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短大を留年

短大に入学した田中さんはアパートで一人暮らしを始める。生活費は貯金とアルバイトで、学費は奨学金でまかなうという生活だった。親しい友達もできたが、「親から仕送り5万円もらった」、「年末、夏休みは実家に帰る」、「誕生日、家族にお祝いしてもらうんだ」などの彼女たちとの何気ない会話から、親というのは仕送りをしてくれるものなのか、自分にはお祝いしてくれる家族がいないなどと思い始めたという。

高校の文化祭 写真提供/田中れいか
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「私だけその集団とは違う存在なのかと思った時に、友達との間に線を引いてしまいました。友達と喋るのも学校に行くのもつらくなり、学校をサボるようになりました」

そして田中さんは留年する。半期分の学費50万円がさらにかかると言われた時は、お金がかかるなら短大を辞めてしまおうと思ったという。姉や当時少しだけ交流があった父親にも強く反対され、「今のれいかがあるのは、施設の職員さんたちがれいかのために奨学金のことを調べてくれたり、家を一緒に探してくれたり、家電や家具を一緒に買ってくれたりしたからだろう。その職員さんたちの気持ちを裏切ったらだめだ」と言われたという。

「お父さんの言うことはもっともだとは思いましたが、それより、高3の時に保育士になりたいと思って進路を決めた自分の気持ちを20歳の私が裏切ったら、この先自分の味方は誰もいなくなると思ったんです。高3の頃の自分の夢を叶えてあげようと踏みとどまりました」

その頃、世田谷区では児童養護施設などの出身者を支援する事業がスタートし、田中さんの状況を聞きつけた施設の職員や学校の先生が支援の話を教えてくれたそうだ。その後、その支援事業の住宅費補助の対象になったことで、4万円だった家賃が1万円になり、無事に卒業し、保育士資格も取得することができた。

18歳の厳しい現実も

最近では、田中さんのように児童養護施設の出身者で進学する子も増えてきている。ただし、原則18歳で施設を出なければならない子どもたちには厳しい現実も待っている。

NPO法人ブリッジフォースマイルが2015年度から2023年度に退所した2,597人を対象に調査をした『全国児童養護施設退所者トラッキング調査2023』によると、2022年度の施設生活経験者で高卒者の大学、短大、専門学校の進学率は48.7%で、2015年度の27.7%と比べると大幅に伸びている。

ただし、2023年6月時点で、2022 年度に入学した施設生活経験者のうち、7.5%が中退していた。2021 年度進学者では、19.1%と高い中退率なのだ。
福音寮の飯田理事長は、施設の子どもたちは施設を出て進学したり、社会に出ると、周りの友達とのギャップに直面し、それが中退につながるケースも多いという。

「保育士になろうと保育科に進む子も多く、そこではある程度、養護施設のことも勉強します。すると、虐待によって施設に入るなどの実態を授業で勉強するわけです。初めてそういったことを第三者から教わることで、自分の大変さと初めて向き合うことになり、そこでメンタル的に崩れて辞める子も決して珍しくありません。施設にいる時は施設での生活が当たり前として育つが、社会に出た時に改めてそのギャップに悩むということがあるんです」(飯田理事長)

◇後編「悲劇のヒロインのように思ってた…児童養護施設出身のモデルが語る「本当の支援」」では、田中さんがモデルなど「自分のやりたいこと」にどのように挑んでいったのか、そして子どもたちに本当に必要な支援は何かをお伝えする。

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