NPO法人ブリッジフォースマイルが2015年度から2023年度に退所した2,597人を対象に調査をした『全国児童養護施設退所者トラッキング調査2023』によると、2022年度の施設生活経験者で高卒者の大学、短大、専門学校の進学率は48.7%で、2015年度の27.7%と比べると大幅に伸びている。しかし、2023年6月時点で、2022 年度に入学した施設生活経験者のうち、7.5%が中退していた。2021 年度進学者では、19.1%と高い中退率なのだ。
誰もがそれぞれの能力を生かし、生き生きと自立するにはどうしたらいいのか。ジャーナリストで、情報番組「DayDay」の月曜コメンテーターもつとめる大門小百合さんが、児童養護施設出身の元モデル・田中れいかさんや、児童養護施設関係者などに取材。前編では田中さんが児童養護施設に入所した時の話や、18歳という節目についてをお伝えした。
後編では、田中さんがモデルなど「自分のやりたいこと」にどのように挑んでいったのか、そして子どもたちに本当に必要な支援は何かにせまる。
ミス・ユニバースに挑戦
保育士にも興味があったが、田中さんは中学生の頃、街でスカウトされたこともあり、20歳頃にはモデルになりたいという漠然とした夢を持っていた。その時、施設にいる頃から交流を続けていた母親に勧められて受けたのがコーチングだった。
コーチングとは、対話を通して相手が自ら課題や解決方法に気付くようサポートし、自分の中の答えを導き出し、目標達成に向けて動けるようにするためのコミュニケーションだ。
芸能事務所にも詳しかったそのコーチになぜモデルになりたいのかを聞かれた時、最初は、影響力がほしいとか、かわいいと言われたいなどの理由だったそうだが、それが何回かコーチングを受けることで次第に変化していったという。
「コーチに自分は施設で育ったのだと話したら、『すごく特別な経験だね』と言ってくれたんです。今まで自分は独りぼっちで、生活費も学費も全部自分でまかなう悲劇のヒロインみたいに思っていましたが、『施設での経験は確かに誰にでもできることではない』とその一言でポジティブな発想に変化しました」
また、田中さんは、同じ施設出身の同年代の人が専門学校や大学を辞めていくのを見て、彼らにもう一度夢を叶えてほしいという話をコーチにしたことがあった。「すると、『れいかちゃんがモデルになるという夢を叶えることができれば、同級生や先輩に夢は叶えられるということを伝えられるのではないか。れいかちゃんはそのためにモデルになるんだね』と、コーチから言われたんです」
「その時、モデルは手段であって、目的は、施設で育った子どもたちに夢は叶えられると伝えることだと感じ、自分の夢が誰かのための志に変わった瞬間でした」
そして21歳の時にミス・ユニバース茨城大会に関わっていた知人から参加を打診され、大会に出場する。結果は準グランプリ・特別賞受賞。それをきっかけに、「施設のことを話してほしい」と自治体や大学などから講演を依頼されるようになったという。
それが彼女の今のキャリアの原点となった。自分が積極的に発信することで、児童養護施設にいる子どもたちに誰もがなりたい自分になれるということを伝えたい。そして、施設出身だからこそ、彼らが抱えている悩みに寄り添う様々な支援を行うことができると、現在代表をつとめる前編で紹介した二つの団体で活動を続けている。
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