透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する   作:食卓の英雄

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いつの間にかこの作品を書き始めて既に1年が経過しました…。早いものですね。それと、1年間こうして続けられたのは読者様の評価や感想、応援あってのものです。
少なくとも最終編とその後日談くらいまでは色々と決めてるので、そこまでは絶対にエタることなく書き続けることを誓います


第37話 ミレニアム訪問(3度目)

 

 早瀬ユウカ。

 

 彼女はミレニアムサイエンススクールにおける生徒会の役割を持つ部活、『セミナー』に所属しており、その中でも会計を務める人物である。

 

 ミレニアムサイエンススクールといえば、最新鋭の科学技術を持ち、その一点に於いてはキヴォトスでも最先端に位置すると認められている。

 そんな訳で、様々な機械の扱いや各種企業やクライアントとの契約、及びに製品開発の為の資金等など。他の学区に比べても遥かに仕事が多く、むしろその管理が重視されているからこそ、会計という立場にある彼女は、ミレニアム内でも高い地位にあると言える。

 

 さて、そんな彼女だが、やはりセミナー幹部としてミレニアムサイエンススクール自体の管理にも携わっている。

 やはり技術的に進んでいるからこそ、それを狙う者も多く、目を光らせているのだ。

 

 なお、技術発展や開発に余念のない部活動生達の問題行動への対処や勧告、自治区内の問題が(C&Cのおかげで)解決できても(C&Cのせいで)物的損害が増えるなど、外でも内でも頭を抱えている苦労人だったりもする。

 

 そして今日再び、ミレニアムの誇る頼もしい戦力でありながら、普段から悩みのタネでもあるC&Cから突然この様な連絡が届いたのだ。

 

『よお会計。前に会ったアイツ…。遊星リアンっているだろ?アイツがゲーム開発部のチビ共に興味があるみたいでよ。こっちに来るかもしれねえ。だから、来たら許可ついでにあたしらにも知らせてくれよ。あいつがチビ共を見て何すんのか気になんだよ』

 

 とのこと。

 

 ユウカとしては知らない人物でもないし、信頼……と言えるほどのものを築ける間柄でこそないものの、以前の失踪事件騒動や、前回の模擬戦*1でも大凡の人柄は把握している。

 

 セミナー会計として厳格さは持ちつつも、人としてはなんだかんだで甘い所もあるユウカは、リアンが悪意を持って何かをするようには見えなかった。

 

 故に、ちゃんと連絡さえつけてくれればミレニアムへの訪問自体は許可をしてもいいとは思っている。

 

 だが、それとこれとは話が別である。

 

 何せ、相手はあのブラックマーケットにおいて急速に成長した会社の社長。本来の最初の訪問では、あくまでこちら側の協力者としての意味合いが強かったが、いつの間にかブラックマーケットでも一目置かれる企業へと成長していたのである。

 

 更に言えば、ユウカ自身は存じていなかったが、その以前の活動においても名のしれた人物であるらしく、ブラックマーケット内における注目度も高い。

 

 故に、以前の様にこちら側(C&C)からの依頼という形でなく、本人が希望しての訪問は、他の自地区だけでなくミレニアム内の事情を知らない生徒、及びにブラックマーケット側からの注目を集めることに他ならない。

 

 特に、今は生徒会長である調月リオの不在もあって、学園自体の維持にてんやわんやとしている時期。リアン自身は悪くなくとも、関係を邪推したその他からの声が怖いのだ。

 

「……よりによって、何でゲーム開発部(あの子たち)なのよぉ…」

 

 しかも、研究・開発に携わらないC&Cならまだしも、仮にも電子技術を扱うゲーム開発部である。

 ゲーム開発部は、今まさにミレニアムプライス特別賞を受賞したということもあって、外部からも目が向けられている。

 特別賞ということもあって、最先端の技術力を認められた…という訳ではないのだが、それでも賞は賞。

 

 外部から見れば、真相はどうであれ最先端技術の集まるミレニアムプライスにて受賞した部活に、ブラックマーケットの一大勢力のトップが訪れるということになる。

 

 それは良くない。下手をすれば、ミレニアムサイエンススクールというだけでなく、ゲーム開発部にまで被害が及ぶやもしれない。

 

 それは避けなければいけない。

 

 そう考えていたユウカに、更に悲報が告げられる。

 

 何でも、遊星リアン本人だけでなく、幹部相当の部下の訪問も告げられたのである。

 

 個人ならば、まだ誤魔化しようはあるが、部下を連れだってとなると、完全に組織立っての行動と見做されるのは間違いない。

 

 かといって、当人たちに問題がなく、むしろ助かっているだけにそれだけで断るのも忍びない。

 

 悩みに悩んだ末、ユウカが下した苦渋の決断とは――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまなかったな。わざわざ出迎えをして貰う程でもあるまいに」

「いえいえ、これも仕事ですので…」

 

 普段と少し異なる装いのリアンが、運転手の少女へと礼を告げる。

 ここはミレニアムサイエンススクール来賓玄関前。ミレニアムの公用車から、ガタイのいい人物が二人現れるも、ミレニアムサイエンススクールは外部からの依頼や業務提携も多いために、不思議がる生徒はいない。

 

 強いて言えば、その背丈に驚くことこそあれど、それだって無い訳ではない。精々が背丈のみが印象に残る程度で、直ぐに忘れ去られることだろう。

 

「ではまた…。あの、今度の土曜日、一緒にお食事でも…!」

「ああ、予定を空けておく。また会おう」

 

 リアンともう一人を送り届けた少女は、役目を終えると速やかに……というわけではなく頬を染めながら予定を取り付けると、そのまま去っていく。

 彼女は以前セミナーから出た行方不明者であり、何を隠そうC&Cとリアンに救出された一人でもある。

 

 少しずつ実力を上げてきている彼女は、ユウカに頼まれて、リアン達を送迎したのであった。

 

 そう、ユウカの出した案とは、もういっそのこと、下手に第三者のいる交通機関や道を通って見られるよりも、最初からミレニアム内部の乗用車で送り届けてしまおうという訳である。

 

 ミレニアム内部の車両であれば、どこからミレニアムサイエンススクールに入っても不思議ではない。そして当然機密事項や情報保護の観点から見ても他の自治区よりも上等と自負しており、隠蔽にはうってつけだ。

 

 そして、一度ミレニアムサイエンススクールに入ってしまえば、後は安心だ。

 自地区内のどこかならいざ知らず、お膝元を越えて中枢そのものである学園内部のセキュリティは、自治区内と比べても圧倒的に高い。

 

 一度内部にさえ入ってしまえば、後は内部で処理できる。そもそも、それらのセキュリティを全て越えてミレニアム内部から情報を抜き出せる者など、ユウカの知る中ではヴェリタスの部長かセミナーの会長。…後は手のかかるセミナーの後輩くらいしか考えられず、仮に突破されたとしたら、それ以上に重大な情報もとっくの昔に抜かれていることになるからだ。

 

 要は考えるだけ無駄というやつである。

 

 唯一の視覚情報も、普段の格好とは少し変えてしまえば特に問題はないだろう。

 

 因みに、運転手である彼女は、セミナーの人間で事情を知っており、それでいてリアンとも親しい人物のために手配された形だ。

 

 まあ、それはそれとして彼女自身が時折口に出しているので、その要望を叶えた形にもなってたりする。

 

「こないだぶりだな」

 

 来賓玄関で受付を済ませると、そこには美甘ネルが待ち構えていた。

 

「………出迎えをC&Cが?」

「ちげーよ。今はフリーだ。単純にてめぇの用事ってのが気になっただけだ」

 

 よくよく見れば、ネルのスカジャンの下はミレニアムの制服で、メイド服に見慣れていたリアンは新鮮味を覚え……ない。

 

 元々の制服の色合いが似ており、小柄でスカジャンを羽織っているのも相まって、視覚的な差がフリルの有無以外ではほぼ感じられないのである。

 

「ま、一応てめぇの監視も兼ねてるがな」

「言っていいのか?」

「あ?別に向こうも大して気にしてねえだろ。重要施設に間違って入るとかじゃなけりゃいいっつってたしな」

 

 ちら、とネルの視線がリアンの背後に向けられる。

 

「……で、そっちは連れか?」

 

 そこにいた人物は、背は185程度でリアンと並ぶと小さく見えるが、それでもネルやその他の生徒と比べると長身だ。

 

 何より目を引くのが、その外見だ。

 

 頭部を丸ごと覆う戦闘機ヘルメットの様なチューブ付きの口部。暗く曇ったシールドの奧には更にガスマスクのようなものが見え、薄っすらと青いレンズが覗ける。

 バトルスーツの上に装甲を付与したタクティカルベストが装着されており、ネルの知る限りでは、そこらの精鋭でもそうは手に入らない世代のようにも思える。

 

 いや、恐らくは市販されているものではないであろうことは確かだ。……というか、腕部アーマーにRE:flectorのロゴが刻まれている。外見的特徴が似ていることから、同じく自社製品で固めているのだろうとネルは推察した。

 

(……こいつ、雑魚じゃねぇな)

 

 ネルは物珍しそうに見るふりをしながら、そう胸の中でごちる。

 

 今までのネルの戦闘経験の中でも、かなりの力量を持っているように思える。何せ、無防備に両手を下げているように見えても隙がない。

 

 恐らくだが、今突然何者かが襲いかかったとして、他の有象無象の様に狼狽えるのではなく、その排除に真っ先に移れる様な、強者特有の気迫のようなものを感じる。

 

「…こいつはベクター。RE:flector(ウチ)の副社長であり、俺直々に率いることを想定した私設部隊の隊長。それと、個人的な研究開発での助手も務めている。……そうだな、腹心にして俺の右腕…というのが最も相応しいな」

「……紹介ニ与った、ベクターだ。美甘ネル、ダな。話ハオーナーかラ聞いテいる。初メまシテ」

 

 ベクターが前に出て、目線を合わせて右手を差し出す。

 

「規模コそ違エド、直属ノ部隊のリーダーとシテハ、ソチらガ先達にナル。会えテ光栄ダ」

「おう、よろしくな」

 

 ベクターの握手に応じ、ここに居座っても何だと先陣きって歩き出す。

 

 やはり背丈と格好のせいか、通りすがるミレニアム生徒からは奇異の目で見られるも、ネルが案内しているのが分かると若干後ろ髪を引かれながらも通り抜けていく。

 

 通路を歩きながら、ネルは物珍しそうに、けれど決してお上りの様に挙動不審にならず観察しているベクターをチラリと一瞥し、リアンに語りかける。

 

「……なあ、あいつ、強いだろ」

「まア、な。でなければ、私設部隊のトップになど置かない。社の戦力の中では俺を除けば最強だ」

「……へえ、どのくらいだよ?」

 

 リアン直々の太鼓判に、目の色を変えたネルが尋ねる。

 その好奇を伴った質問に、リアンはやや思案すると、結論を出した。

 

「…仮に本気で斃れるまでやり合うとしたら、勝つのは俺だがそれまでに四肢の半分は失うな。欠損無しに勝つのはほぼ無理だ」

「なっ」

「……ああ、誤解しないで欲しいが、あくまで俺の予想と、双方命を狙っている場合だ。喧嘩や任務の範疇でそれ程の損傷は与えないぞ?」

 

 柔らかい声音で付け足すが、最初のそれが殺し合いだと言っている様なもので、ネルはリアンがブラックマーケットの住人であることを再認識すると同時に、それ程までに評価しているのかと、ベクターに興味を持つ。

 

「…何カ?」

「いや、アンタとも戦ってみてえと思っただけだ」

「…スマナイガ、一応コレでモ組織的に制限ガアッテナ。要望ヲ通シタイナラ正式に依頼を出しテ欲シイ」

「…そうかよ。………バイト。いや、でも任務と単位が……

 

 ボソリと呟かれた一言。この距離ならば勿論聞こえているが、そこには学生ならではの悩みが込められていた。

 

 ……まあ、任務で壊しすぎなければ、その分の予算と信頼でセミナーからの支援も受けられるのだが、そこは考えていない。何せ、現場に出れば結局それが一番だと思ってしまうのだから。

 

「そういや、チビ共に何の用だよ?」

「…チビ共、というとゲーム開発部のことか?」

「おう。テメェがゲームに興味のある様なナリには見えねぇし、一体何が目当てだ?」

「……心外だな。これでも結構なゲーマーだと自負しているのだが」

「は?冗談だろ?」

「……スチューデントファイターならば、LCQで優勝して本戦出場したぞ。……途中で外せない仕事が入ってしまった為棄権したが……」

 

 決めつけられたのにムッとしたのか、リアンの注意が疎かになった。その瞬間、曲がり角から影が飛び出し、リアンに衝突したのだった。

 

「あうっ!?」

 

 ボスッ、とリアンの胸下に勢いよくぶつかったそれは、ミレニアムの制服を着ており、どうやら生徒の様である。

 

 平均身長よりも少し低いといった背丈の少女は、ぶつかったことに気がついた様で、直ぐに飛び退いて謝罪の言葉を口に出す。

 

「ごめんなさい!ぶつかってしまいました!」

「気にスルな」

 

 綺麗に腰を曲げて謝るその少女はかなり目を引く外見をしていた。通常のミレニアムの制服に、スカートまで覆う程のサイズのジャケット。

 

 それに加えて床まで伸びる長い黒髪に、何より目立つのが背負っている、少女の体躯以上に巨大な機械。ここキヴォトスでは様々な武装が用いられているが、全体が太く、分厚く、長方形のそれは、銃器が当たり前となっているキヴォトスでも異質に見受けられた。

 

 そして、リアンはそれに見覚えがあった。

 

「……エンジニア部のレールガンか?」

「アリスの光の剣を知っているのですか?……あっ、自己紹介が遅れました!はじめまして、私はアリスです!今はあるクエストを受けてこちらへ来ていたのですが」

「…クエスト?」

「はい!私たちのゲーム開発部に、商人……お客様が訪れるということでしたので、お迎えに来ました!」

 

 ニッコリ。天真爛漫といった言葉が相応しい笑みを浮かべ、その不思議な雰囲気の少女は言葉を紡いだのだった。

*1
幕間 C&Cリベンジ! より




何だよ…再生するやつに四肢の半分とか弱くない?とも思いますが、それ相応の被害…というのを事情を知らない方向けへの説明でございました。

クリーチャーや異形の生命体好きのあなたに朗報!
今度の9月23日に、Zoochosisというゲームが出ます!
飼育員であるプレイヤーが、何かに感染し異形と化した動物のいる動物園を巡っていく…というものらしいです。
人獣共通感染症(ズーノーシス)とかけてるのかな?

因みにトレーラーの途中に出てきた変形などは、私の想像するリアンの変容と似ている部分がありましたので、より作品を楽しみたいのであれば、是非トレーラーの方を見て作品への理解を深めてくださいませ。

先生の台詞にゲーム本編のように「“”」はいる?

  • 先生と一目で分かるからあった方がいい
  • 別にゲームテキストでもないのでなくていい
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