透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する   作:食卓の英雄

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因みにリアンが先生に渡したメモは欠片も役に立ちません。

何故って、そりゃそうでしょう。事実確認が出来た後じゃないと意味ないことしか書いてませんもん。

こう、契約書の場所とか資金の流れを書いた紙なら探るうえでの手がかりになるけど、あのワードだとマジで無意味です。

つまりこれは知ってるぞというアピールになってしまうんですね〜

そんな訳で少し今話で巻いていきます。



第31話 そろそろクリーチャー要素を出さないと設定が死ぬぜ!

 

 ブラックマーケットに突入した対策委員会達。彼女たちが闇銀行に突入し、覆面水着団が誕生したその日、リアンはというと、日付が変わったタイミングでブラックマーケットにある本拠に帰ってきていた。

 

 というのも、これはベクターからある報告を受けたからだ。

 

「アア、オーナー。チョットシタ事実ガ判明シタノデ報告ダ。部下タチダガ、少々バランスガ悪イ。改造ニヨリ人間トオナジ輪郭ダガ、ソノ細胞ハホボ昆虫ノモノ。恐ラク2腕2脚ノ体ニ本能的ナ違和感ヲ感ジテイルノダロウ。オレハ他ヨリモ理性デ抑エラレルタメ問題ナイガ…他ハ影響ガ出テイル」

「成程…。それは考えが及ばなかった。今行く、少し待ッてろ」

 

 二つ返事で本拠に戻ったリアンは、待っていたベクターと共に飛蝗蟻蟋蟀混合型被検体達の様子を見に……長いなこの名前。

 

「いい加減、纏めた方がいいか」

 

 今までどうせ自分しか呼ばないからと適当にしていたが、今回のように名が必要になる場面もあるだろう。それに、いずれは実働部隊として動かす予定もあるから遅いか早いかの違いだろう。

 

「……いい呼び方はないものカナ」

「部下タチノ種族…或イハ部隊名デスカ」

「…オレ、飛蝗、蟻、蟋蟀の4種混合か…。4、4……。スクワッド…クアドラプル……カドラプル……。いや、別方向か?メインは飛蝗だし、それに関連というと、第五のラッパくらいだが……。終末のラッパか。………ああ、ナラ“エスカドラ”とかどウだ?」

「エスカドラ?」

「エスカトロジーとカドラプルを合ワせた造語ダ」

「…アア、終末論トノ。……オーナー、RE:flectorトイイ、ソウイウ造語好キダナ?」

「……嫌か?」

「イヤ、ソウハ言ッテナイ。私ノ感性ハアナタニ近イカラナ。ソウイウノハ好ミダ」

 

 クツクツと笑うベクターの隣で、リアンは自然体で会話する。やはり、己を隠す必要のない相手、というので自然と信頼も向いている。ベクターもそれは理解しており、悪い気はしないので共に歩調を合わせる。

 

「いつの間に私に? 最初に会った時ハ、俺と言っていなかったか?」

「教材ガ貴方ダケダッタカラナ。エスカドラ達ノ上司、オーナー直属ノ隊長トシテ、相応シイ言葉遣イヲ学ンダダケダ」

「当てつけか?」

「マサカ」

 

 ベクターが纏めた情報に目を通しながら、進んだ先は第3実験室。ここは主に様々な用途の機械を製造するための部屋だ*1

 

 キヴォトス独自の現象や物体を用いる第1実験室。薬品類を扱う第2実験室。ベクターらの生まれた生体科学を用いた第4実験室。

 研究室も合わせれば更に増えるがリアンの興味と実利が半々で作られた部屋郡だ。

 

 今回の件を解決するために、リアンが考案したものは神経や脳波とリンクした機械腕だ。

 

 というのも、リアンは以前己の第二腕に金属の外装を纏わせて武装の一種だと誤魔化したことがある*2

 

 その際は正体を隠すための方便として使っていたが、それを現実にしようというのだ。

 

「手伝えベクター」

「了解」

 

 各種機材を揃え、行ったのは自身の頭部の切断。

 

 切り離した頭部を安置し、電極で信号を送りながら延命する。切り離された頭部を更にメスで切開し、脳を露出させる。

 

 脳へ針を突き刺しながら発される信号を解析する。様々な角度や場所に行い、それぞれの違いを観察。

 次に、離された頭部だけで行える行動を起こす度に発生する脳波の形を事細かに記していく。電気信号として図式化した後は、激しい行動時の信号の差や複雑な行動など複数のパターンを試す。

 

 都合12時間にも及ぶ検証とデータの収集が終わる。

 これらの補助に於いてもベクターは優秀で、一人ですべてを行おうと思ったらこの3倍は掛かったであろうことが予想される。

 

 その後、エスカドラ達の行動時の脳波を調べ、不調の原因である存在しない腕を動かそうとする脳波を掴む。

 

 ここまでパターンが分かってしまえば、後は機械そのものを作ってチューニングするだけだ。

 

 構造そのものはシンプルにし、その信号の同期速度と耐久力に注力する。出来るだけ違和感の無いように関節の数は合わせ、剥き出しの回路のまま取り付けて反応を見る。

 

 ここに更に数時間掛かったが、何度か改良を続けていく内に理想的な動きが可能になる。それを成功とし、樹脂製の仮外装から合金製へと変えていく。

 

 ゲブラのパイルバンカーに使用されていた合金を何とか再現したもので、その耐久力は折り紙つきだ。そこらの戦車の装甲などよりも遥かに頑丈だと胸を張って言える。

 因みに耐久テストはリアンが顎で行った。噛みごたえが違うらしい。

 

 この世界特有の妙な性質の金属などをふんだんに用いるため、少量作るだけでも多大な労力と金銭が必要になるが、それは今までの積立から崩せば何とでもなる。

 

 出来上がったそれは、背の中央付近に固定する形となり、プロトタイプの時点で成功を収めた。

 ベクターがそれらを使った模擬戦闘を行ったところ、まだ改善点がないわけではないものの、これほどの性能があれば十分とのこと。

 

 純白の金属を真っ黒に染めて艶消し、違和感のない程度のシルエットと機構を備え付けると、ようやく完成した。

 

「ふむ、中々いいジャないか」

「義手トシテノ価値モアルナ」

 

 完成品を実際に稼働させ、ベクター、リアン、そしてエスカドラ達に備え付けて最終確認を終了する。

 

 結果として、抱えていた身体機能のズレは改良された。最初はいくら神経で操作できるとはいえ己の肉体ではないそれを受け入れることができるのかという疑問があったが、腕の数と意識の差から来るものが大半だったためにこれでも構わないらしい。

 

 こうして、手順は一通り掴むことが出来た。

 一度規格化して完成させられたのなら、後は同じ様に製造するだけだ。

 エスカドラの数は11。後10個必要だ。

 

「……こういう作業ハ、いっぺんにやった方がラクになる」

「同意見ダ」

 

 それから暫く、二人は実験室に籠もりきりになった。

 いくら順序立てされたとはいえ、流れでやって粗悪品を生み出すわけにもいかない。一つ一つ品質基準と求める精度をクリアしているか確認して、ようやく一つが完成ラインに至る。

 

 そして製造を続けること暫く、同じものを作り続けていると、やはり改善点が目に入ってしまう。

 

 けれど、流石にこれに手を加えるとなると予想外の挙動をする可能性もあるので、精密動作性や機械であるが故の問題点などはそのままだ。

 やはりそれを放置することは何とも言い難いのだろう。

 

 そして何を思ったか、リアンは脳死で一言呟いた。

 

「拡張パーツつけない?」

「判ル」

 

 似たもの親子である。

 

 余計な一言のせいで、本来ならば終わっているはずの作業が倍以上に伸びた。

 

 手を出しづらかった本体ではなく、その腕に取り付けるパーツを増やす。成程、単純だがそれが故に世界でも似たような手法は多く取られているのだ。

 

 結果、出来上がったものはいくつかある。その一例を紹介しよう。

 

 腕に取り付ける形で機能する楕円形の剛腕。……何かフライドチキンみたいとか言ってはいけない。

 これは内部に炸薬と加速機構を備え付けたもので、要は爆発的な殴打を浴びせるもの。当然重いし機動力は低くなるし補助腕としての自由度は低くなる。銃撃戦がメインのキヴォトスにおいて産廃と言っても過言ではない代物である。

 次に、機械腕としての機能はそのままに、外装を大型化し、盾及び収納機能として用いる手甲。これはシンプルだがクセもなく、弾薬や武器を隠すことにも使えるためちょっとお気に入りの代物。

 

 その他、ドリルやチェーンガン、その他重機などといった通常の兵装では使えないような代物を次々と開発していくリアンとベクター。

 

 ハッキリ言って実用的なものはほぼなく、別に専用アタッチメントでなくとも普通に手で持てば十分なものが多いが、二人は楽しんでいるからいいのだろう。……いいのだろうか?

 

 また、この経験が後にキヴォトスの危機に役立つ日が来るとは当の本人たちですら予想もしていなかった。

 

 因みに冷静になったのは伸ばした脊椎に複数個取り付けて「全武装(フルアームズ)!」とかほざいてたらベクターがスマホの着信に気づいたときのことである。何やってんだこいつら。

 

「……どうした?」

『あっ、やっと繋がった! オーナー、3日以上も連絡つかないなんて、一体どんなとこにいたんですか!?』

え、そんなに経ってた?…………ちょっとした、問題の解決の為、私用の端末を持っテイなかった」

『ってああ、そんなことよりも、この3日でちょっと色々ありまして…。ちょっと判断を仰ぎたいんです。まず、ブラックマーケットに銀行強盗しに言った時の事なんですが』

「――――なんて?」

 

 

 

 

 

 第3分隊のメンバーから知らされたことは、以下の通りだ。

 

 まず、アビドスの払った利息がそのまま襲撃に使われていたこと。これは既に知っていたが、その判断方法が謎だった。

 もう少し理性的に、理論的に順序立てて行うものと思っていたが、まさか銀行強盗として押し入り金と共に証拠を手に入れるとは……。……金、取ったら駄目じゃない?何で書類を手に入れるためのフリでほんとにとって来ちゃったの?

 

 あ、それは相手が誤解して入れたのね。すぐ逃げる必要があるから持って来てしまったと。そして、どうせ悪党の資金だと借金の返済に当てようという意見が出たものの、小鳥遊ホシノの言葉により置いていくことになったらしい。

 うむ、確かに一度その手段を取ってしまえば、その後に他から奪うという選択肢が現れ、そのうち息をするようにやってしまうことになる*3とのこと。

 

 いいこと言うね。でも置いてきちゃったか〜。そこら辺普通に不良や裏稼業いるから然りげ無く盗まれる可能性普通にあり得るんだよなぁ……。

 まあ、マーケットガードが追いかけてることと噂は広まったからか、厄介事に首を突っ込む者はいないだろうという推測もあってのことだったらしいけど。

 

『次に、柴関が便利屋に爆破され、直後に便利屋を追ってきたゲヘナ風紀委員会の連中と交戦してしまい……』

「…ん?」

 

 報告を聞く限り、いきなり市街地でも砲撃を仕掛けてきて、便利屋捕縛の邪魔をするなと戦闘になったとのこと。

 今はアビドス自治区じゃないとはいえ、いくら何でも単細胞過ぎないか? しかも風紀委員長以外の幹部メンバーも揃っていたらしい。……余計ダメでは?

 

 結局、それは建前で先生を探りに来たのが本音らしいが、その際ウチの部隊だとバレたあとで、先生が自費で雇ったと庇ってくれたらしい。

 

 ………はあ、だから何故自分の風評を悪くするような真似を……。いや、有り難いのは確かだけど、ちょっと恩が出来てしまった。

 

 っていうかスルーしてたけど、そんなことが起こってたら、真っ先にゲヘナの偵察飛蝗からこっちに何かしらのサインが来るはずなんだけど………。

 

「あっ……」

 

 わ、忘れてた……!補助腕製造の前に脳波を弄ったり観測する関係上、余計な指令を出したり向こうからのを受け取って差が出てはいけないと、その信号をシャットアウトしてたんだった……!

 

「……対処出来ズ、すまなかった」

『いえ、オーナーが謝ることじゃないですよ』

 

 知らせること出来たんだよなぁ…!

 

 まあ、それは独断専行な上勝手に交戦までしたからか風紀委員長に叱られて謝罪まで受けたらしいのだけど。………そっちにも後で礼を言わなければ……。何持っていこう…。菓子折り?絵面が完全に賄賂だな。

 

 その日は風紀委員長の言葉から地籍図を確認して土地の殆どがアビドスのものではないことを知ったと。更に風紀委員長は砂漠でカイザーコーポレーションが暗躍していることも伝えていた。と。

 ………すごいな。普通関係ない自治区の棄てられた地区なんて調べないぞ。ゲヘナの風紀委員長、強さが取り沙汰されるけど、それだけではないってことか。

 それで今日、アビドス砂漠に基地を設置しているカイザーPMCと相対し、全ての事実を知った。

 

『そこで相談なんですが……』

「ああ、好きにシていいぞ」

『カイザーとことを構えることに……えっ? いや、まだ言ってな』

「だから、好きにしてイイ。カイザーとやり合う許可、或いは相談だロウ? 俺はお前達の選択を尊重スる。今回の件、カイザーの暗躍は知ってイた。お前達がイル内にそこまで逼迫するのは予想外だっタが、不利と見て断るナラ断ってこい。……だガ、仮に先生とアビドスと共に立ち向かいたいのナラ、俺はそれを応援しヨウ」

『で、でも相手はあのカイザーですよ…? 他の自治区とかの大きな組織ならともかく、ウチはブラックマーケットの一新興企業でしか……』

「…ブラックマーケットで落ちぶれていたオマエ達が、今誰かノ為に戦いたいという意思をミせた。なら、背中を押シてヤるのがいい大人トいうものだ。……安心しロ。責任は俺が負う」

『………いいんですか?』

「アア。任せろ。それに、俺ガカイザー如きに怖気づくと思っていルのか?」

『それはないですね。絶対』

「…………そういウことだ。……後のことは気にせず、助けになってヤレ」

『…ありがとうございます。オーナーに拾って貰えて、ラッキーでした』

 

 そう言って、通話を切る。

 

 こ、この…。最後の最後に嬉しいことを言ってくれるじゃないか…!

 

 もうカイザーがなんぼのもんじゃい!いちゃもんつけるなら全自治区に不正の証拠ばら撒いてやるからな!あ、序に余計なことしたら広まるウイルス仕掛けとこ。

 

「イイノカ?カイザーナラバ少ナカラズ影響ガ出ルト思ウガ」

「聞いてたのか。…まあ、何モ考えナシに許可した訳ジャない」

「?」

 

 いやほら、よく言うじゃん。ある芸人が言ったやつ。

 

「カイザーの社員、ほぼ全テ自宅と隠れ家把握してるカラな。ついでに一度社内に侵入した際モ、幹部らしき社員の執務室の天井に張り付イても、誰も気が付くことはなかった。つまり―――」

 

「―――殺そうと思エバいつでも殺せるしナ」

 

 リアンの即決の理由。それは「でもこいつ殺せるし」理論の究極系であった。

*1
因みに使用されたことはない

*2
第6話 メイドってこんなのだったっけ…? 参照

*3
作者は虎杖みたいだなと思った





さりげなくいつでも殺せる宣言するヤバい奴


【制作秘話】
実はこの作品は謎のバケモンにするか、TYPE-MOON作品のORTにするかで迷ってたんですよね。
ORTも捕食して学んだり、頭に輪があるから人型に出来るしで。

なので、実はリアンにはこの時の構想時の設定などが一部流用されています。
再生力だったり、名前の由来が侵略宇宙生物だったり。マグマに潜ったり、食事の必要がほぼないのもこれですね。後は重要臓器が失われても特に問題ない所とか。
まあ結局当時の私がシン・仮面ライダーを見たことやバイオハザードにハマっていたことが原因で今のリアンが出来上がりましたが、当時FGOの方にのめり込んでたらリアンじゃなくてオルトになってたかもしれません。

『カニ道楽ちゃん』
今日も今日とて蟹日和。
クラーケンと交戦するが、まだ力及ばず敗れる。ゲブラに助けてもらった。

『クラーケン』
何故かカニ道楽ちゃんと何度も争うことになっている野生のクラーケン。強い。

『モササウルス』
妻が身籠っている間、ずっと近くで護っており、数度クラーケンを追っ払った。つまりカニ道楽ちゃんを間接的に助けた個体である。しかし、出産で体力を使った妻や子供に食わせるため、疲弊した体のまま狩りに出てしまい、野生のカルキノスに襲われて死亡してしまう。

『カルキノス』
超でかい蟹。クラーケンすら返り討ちにした個体。
クラーケンがこの海域に留まる理由はこいつへの復讐である

先生の台詞にゲーム本編のように「“”」はいる?

  • 先生と一目で分かるからあった方がいい
  • 別にゲームテキストでもないのでなくていい
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