かに『テイルズ・サガ・クロニクル』の評価は散々であったものの、あれを作る時に参考にしたゲームや、楽しいからと創り上げた経験は、様々なものが基となっていた。
客観的に判断しても、自分たちの作りたいものとして定めたのはそうだった。誰に縛られるでも、売上は少しは気にしつつも、その本質は自分たちがやって楽しいゲームだ。
「……まあ、残念ながら評価を覆すことにはならないが、それでも、『テイルズ・サガ・クロニクル』と『テイルズ・サガ・クロニクル2』の両作をプレイした結果として、君達は自由に楽しく、そして利益など関係なく、自分の愛したゲームの楽しさを他にも伝えるため創る側に回ったのだな。……と、そう思ったのだが………。どうかな?」
その言葉に、4人は言い表し難い感慨のようなものが駆け巡った。恩人である
それが、あの散々な結果だったゲームに対しても、真剣に向き合って、その上で批判するべき箇所は批判し、けれど感情的な暴言も否定もなく、そのままに受け入れて尚同意してくれた。
面白い。その一言こそ聞けなかったが、その裏にある想いを受け取り、認めてくれたのだ。
「あ…うぅ…。あの時のユズもこんな気持ちだったのかな…」
「…まさか、そこまで言ってくれるなんて…」
「………っ、ありがとうございます」
各々、沈んだ顔から一転、恥ずかしそうに顔をそらしたり、ストンと腑に落ちた感情に想いを馳せていると、アリスが話は終わったとばかりに割り込んできた。
「では!このクエストは受けるということでよろしいですか?」
「うんうん!こんなに私たちのこと知ってくれてるし、問題ないって!」
「あっ、ちょっとお姉ちゃん!それはそうだけど、もうちょっと色々確認してからで……」
年少3人組は契約書へのサインや云々と取り合っていて可愛らしいものだ。
その光景を眺めながら、リアン、ユズ、ネルは顔を見合わせる。
「……そ、その。改めて、ありがとうございました。……感想もそうですけど、このお話を持ちかけてくれたことも」
「……いや、気にするな。資金が目的ではないと言ったが、こちらにも相応の目的はある。……ただ、プレイヤー目線で楽しみつつ、ゲーム制作を知っている人物を探して行き着いただけデもある」
「それでも、です。さ、最初は怖いって思ってましたけど、顔色も変えないで、真剣に語ってくれたんだなって思いましたから……」
「はっ、相変わらず無愛想な面してやがる。普通は、こういう時はもっと作った笑顔すんのが普通だろうによ」
ユズの言葉に便乗するように、ネルが顔を覗き込んで言葉を吐く。もっとも、ネルとしては取り入るために媚びを売る、心にもないような笑顔など大嫌いなのだが、それはそれとして横から見ていた限り、批判の際も、褒める時も全く同じ表情だというのが気になったようだ。
「……ん?ああ、これか。………悪いが俺は表情筋が動かないのでな。自然に変わることはないな。……無理矢理動かすことも出来なくはないが、それこそ造り物だろう?」
「は?」
「えっ?」
「……だからといって嘘をついた訳じゃない。…むしろ、表情を取り繕わないという意味で、俺なりに誠実に立ちあっているつもりだ。今の言葉に嘘はない。……それと気にする必要もない。これはこれで便利なときもある。……そんな顔をするな。俺はもう割り切っている」
さり気なく明かされた事実に、ネルは愕然と、ユズは呆然とこちらを見つめる。
特に、自らの名も知らないことを知っているネルとしては、何ともしがたいのだろう。
実際、それが故に苦労したことも、誤解されてきたことも数あるが、腹の探り合いや1組織のトップとしては、むしろ鉄面皮の方がいいのかもしれないと割り切っていた。
「……まあ、何にせよ、これからの方針を話していこう」
やや気まずく思ったリアンは、その視線から逃れるように話を切り替えたのであった。
要は、楽しんで遊ぶ気持ちを持ちつつ、制作スキルも持ってるからってのが理由です。
それに真っ当な会社に行くと、本来の目的が達成できない可能性と、舵取りが難しくなるからです。別に大々的に売り出したいわけではないので。
身内で済ませれば?というのもあると想いますが、そもそもその様な電子技術なんかを持っているのは稀で、大半は肉体労働者です。だって一芸があればあまり落ちぶれずに済んだかもですもん。
その上、研修やら配属やら色々済んで、色々使える人材がいたとしても、会社としてはまだまだ新参。いろんな部署に貴重な人材として割いたり、教育者側として使っているので回す余裕がないことです。
そして幕間の出来事もあって、技術持ってる方々はまた別の箇所に割かれており、出来るのがリアン及びその親衛隊くらいしかいない。
そしてベクター除く親衛隊は情緒が薄いので、戦闘以外では単純な作業や雑用には向いても、複雑な作業や面白いゲームを作るのには不向きです。
感想、評価お待ちしております。
評価10を真っ赤にするまで頑張るぞ…!
先生の台詞にゲーム本編のように「“”」はいる?
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先生と一目で分かるからあった方がいい
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別にゲームテキストでもないのでなくていい