透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する   作:食卓の英雄

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ごめん…!今回でアビドス終わらすつもりだったけど伸びて終わんなかった…!
あとアル社長の初四暗刻のおかげで貰えた石で10連したらウミカ2枚引き出来ました!
陸八魔アル、ありがとうございました(めざましじゃんけん)


第34話 一枚上手の更に上

 

 

 結論から言おう。

 

 対策委員会達はカイザーの魔の手を逃れ、ホシノの監禁されている施設へと辿り着き、見事彼女を救い出してみせた。

 全てを一人で背負い込んだ小さな先輩に、ただ一言、「おかえり」という事が出来たのだ。

 

 それは、ホシノにとっては何事にも代えられない宝石のような体験だった。自分を犠牲にし、信頼できなかった彼女は、けれど、思いの外成長していた後輩と、こちらに手を差し伸べる、どこまでも諦めの悪い大人によって救われたのだ。

 

 砂埃と硝煙に汚れ、汗に濡れながらも手を差し伸べた後輩達に、ホシノはとびっきりの笑顔を夕日と共に焼き付けたのであった―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホシノの救出が成功した頃。カイザーの相手をするため残った便利屋と第3分隊。

 

 戦場を荒らし、とことん混乱させながらPMC達を相手どった彼女達は、程なくしてカイザーの軍勢をひとり残らず撃破することが出来た。

 

 多少の疲労と軽い怪我を負うものはいれど、皆二の足で地面に立つ。対して、相手はほぼ戦闘不能で倒れており、最早巻き返しなど出来ようはずもない。

 

「……ふう、任務遂行。意外と簡単だったな」

「まあ、便利屋との協力だったからね。普通にみんな強いよ」

「そう、だな。感謝する」

「…ええ、私達も、あなた達と共に戦えて助かったわ。中々の精鋭揃いのようね。崩してほしい場所に即座に行って成果を上げるのは、とても良かったわね」

「それは同感。私じゃ考えはしても他との折り合いで出来ない部分もあったし…」

「ふっふふ、カヨコちゃんも意外と評価高いじゃん〜?」

「お前、すごいタフネスだったな。あれで突撃と爆弾ってなると、シンプルだけど強い。ウチにも欲しいくらいだよ」

「えっ、あっ…、そんな、私なんかは…」

 

 撃ち漏らしや残党がいないかを確認して、互いの健闘を称え合う便利屋と第3分隊。

 

 勝利に浮かれ緩んだ空気に、一発の銃声が響く。

 

「えっ?」

「な、何よ一体!?」

 

 発射されたと思わしき弾丸はアルの髪を掠め、驚愕に目を剥かせる。

 音の出処を見ると、銃身から煙を立ち上らせる拳銃がカイザー理事の目の前に落ちており、肝心のカイザー理事は後ろ手を取られて地に伏せられている。

 

 注意深く周囲を警戒していた元分隊長が、発砲と同時に接近して制圧したのだ。完璧に腕を決められており、戦う者としては素人でしかないカイザー理事が抜け出すのは最早不可能だろう。

 

「あいつ、兵士はやられてるってのに、あんな豆鉄砲で何するつもりだったんだよ」

「…よ、よくもアル様を狙ってっ!!許さない許さない許さない許さない許さない許さない……!! 」

「うわっ、待って待って落ち着いて!」

「ハルカ、社長には当たってないから落ち着いて」

 

 アルが狙われたということに怒り狂ったハルカが正気とは思えない顔で爆弾を抱えてカイザー理事目掛けて起爆させようとするが、当然抑え込んでいる分隊長も巻き込まれる。

 そのため総出で宥めこんでいると、突如として抑え込まれたカイザー理事が笑い声を上げる。

 

「フ、フフフフフ……フハハハハハ!!」

「……何がおかしいんだ?」

 

 その姿に、警戒しながら問いかける。ここまでされておき、今まさに自分が制圧されておきながら、何処に笑える部分があるのか。

 

 しかし、カイザー理事は悔しそうにしながら声を絞り出す。

 

「…風紀委員、支援砲撃、便利屋。この何れも予想外の戦力だった。まさか、ここまで斬り込まれ、この包囲網を突破されるとは思わなかった。……認めよう。カイザーPMCは負けたのだと」

「なら――」

 

 カヨコがその態度に負け惜しみかと次を促そうとすると、理事は勝ち誇ったように顔を上げる。

 

「…そうだ。予想外の戦力だ。集まった各々の戦力が、対策委員会の道を守った。………つまり、最早そちらに動かせる戦力はないということだ。違うか?」

「……まさかっ!!」

 

 分隊長が更に腕を締め上げ、苦悶の声を上げるカイザー理事に次の言葉を言うように指示する。

 

「ぐぁっ!……くく。脅されなくとも話してやるさ。いずれ潰れると思っていた対策委員会に先生という支援の手が入った。孤立無援のアビドスにRE:flectorの部隊が加わった。そして今!こんな辺境の自治区の問題にゲヘナとトリニティが力を貸している!……何もかも上手くいかん、全てがありえないことだ。…業腹だが、ヤツの言葉を考えさせられたよ」

「ヤツ、とは?」

 

 カイザー理事が思い浮かべるのは、どこまでも不気味な黒服の男。慇懃無礼なアレの目には覚えがある。自分よりも矮小で、くだらない動きを見せる、歯牙にもかけない虫を見る目だ。

 

「私が知るか。あんな得体の知れない怪人など。……だが、『変化要因を考えろ』というのは同意した。すり潰されるだけだったアビドスが攻め込むようになってきたのは先生の助力と、ブラックマーケットで借金の行方を知ったからだ。何度襲撃をかけようと、失敗してきたのは、我々の武力では、先生が支援するアビドスとRE:flectorの部隊には敵わないからだ。………ならば、馬鹿正直に邪魔者がいる時を狙うはずがないだろう?」

 

 その言葉に、便利屋と分隊に緊張が走る。

 

「まさか……」

「それって…!?」

「ようやく理解できたようだな。虎穴に入らずんば虎子を得ずとはあるが、そんなもの、外に誘き出してしまえば障害は消え失せる。…………はっきり言って、これを作戦に組み込むのは無駄だと思っていたぞ。何せ、我がカイザーPMCの全戦力が、少人数の対策委員会とお前達に負けると言っているようなものだからな。………だが、度重なる援軍と予想外の事態に最後まで突破された。おめでとう、とだけ言っておくよ」

 

 カイザー理事は目論見が上手く行ったと笑う。最後に笑うのは、自分たちカイザーなのだと。

 

「まだ小鳥遊ホシノが正式に戻っていない以上、書類上はアビドス高等学校は我々の土地。自身の土地にある不要な建築物をどうしようと、我々の勝手ということだ。そして、学校そのものが消えてしまえば引き継ぎも出来ない。たとえ今小鳥遊ホシノを奪取されようと、アビドスに土地が戻ることはない! フハハハハ!今頃我々の別働隊がアビドス校舎を破壊していることだろう!」

「そんな…!」

「これは、想像以上にまずいね…」

「せ、先生に知らせないと…!」

「ま、まだよ…!まだ何とか…!」

 

 こうして言葉に出して気が済んだのか、慌てふためく彼女たちをカイザー理事は嘲笑う。

 

「ここから間に合うと思っているのか?戦車中隊だぞ?あんなチンケな校舎の破壊にそう時間など取られない。今すぐ引き返しても見られるのは更地になった校舎跡だろうよ」

「お前達は、どこまでも……!」

 

 笑い続けるカイザー理事を睨みつけ、更に強く締め上げるも、それで状況が変わるわけではない。

 

「がぁっ……!ふ、ふふ、この端末から連絡が来るようになっている。共にアビドス崩壊の報せを聞こうじゃないか……!そして、お前たちの抵抗が無意味なものであったと思い知るがいい……!」

「駄目だ…。ここから間に合う戦力がどこにも…!」

 

 ゲヘナ風紀委員会、トリニティの支援砲台、そして自分たちと対策委員会に先生。誰もが、PMCに攻め込む戦いだと思っていた。彼我の戦力差からそうする他なかったのは事実だが、その隙をついて大本を叩くなど、誰が予想できただろうか。

 

 最早覆しようのない事実。今から最高速で向かったとして、元々予期していた部隊には間に合わない。少数で休息を取らずに一直線に駆け抜けるのならば、辛うじて間に合うかという程度だったが、既に長距離を戦闘しながら駆け抜けてきた彼女たちでは、後に繋がらない。

 

「……向こうのほうが上手だったみたいだね」

「………」

 

 打つ手がない。何をしても無駄だと悟ったのだろう。悔しそうに顔を歪ませるその姿を見てカイザー理事は勝ちを確信した。万が一、何らかの策があることを最後まで警戒していたものの、この状況にまで陥って尚変わらぬというのであれば、それは本当にどうしようもなくなった時だと判ったからだ。

 

 今ここで何かを起こした所で、遠く離れた校舎に攻め込む兵士には伝わらない。最早何をするでもなく、ただ項垂れると、カイザー理事の保持している通信機が起動した。

 

「……どうやら終わった様だぞ?」

「……クソッ」

「……っ」

『ザッ―――っ!ザザッ―――しろ!!ザッ――ザザ』

 

 やや荒い通信機から聞こえてきたのは、砂嵐の音と、兵士たちの怒号。そして爆発音や銃の乱射音だった。

 

「む?どうやら通信が悪い様だな。まあいい。どうだ?現在進行系で破壊されているらしいぞ?折角だから聞いていくといい」

 

 その音と言葉に、間に合わなかったと皆が頭を抱える中、その違和感に気づいたのは4人。カヨコ、ムツキ。そして分隊長と副分隊長だ。

 

「……待って、それにしては…」

「……これって、そういうこと?」

「…ああ、恐らく」

「だよね。解体なら必要ないもん」

 

 各々が、その事実を確認し合い、確信を得る。

 

「……へ?な、何が分かったのかしら?」

「…社長。相手は大戦車中隊って言ってたでしょ。それも、最初っから校舎を破壊するための部隊。そりゃ、遭遇の可能性を考えて普通の銃もみんな持ってるだろうけど……」

「ああ。()()()()()()()()()()銃なんて解体に使うわけがない」

「っ!それって……」

 

 そして、その問に答え合わせをするように、一際大きな声が響いた。

 

『―――………ザッ…撤退っ……やく撤退しろっ…―ザザッ……めろ、ザッ…退避ぃぃ―――あっ―ブツッ』

 

 兵士の悲鳴と同時、莫大な轟音とともに通信が途絶する。

 分かったのは、カイザー兵士が、退避するほどの何かと交戦しているということと、通信すらままならない程の状況に置かれている、ということだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……死ぬかと思ッたぞ」

 

 危なかった。

 生物由来の毒や金属や細菌、水銀なんかの毒性も一度試して全て分解出来たし、普通の人間には致死量の放射線や宇宙線も全て吸収分解してエネルギーに出来るからと油断していた…!虫の知らせというか、嫌な予感がしていた時点でやめておくべきだった。

 

 調理過程に何らおかしな部分は無かったにも関わらず、あのような劇物が出来てしまうのは何故なのか。最早呪いとか因果とかそういうレベルだぞあれ。

 

 まあそれはともかくとして、気を取り直して状態を俯瞰する。

 他自治区からの助けや便利屋の協力を得て、ようやくホシノの元まで辿り着いたことは大金星だと言うべきだけど、一つだけ、残ったまま進軍する隊が残っている。

 

 それは砂漠を横断し、これまでのカイザー兵士の配置場所からは巧妙に隠れた箇所を移動しており、カイザー兵士と戦うつもりなら見逃してしまうだろう。

 

 進行方向は、恐らくアビドス高等学校の校舎。………全ての戦力がいないときに、やってしまおうってことか。

 実際、こうして完全に意表を突いている以上、有効な手だったのだろう。

 

 このままでは、折角のみんなの頑張りが無駄になる。

 

 多分、今対処できるのは俺だけなんだろうけど……。契約をしちゃったからなぁ。この件に関して自ら手を下すことはないと宣言し、書面も残っている。

 

 加えて、今回はベクターも他の小隊メンバーもいない。今から呼び寄せても、到底間に合わないだろう。……いや、ベクターは分からんな。だが、少なからず破壊されたりするのも、今の校舎からして駄目っぽいな。

 

「………仕方ない。俺がヤるか」

 

 とはいっても、実際に大隊を止めるつもりなどない。それは契約違反だ。自分から仕掛けておいて破るのは、出来るだけ避けたいので、別の手段でだ。

 

 ……まあ、いい。元々、アレの運用にも慣れたかったし。

 

 そう区切ると、俺は両の手を胸の前に上げ、指先を正面に向けたまま、掌同士を合わせた。

 

 

「…ふ、………擦リ潰せ」

 

 

――――雲一つないアビドスの空、その一隅が漆黒に染まる。

 

 




【2024 4/6修正】
別働隊を大隊ではなく戦車中隊に変更しました。
大隊あったら流石にぶつけろよ。あと校舎破壊に何故大隊で行く必要が?
普通に爆弾とか砲弾とかロケラン積んで爆破でも片付くのに何故態々無駄に多い歩兵を連れて行った?遅くなるだけじゃないのか?
って感じで心の中のカイザー理事が語りかけてきたので。





今のところこの作品である意味一番強くなってるのがカイザー理事とかいう事実。
でも実際、カイザー側の言い分としては「アビドス最後の生徒会が退部」「自分たちが持っている土地」「先生は黒服には主張したがカイザー理事には通っていない」などを考えた場合、やられたら困る一手だと思うんですよね。
本編なら態々少数が大群に突っ込んでくるので負けるはずがないと思っているのでしてませんが、こっちでは黒服がちょっとアドバイス増やしたのと、リアンが脅かしすぎたので、二弾重ねになりました。

先生の台詞にゲーム本編のように「“”」はいる?

  • 先生と一目で分かるからあった方がいい
  • 別にゲームテキストでもないのでなくていい
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